▼第3試合 ONEライト級(-77.1kg)サブミッション・グラップリング
×マルセロ・ガルシア(ブラジル)
[7分03秒 ヒザ十字]
〇ラクラン・ジャイルズ(豪州)
“マルセリーニョ”ことマルセロ・ガウッシアはブラジリアン柔術、そしてグラップリング界のレジェンド、約15年ぶりの試合復帰となる。
4度のADCC世界王者、5度のIBJJF世界王者であり、BJJの“GOAT”として広く知られているガウッシアは、2011年のADCC世界選手権でほぼ完璧なサブミッション・レートで金メダルを獲得し、頂点に立つと、米国ニューヨークにアカデミーをオープン。コロナ禍に伴い、ハワイに移住し、現在、41歳の彼は家族と過ごし、ニューヨークとハワイにあるワールドクラスのアカデミーを成長させることに力を注いできた。
そして子供達の成長とともに、試合復帰への意欲が湧いてきたという。しかし2023年初頭、食事中に違和感を感じたガウッシアは、念のため検査を受けた結果、胃がんと診断され、手術へ。治療の末に寛解し、試合復帰。
25年1月にONEに参戦し、4分49秒 ノースサウスチョークで今成正和を極めている。
ジャイルズは「ジャイアントキラー」の異名を取る豪州のグラップラー。
ジェット・リーの映画に憧れて武術の世界に入り、当初はカンフーを学んでいたが、UFC1でホイス・グレイシーの試合を目にしたことで人生が一変。ブラジリアン柔術こそ最強の護身術だと確信し、10代半ばでBJJアカデミーの門を叩いた。
タイロン・クロスのもとで白帯から紫帯まで成長し、大きな膝の怪我を乗り越えたあと、ジョン・サイモンの指導を受けて2012年に黒帯を授与される。その後も競技者として結果を残し続け、 ADCC世界選手権 アブソルート級 銅メダル(2019)、IBJJFノーギ世界選手権 銅メダルなど、世界トップレベルの実績を重ねてきた。
特に2019年ADCCでは、77kgの選手でありながらヘビー級クラスの強豪たちと渡り合い、ケイナン・ドゥアルチ、パトリック・ガウジオ、マハメド・アリといった巨漢たちを次々とヒールフックで沈めてアブソルート3位に入賞。この“ジャイアントキラー”としての快進撃は、グラップリング史に残る名場面となった。
競技実績に加え、ジャイルズは理学療法士としても高い評価を得ている。ラ・トローブ大学で理学療法学の学士号を取得し、2016年には同大学で理学療法の博士号(PhD)も取得。膝蓋大腿部痛のリハビリテーションに関する研究を行いながら、Absolute MMAのヘッドコーチとして選手育成にも力を注いできた。
彼のレッグロックシステムは競技シーンに大きな影響を与え、多くのグラップラーが参考にする“現代型足関節ゲーム”の土台となっている。弟子の一人には、世界的スターであるクレイグ・ジョーンズもおり、2016年に黒帯を授与したのもジャイルズだ。
今回は、伝説的存在マルセロ・ガルシアとのサブミッション・グラップリング戦が決定。柔術の“古典的マスター”と“モダンレッグロックの象徴”が激突する、世代とスタイルを超えたドリームマッチとなる。
1R、引き込むジャイルズ。ガウッシアの右足を自ら肩口に乗せてフットバー。Kガードでヒザを上から押さえるが、足を抜いたガウッシア。
トップから攻めるガウッシア。その右腕を腕固めに狙うジャイルズ。ここも抜くガウッシアはトップ攻め。パスさせないジャイルズが3度目のアタックでガウッシアの右足を肩にかついで横回転でヒザ十字、マイキーロックならぬ、ラクラン・ジャイルズいわく“ラッキーロック”でタップを奪った。
試合後、ジャイルズは「ハッピー。つまり最高だ。僕にとってはマルセリーニョは史上最高だ。今でもそう思う。彼は信じられないほどすごい。だから運が良かったと思う。(Kガードからヒザ十字固めの動きは?)実はあれはマイキー・ロックに少し似てるけど、ヒザ十字固めじゃなかったんだ。マイキー・ロックに似た回転式足関節技で、胸を横切るように切り込んで。僕は自分の名前で呼ぶよ、ごめん、マイキー。ちょっと違うんだ。(どう呼ぶ?)ラッキー・ロックかな。
これが最後の試合だ。歳を取ったから(39歳)。勝っても負けてもこれが最後だと分かっていた。引退してコーチングと家庭に専念しているけど、この試合の話が来た時は出てこざるを得なかった。本当に素晴らしいキャリアだった。誰かに教訓があるとすれば、ゼロから這い上がることだ。34歳で、17~18年のトレーニングを経てようやくADCCメダルを手にした。そのことを忘れないでほしい。絶え間ない成長の連続だった。感謝したい人たちが何人かいる。妻は最大のサポーターだ。チームメイト、豪州からわざわざ観戦に来てくれた大勢の友人たち。本当に感謝している。もう一つ付け加えるなら、ただワークすること。このスポーツをマルセロのようにしていきたい。トラッシュトークは一切ない。彼は素晴らしい人間だ。本当に。クリーンでもある。彼の全てが柔術における完璧な偶像だと思う。マルセロ、この試合をさせてくれてありがとう」と、この試合で引退すると語った。


