キックボクシング
インタビュー

【RISE】中村寛「RISEって団体の全てが僕の手にかかっていると思っているし、シュートボクシングの全てが笠原選手の手にかかっていると思って来てほしい」

2025/06/19 21:06
 2025年6月21日(土)神奈川・横浜BUNTAI『RISE WORLD SERIES 2025』にて、「RISE WORLD SERIES 2025 -61.5kg Tournament」準決勝3分3R延長1RでSB日本スーパーフェザー級王者・笠原友希(シーザージム)と対戦するRISEライト級王者・中村寛(BK GYM)のインタビューが主催者を通じて届いた。  3月の1回戦ではチャンヒョン・リーにタフファイトでリベンジした中村。SBからのチャレンジャーを撃退し、決勝へコマを進めることが出来るか。 脳を殺しているっていう感じです ――今回の戦いの舞台は横浜ですけど、横浜での思い出は何かありますか? 「試合の前日の日は焼肉を食べに行く事が多いんですけど、その焼肉がハズレなかったことぐらいですかね。初めて行った所が美味しかったんですよ。今回も計量が終わったら、そこに行こうかなと思っています」 ――初めて行くお店はリスクが高いですよね。 「銭湯に疲れを取りに行く時があるんですけど、たまにハズレを引くんですよね。お湯がめっちゃ熱いところだけの時はちょっとしんどいんですけど、良い感じの所を見つけたので調べてみたら閉業してました(笑)。なので、また新しい所を探して、当たりであってほしいなと思います」 ――髪の毛はシルバーに染まっていますが、これは今回の試合のためにその色にされたのですか? 「今まで坊主かツーブロックのスキンフェードだったので、5~6年ぶりに髪型を変えるというか。世界トーナメントだからと考えたわけではないんですけど『真っ白にしよう』っていうのがパッと降ってきたんですよね。真っ白の白髪にしていたんですけど、今は色が抜けて水色っぽかったりシルバーアッシュっぽい感じなんですけど、たまには楽しんでも良いなと思いました」 ――色的にはシルバーウルフみたいですね。 「めっちゃ可愛いでしょ(笑)。髭も繋いでいた部分を無くして、部分的に残して薄くしてみたんですけど、どう思います? ――似合っています。 「評判はめっちゃ良いんですけど、やっぱり黒に帰ってくるなっていうのは自分でも思うし、周りの意見でもあるので、これが見れるのもレアだと思ってください(笑)」 ――今回トーナメントの準決勝を迎えましたが、気持ちは整ってきていますか? 「最近は気持ちに整い方もクソも何もないですね。ただその日が来たらしばくだけなので。妙に落ち着いているというか、一定になっている状態なので、これがすごいものを生むと確信しています。何も考えることないので、逆に脳を殺しているっていう感じですね。普段の生活でもあまり何も考えないし、言っている事が変わったりしても、自分を理解してくれている人としか関わっていないので、自分の力だったり自分の心技体の部分を信じてやるだけだと思っているし、差をどんどん広げていく努力はしていますよね。そのための残りの7人がいるので。どっちかと言うと相手側にモチベーションを作ったり、頑張っているかを聞いた方がいいんじゃないですかね」 ――世間的には今回の1戦を、RISE対シュートボクシングという団体対抗戦という側面で見る人もいますけど、そこについてはいかがですか? 「僕も勝手にRISEを背負っています。1日1日毎分毎秒全て自分の行動や言動を、RISEを背負っている覚悟で生活しているので、勝手に背負わせてもらっていますよね」 ――それはTHE MATCHの時と近いシチュエーションですか? 「僕も年々成長しているので、マインドの落とし込みどころにはなるんですけど、RISEって団体の全てが僕の手にかかっていると思っているし、シュートボクシングの全てが笠原選手の手にかかっていると思って来てほしいですよね。1個のミスも相手は許されないと思うし、僕も1個のミスをしたら倒れると思っているので」 ――勝てば最高の評価を得られると思いますが、負けたら看板を背負っている以上何を言われるか分からないという、リスキーな1戦でもあると思いますが、そこについてはいかがですか? 「負けることはないですね。負ける可能性がないので、勝つのは当たり前の事でどう言った内容にするか、どういった差を相手側に叩き込むか。っていうところにしか焦点を合わせていないです」 ――世間的な予想としては「笠原選手の方が有利なのではないか」という意見を言う方も結構いるようなのですが、そこについてはどうですか? 「そうなんですか!? そんなことあるんですか? でも、俺にしか俺の強さは分からんと思うし、別にそこを何も気にする事とかは全くないですけど、世間も見る目がないんじゃないですか。向こうが勝つって思っているのって、どう考えても無理でしょうって思いますね。煽る気も何もなく、素直な気持ちで何をしたら負けるかが分からないです。チャンヒョン選手と戦って、チャンヒョン選手の気持ちも背負って、あれからめっちゃ進化しているので、比べ物にならないと思うし。相手が頑張って僕の対策をしてきたら、上っ面の技術の部分では噛み合うと思うんですけど、僕には絶対に通用しないですよ」 [nextpage] 誰が相手でも“完全にメンタルを折ってやろう” ――対サウスポーという部分ではいかがでしょうか? 「でもサウスポーで来るかは分からないでしょ。なのでその日にならないと、どんな動きをしてくるかは分からないし、どう戦い方を変えてくるかも分からないし。そこは臨機応変になんでも対応できるように色んなパターンだったり、色んなものは僕ではなく、僕のチームが対策を練っているので、そのチームを信じていますし、僕は僕の動きをして、プラスでチームの対策を取り入れているだけなので、これと言って“対サウスポー対策”っていうのはないですね。  僕、対サウスポーに対して『苦手ですか?』って聞かれることってよくあるんですよ。『左同士だからこう』みたいな浅い会話、僕はあまり分からなくて。左でも条件は一緒じゃないですか。前の手が当たりやすいとか、ジャブ開いている方同士とか。向こうもそうじゃないですか。だから一緒だと思っています」 ――そういう発想というのは、やはり中村選手の格闘技のベースが日本拳法にあるからなのでしょうか? 「ていうよりかは、空手があるからですかね。空手で死ぬほど、数え切れないほどの試合数をこなしているので。次のポイントになるのが、立ち合いのところで、相手はめっちゃ集中していると思うし、手足の長さだったりとかまともに勝負してこないで自分の距離だけでやろうとしているのは、目に見えて分かっているので、その手の長さや足の長さだったりの細かいところで言うと、日本拳法が自分の良いポイントになっているかなと思いますけど。立ち合いの部分だけですね」 ――中村選手の試合の前に、RIZINの札幌大会のメインイベントに出た木村柊也選手という日本拳法出身の方が出ますが、この選手のことはよくご存知ですか? 「知ってはいます。関わりは数回あって、一緒に練習もしていないので、お互いに知り合いって感じですね。今一緒のジムに所属しているとかでもないですけど、志は同じ人かなと。そういう選手かなと思っています」 ――日本拳法がベースにあったら、キックボクシングに行ってもMMAに行っても、羽ばたける可能性が高くなるという風に思いますか? 「高くはないと思いますよ。日本拳法を頑張って格闘技を職業にしたい人の夢をぶち壊してしまうかもしれないですけど、現実を言えば、日本拳法と格闘技のMMAだったりキックボクシングとかボクシングとかは全く別物なので。バチンと当てて終わる競技なのか、バチンと当ててもパンチや蹴りが飛んでくる競技なのか。やっぱり“効かすと倒す”と“バチンと打ち込む”っていうのと、“プロテクターが付いてるか付いてないか”というのでは、全てが違いますよね。  僕は日本拳法の良いところも取っているし、極真空手で死ぬほど体の打たれ強さだったり、パンチ力や持久力とかキック力とかをトップ取るまで物凄いやってきたので。それが日本拳法でも活かされて、日本拳法は4年しかやっていないですけど、パンパンパンとチャンピオンを獲って辞めましたけど。空手は10何年やっているので、そこは日本拳法をやっているからっていうのはないですね。ただ日本拳法でも、死ぬ気で相手を壊しにいってる人間は勝てるかもしれないです」 ――中村選手もそうじゃないですか? 「僕は誰が相手でも“完全にメンタルを折ってやろう”と思ってやっているので、それは競技が変わっても一緒なので、活躍できているんじゃないんですかね」 ――先日、大相撲の岸和田場所に行って色々なヒントを得たっていう話も聞きました。 「大相撲の協会の方にも応援していただいているので、関わりを持たせていただいているんですよ。大相撲を極めた人の立ち合いだったりとか集中力だったり、気持ちの部分とか心構えだったりとか、色んな事を取り入れるところはありますよね。あとは格闘技って拘ると、ステップを踏むという典型的な固定概念があるんですけど、僕はそれを全て消してやっているので、そういう所では取り入れる部分は沢山ありました」 ――この間の大相撲岸和田場所では宇良関の立ち合いとかがあったんですよね。 「宇良関がすごいトリッキーな動きを見せていて、体の神経伝達というか連動をしていたので、『おっ!』ってなったところは帰ってから格闘技に取り入れるためにすぐやりましたよね」 ――そう考えたら、極真空手、日本拳法、相撲と色んな格闘技からエッセンスを今の自分がやっているキックボクシングに取り入れているという事になりますね。 「前の試合が終わってほとんど無傷だったので、元々怪我していた所を治療しつつ、できる練習をするためにタイで10日間練習して、次に向けたテクニックだったり自分の弱点を消しに行ったりしていました。だからムエタイも全て僕の技術の中に含まれ始めているので、どんどん強くなりますよね(笑)」 [nextpage] 今物凄いハングリー精神が剥き出し ――今回のタイ遠征には、自分の弱点を消すために行っていたという事ですね。 「そうですね。どっちかと言うと長所を伸ばすと言うよりかは、長所はもう自分のメンタル次第で完成しているところがあるので、あとは落とさないように磨きつつ研ぎ澄ましていく一方で、弱い部分から目を背けていた部分を去年の9月からずっと見つめ直してやっていたから、1回戦ではどんな状態であれど、“圧倒して勝つ”っていうのはできたかなと思います。『絶対に俺が勝つでしょ』って言ってますけど、油断もしていなければ笠原選手を弱いと思ってもいないので。それにちょっとでも差を離していくために、そこと向き合ってやり続けています」 ――中村選手の話を聞いていて、ワイルドに見えて実は細やかで色々な事を考えながら調整しているように見えるのですが、ご自分ではいかがですか? 「生活はワイルドですよ。でも格闘技はワイルドさだけでトップにはいけると思うんですけど、“トップで居続ける”のはできないと思っているので、僕はトップで居続ける人間なのでまた一つ進化するためにっていう所ですよね。口だけだったらなんぼでも言えるので、試合の日に見てもらえたら分かります。本気を出させてもらえたらありがたいなとは思います」 ――もう一方の準決勝は気になりますか? 「気にはしていないですけど、知ってはいます」 ――当日も自分の試合だけに集中して、そっちの試合に注視することはなさそうですか? 「そりゃそうでしょ。皆そうだと思いますよ」 ――トーナメントに出る選手は勝った方を気にしてると言いますよね。 「僕は全く気にしてないですよ。だって他のこと気にしていたら相手に失礼でしょ。フルパワー以上で倒しにいきますよ」 ――あと最近は減塩生活にトライしたと聞きました。 「それ誰から聞いたんですか?」 ――SNSに上がっていました。 「最近気分で動きすぎて覚えてないな(笑)」 ――どんな効果があったんですか? 「減塩生活では、必要なビタミンとミネラルは摂っていますけど、そういうのって心とか気とかが大事だと思うので、そういうのがストレスに変わらずに自分から進んでストイックと言われているようなものにできているので、普通に楽しくできています。めっちゃストイックだと思っていた食事も普通になって、その中でどうやったら美味しくなるかを考えて作ったりするのも楽しかったりしていて。そうするとクオリティは良いし塩分が低くなっていって、素材の味も楽しめています。だから野菜とか肉とか『これは美味いで!』っていうのがあったら皆んなに教えてもらいたいです」 ――減塩料理を教えてほしいんですね。 「減塩というか、素材だけだったら減塩も何もないじゃないですか。逆に何かあれば送ってもらって買いたいぐらいです。素材のありのままをどう楽しめるかを最近考えたりしていて、だから蒸し料理をすると気分的に外食っぽくなるので、それを楽しんだりしています」 ――苦しみの中に楽しみを生み出している感じがしますね。 「自由を求めてはいるんですよ。不自由だから自由を求めているのかなと思うし、自由になったら人生が面白くないと思うので、不自由でこそ正解かなと最近は思っています。その中で“不自由をどれだけ充実させるか”だなと思っているので、そういう意味では試合に対してもハングリー精神が剥き出しですよね」 ――そうすると決戦の時だけ不自由な鎖を解き放つという事ですね。 「そうです。僕が無名の時とかお金がなかった時の私生活が物凄い苦しかったんですけど、すごくハングリー精神が剥き出しで捻くれていたんですよね。悪い意味ではなく、そう思えたのも今その感覚が戻ってきているからなんですけど、今物凄いハングリー精神が剥き出しなので、多分すごいですよ。それが言いたかっただけです。  物凄いハングリー精神が上がっていて『なんでこんな所に出なあかんねん。俺はもっとでかいやろ』っていうのを結果で見せてやろうって思いながらずっとやっていたので、その余計な邪念がなかった時にカムバックしている感じなので、めっちゃ楽しみにしておいてもらえたらと思います。当日はギラギラしていますよ」 ――前回の仕留め切れなかったチャンヒョン戦は反省したんですか? 「反省しました。『あそこでこういったら』とか『この時にこういう風な気持ちになっていた』とか。当日も寝れなかったですし、当日にすぐ反省し始めて次に向けてやりつつ、治療も完璧に完治させてっていう感じです。連戦なので、大きい怪我じゃなければ、怪我は誰にでも付きものだと思うので、大きい怪我だけしないように限界までギリギリまで突っ走ります。周りにサポートしてもらって、なんとか体をケアして、F1のピットストップのような事をずっとやってもらっていて、『もう1回走ってこい!』みたいな感じで、自分が生かされている今に感謝しています」 ――それなのに巷の人たちは笠原選手の評価が高いですけど、そんな人たちに一言お願いします。 「それは良いんじゃないですか。否定する気も『何やコラ』って言うつもりもないし。ただそう見えるんじゃないですか?今までの穴だらけの僕を見ていたら、そう見えてもしょうがないだろうし、『噛み合うな』とか『これはいるな』とか思う事はあると思いますよ。そう思う気持ちは分かりますけど、本質的な所を見たら見る目がないなと思います。自分が1番自分に期待しているし、自分の増している強さを知っているので。僕がこうやって言えるだけで、当日まで皆んなは分からないと思うのでしょうがないとは思います。でも、その意見があるからこそ俺の試合がABEMAで数字がめちゃくちゃ伸びている証拠なので。負けてほしいと思っている奴らも“見とけよ”って思っています」 ――RISEのチャンピオンで、相手はシュートボクシングのチャンピオンで、RISEのリングで世界1を決めるために戦う事になりましたね。 「あの1回戦を見たら分かったでしょ。完全に僕が逆指名させてもらいましたけど、チャンヒョン選手vs.僕が実質の決勝戦だったでしょ。見たら分かるんですけど、どんどん相手は弱くなっていくんですよ。それに対して自分がどれだけ強くなっていけるかなんですよ。自分が油断していったら絶対にどこかで足元をすくわれるので、その自分との戦いをコントロールしないと世界1になる資格はないんですよ」 ――対戦相手と相手のバックにあるシュートボクシング協会という、大きいものに対してのメッセージはありますか? 「悪いことを言って良いんだったら、笠原選手の入場曲がJ-REXXXっていうアーティストの曲なんですけど。バカ正直にどうこうみたいな歌詞を入れて、気合を入れて『俺は純粋やで』ってフリしてますけど、シュートボクシング自体も汚いんですよ。僕からしたら、何も綺麗な所なんてカケラもないんですよ。正直者がどうとか、皆んなずる賢いから成功している奴ばっかりなのに、シュートボクシングもキックボクシング界も格闘技界もそうやし。  言ったら悪いですけど、金とか知名度とか名誉が全てと言われている時点で、頭がおかしいんですよ。俺がそれに対してめちゃめちゃハングリー精神もあるから、言い方はめっちゃ悪いですけど、それだったら俺は金も地位も名誉も全て手に入れてから言いたい事を言ってやるし、“この世の中を正してやるわ”って俺は思っているので。そういう意味では嘘で塗り固められたものを壊す良いきっかけになったので、ぶち壊しに行きますよ」 ――今回減量の調子はいかがですか? 「1カ月前にいつもの試合の1週間前の体重になったんですよ。だからほとんど減量は終わったんですよ。いつも1週間前は66~67kgくらいなんですけど、それが5月前にはその体重になってクオリティをバッチリ上げているんです。ずっと節制して頑張って蒸し野菜しているので」 ――スーパーヘルシーですね。 「だから減量がないというか、落ち過ぎているわけでもないので、完璧に仕上げにいこうと思っています」 ――そこからの方が楽ですもんね。 「その方が怪我しても無理して動かなくてもいいし、自分のペースで肩の力も抜けるし、試合モードでそのクオリティで3Rを集中してやるとかも身についていくので、イメージも湧いています」 ――あとは計量に遅刻してこなければ大丈夫ですね。 「それだけはいつも心配されるので、引き続き心配していてください(笑)」
全文を読む

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.338
2025年5月23日発売
14戦無敗、全試合フィニッシュ勝利でRIZINフェザー級新王者となったラジャブアリ・シェイドゥラエフ。その強さを徹底特集。ケラモフ戦の木村柊也ら無敗選手達。野杁正明×平本蓮のSP対談、ONE新王者・若松佑弥も
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア

関連するイベント