MMA
インタビュー

【UFC】ライト級王者マハチェフ「(タギル、ウマル、イスラムのダゲスタン3人の勝利で)間違いなく特別な夜になる」×挑戦者ツァルキヤン「25分間ノンストップで攻め続けて、向こうにレスリングも打撃もさせずにドミネートする」

2025/01/17 17:01
【UFC】ライト級王者マハチェフ「(タギル、ウマル、イスラムのダゲスタン3人の勝利で)間違いなく特別な夜になる」×挑戦者ツァルキヤン「25分間ノンストップで攻め続けて、向こうにレスリングも打撃もさせずにドミネートする」

(C)Hazuki photography/Zuffa LLC/UFC

 2025年1月18日(日本時間19日8時~)米国カリフォルニア州イングルウッドのインテュイット・ドームで開催の『UFC 311: Makhachev vs. Tsarukyan 2』(U-NEXT配信)では、日本から中村倫也が出場するプレリミナリーに続き、メインとコメインで2つの世界王座戦が組まれている。

 コメインは「UFC世界バンタム級選手権試合」として王者メラブ・ドバリシビリと挑戦者ウマル・ヌルマゴメドフが対戦。メインイベントでは「UFC世界ライト級選手権試合」として王者イスラム・マハチェフ(ロシア)にアルマン・ツァルキヤン(アルメニア)が挑む。16日、両者が個別会見に臨んだ。

▼UFC世界ライト級選手権試合 5分5R
イスラム・マハチェフ(ロシア)王者・26勝1敗(UFC15勝1敗)※UFC14連勝中
アルマン・ツァルキヤン(アルメニア)挑戦者・22勝3敗(UFC9勝2敗)※UFC4連勝中

 マハチェフとツァルキヤンは、2019年4月以来、5年9カ月ぶりの再戦。前回はマハチェフがUFCで初めてテイクダウンを奪われた試合として記録されるが、3Rのなかで徐々にマハチェフが上回り判定勝ちしている。今回は王座戦の5Rとなる。

 UFC14連勝中の王者マハチェフは、元UFC世界ライト級世界王者ハビブ・ヌルマゴメドフがセコンドにつくダゲスタン軍団の33歳の王者。MMA26勝1敗で、26勝中17試合でフィニッシュ勝利(5KO・TKO、12SUB)している。2022年10月のライト級王座決定戦でチャールズ・オリベイラに肩固めで一本勝ちで王座に就くと、2023年2月に当時のフェザー級王者アレクサンダー・ヴォルカノフスキーの階級を越えた挑戦を受けて判定勝ち。10月の再戦でも左ハイキックからのパウンドで初回KO勝ちした。前戦は2024年6月で、ライト級4位のポイエーと対戦。5Rにダースチョークを極めている

 王座初挑戦のツァルキヤンはUFC9勝2敗。UFCデビュー戦でマハチェフにレスリングで肉薄しながらも判定負けしたが、そこから5連勝。2022年6月にマテウス・ガムロに5R判定負けでUFC2敗目を喫したが、以降4連勝中。

 ダミル・イスマグロフに判定勝ち後、ジョアキム・シウバを3R TKO。2023年12月に4位のベニール・ダリウシュに1R KO勝ち。2024年4月にシャーウス・オリベイラをスプリット判定で破り、王座挑戦を決めた

 マハチェフがレスリングを警戒すべき数少ない相手であるツァルキヤンは、オーソから左の打撃も強い。マハチェフもボルカノフスキーとの再戦で、強いレスリングの圧力と極めを軸に、打撃でも左ハイでダウンを奪いTKO勝ちするなど、ムエタイ技術も含めスタンドの進化が著しい。5Rの王座戦で最後にベルトを巻くのは王者か挑戦者か。

イスラム・マハチェフ「初戦のときは正直、アルマンのことを深く知らず甘くみていた部分もあったけど今回は違う」

──この大会ではウマル(ヌルマゴメドフ vs.メラブ・ドバリシビリ)も同じイベントで試合をして、来週はウスマン(ヌルマゴメドフ vs.ポール・ヒューズ)も試合(1月25日深夜PFL『Road to Dubai』)が控えています。この状況をどのように捉えていますか?

「1月は我々のチームにとってハードな月なんだ。タギル・ ウランベコフ(フライ級11位・vs.クレイトン・カーペンター)もウマル・ヌルマゴメドフ(バンタム級2位)もウスマン・ヌルマゴメドフも、そして俺も戦うからね。全部の試合をしっかり見るつもりだし、自分の試合が終わってベルトと一緒にドバイへ飛んで、ウスマンをサポートする予定だよ」

──前回は「カスタムのファイトショーツは作らない」と言ってましたが、今回はとても素敵なデザインになっています。

「すごく気に入ってる。俺がリクエストした要素を全部入れてくれて、仕上がりも見た目も完璧だよ。今までの試合のショーツは全部コレクションしてるんだけど、今回のはその中でも最高の出来になると思う」

──2023年10月のボルカノフスキー(フェザー級1位)とのリマッチは10日ほどしか準備期間がありませんでしたが、今回は数カ月をかけてしっかり準備することができました。「リマッチが得意だ」とご自身でも仰っていますが、今回はどのくらい良い仕上がりになっていると思いますか?

「俺はリマッチが得意なんだ。前回みたいな短いスパンじゃなくて、今回はちゃんと準備する時間があったしね。(2019年4月以来の再戦となる)アルマンがやれることは全部わかってるし、俺も彼のスタイルを熟知してる。彼は常に同じスタイルで、優れたレスリングが強みだよ。それでライト級1位まで上がってきたんだろうし。でも今回はさらにしっかり対策できてる」

──アルマンは「試合でまだ誰も見たことがない秘技を用意している」と言っていました。何か心当たりはありますか?

「正直、アルマンの言うことはあまり信用しないほうがいいと思うよ。前も『チャールズ・オリベイラ(ライト級2位)を1Rでフィニッシュする』とか言っておきながら、結局フルラウンド戦ってスプリット判定勝ちだった。あまり真に受けなくていいんじゃないかな」

──アルマンは試合後はもうあなたについてあれこれ話さないとも言っていますが、彼はこの階級でも若いほうの選手です。もし今回あなたが勝っても、3度目の対戦が実現する可能性はあると思いますか?

「3回も戦うのはさすがに勘弁だな。同じ相手と3回もやるのはあまり意味がないと思う。UFCライト級はMMAで一番危険で層が厚い階級だ。新しい世代の強豪もどんどん出てくるし、もっといろんな相手と戦いたい」

──2025年にはライト級トップ10の多くが35歳以上になります。アルマンが最も若いのですが、今のライト級をどう見ていますか? 将来ベルトに挑んでくる可能性のある選手は誰だと思いますか?

「正直、今はアルマンのことだけに集中してるから、他の選手のことはあまり考えてない。アルマンは強いからね。次の相手が誰になるかとか、ランキングがどうなるとかはUFCの仕事だし、俺は契約書が来た相手と戦うだけ。ずっとそうしてきたし、俺はいつでもハングリーだ」

──もしチームとして一夜で3連勝(タギル、ウマル、イスラム)を達成できたら、あなたのキャリアの中でも特別な夜になると思いますか?

「間違いなく特別な夜になるよ。俺たちのチームにとってもロシアやダゲスタンMMAにとっても、大きな一日になる。2人はタイトルを懸けて戦うし、すごく楽しみだね」

──アルマンはこれまでの試合で「コーチの指示をちゃんと聞かない」と自分で認めています。あなたは常にコーチを信頼している印象ですが、その点で何かアドバイスはありますか?

「俺はいつもコーチの言うことをちゃんと聞くよ。彼のコーチのことは知らないが、俺のコーチ(ハビブ・ヌルマゴメドフ)は世界で最も優秀なコーチの一人だって分かってるし、小さなアドバイスが試合を左右することもあるからね」

──もし今回勝利すれば、ライト級のタイトル防衛数で記録を塗り替えます。これはあなたにとってどのような意味がありますか? UFCだけでなくMMA史上最高のライト級ファイターという呼び声もあります。

「正直、あまり意識してないんだ。最近メディアからよく聞かれるけど、記録を破るのはもちろん悪くない。勝ち数が増えれば殿堂入りとかも近づくだろうしね。でも俺はただ試合に勝つことだけ考えてるよ」

──アルマンはボルカノフスキーやオリベイラよりも危険だと思いますか? これまでの対戦相手と比較して、どのような難しさを感じていますか?

「いや、俺が対処を誤れば誰だって危険な相手になる。オリベイラは多くの相手をフィニッシュしてきているし、ボルカノフスキーもMMAで最もタフな一人だ。タイトルマッチの挑戦権を得るようなファイターは全員油断ならない相手だよ。ただ俺が自分のプラン通りに戦えれば、そんなに難しい試合になることはないと思う」

──初戦と同じ展開になると思いますか? それとも全く違う試合になると感じていますか?

「どうなるかは分からないけど、今回はしっかり準備してる。初戦のときは正直、アルマンのことを深く知らなかった。あのときは彼のUFCデビュー戦だったから、甘くみていた部分もあるかもしれない。今はお互いにすべてを把握してるし、ファンにとって面白い試合になると思う」

──ハビブがUFC王者になったとき、自分もそうなれると確信しましたか?

「その通りだ。ハビブがベルトを取ったとき、『俺もずっと同じトレーニングをしてきたんだから、できるはずだ』って思った。子どもの頃から一緒に練習して、同じメニューをこなしてきたから。ハビブは人一倍努力していたし、それがUFC王者への道を切り開いた。一番大事な点だね。彼を見て、俺もいけると確信したよ」

──今回のファイトショーツには山のモチーフや、カンジャリ(短剣)がデザインされていますね。これはダゲスタンの文化においてどんな意味を持つのでしょうか?

「山はパバクっていう、俺の村の近くにある有名な山なんだ。子どもの頃から何度か登ってる特別な場所だから、そこをデザインに入れてもらった。剣も伝統的なもので、俺たちの文化を象徴しているんだよ」

──ウマルとはもう10年以上の付き合いがあると聞きました。もし彼が今回の試合で王者になったら、ずっと彼を見てきたイスラムとしてはどんな気持ちになりますか?

「ウマルは若いころから一緒に行動してきたし、遠征にもずっとついてきて練習してた。彼は本当にハングリーで、昔から『UFCのベルトを獲りたい』って言い続けてたんだ。努力家だし、タイトルマッチにふさわしい実力を持ってると思う」

──ウマルと若い頃の面白いエピソードはありますか? 彼はイスラムのほうがいつも冗談を言ってみんなを笑わせていたと話していましたが。

「昔、サンノゼのジムで合宿してたとき、みんなでサンフランシスコに行こうって話になったんだけど、俺は『渋滞がひどいから行きたくない』って言ったんだ。そしたらウマルたち4人で車に乗って出発したんだけど、2時間後に連絡したら『まだホテルの近く』って言うんだよ。何があったか聞いたら、ウマルが車に軽油を入れちゃって走れなくなったらしい。それ以来、俺たちは冗談で『子どもをムエタイスクールに通わせると車に軽油を入れちまうぞ』って笑い話にしてる」

──ロサンゼルスにはアルメニア人コミュニティも多く、今回の大会ではアルマンを応援する声援が大きくなるかもしれません。相手に声援が集まる状況は気になりますか? それとも特に意識しませんか?

「オーストラリアでボルカノフスキーと戦ったときも、ほとんどが向こうの応援だったし、前回のニュージャージーでも俺より相手を応援してる人が多かった。でもケージに入れば観客は関係ないよ。結局は1対1だからね」

──これまでに3回ファイト・オブ・ザ・ナイトを獲得していて、そのうち1回はアルマンとの初戦でした。彼を相手にすると盛り上がる理由は何だと思いますか?

「初対決はすごくいい試合だったし、ボーナスも取れたよね。今回は俺としてはフィニッシュを狙いたいから、判定までもつれさせたくないんだ。アルマンもスキルがあるからファンも楽しめると思う。ライト級王者と1位の対戦だし、互いに総合力が高いから面白い試合になるはず」

──「再戦が得意だ」と言っていましたが、前回対戦してから相手も大きく進化している点についてはどのように考えていますか? また、アウェイの環境で戦うことを楽しんだり、逆に燃えたりすることはありますか?

「もちろん、相手が何をしてくるのかある程度、分かっているのは楽だよ。UFCの試合を10試合くらい見れば、おおまかなスタイルは把握できるからね。アルマンはずっと同じスタイルで、打撃で押し込まれたらテイクダウンに切り替えるっていう流れが定番なんだ。だから俺は打撃でもグラップリングでもレスリングでも、全部で苦戦させてやろうと思ってる。ファンが味方になってくれるのはもちろん嬉しいけど、相手を応援してる人が多くてもあまり気にならないかな。誰を応援しようが、最終的にケージに入るのは自分と相手だけ。ケージが閉まったら、もう誰も助けてくれないからね」

──ハビブは最近のインタビューで「現役で戦うより、コーチをするほうが大変」と言っていました。今回のキャンプでのハビブのエネルギーやアドバイスはいかがでしたか?

「彼は試合のコーナーだけじゃなくて、日々のスパーリングや練習でもアドバイスをくれるんだ。自分の言うことを聞いてもらえないとにすごく苛立つみたいで、近い存在だからこそ余計に感情が入るんだろうね。仲間の試合をコーナーから見るのは本当に神経を使うし、試合が終わると感情が空っぽになって眠れなくなるんだ。ハビブもそれを何度も経験してるから、今は少しずつ慣れようとしているんじゃないかな」

──「ハビブが苛立つときはどういう感じなのか」と気になる方も多いと思いますが、何か具体的なエピソードはありますか?

「ちょっと前のことだけど、タギルがスパーでケージに押し込まれてるときに、ハビブが何度も『こうしろ、ああしろ』って指示してたのに聞かなかったんだ。それでスパーが終わったあとに『俺には家族もいて他の仕事もあるんだ。お前が俺の言うことを聞かないなら、俺は帰るぞ。勝ち方に関して、お前には知らないことがある。ケージに押し込まれる時間が長いとラウンドを取られるんだぞ。俺に付き合って欲しいなら、俺の助言を聞け』って激怒していたよ。でもそれだけ真剣に見てるってことなんだ。コーナーの指示は外から状況を客観的に見てるからこそ重要なんだよ。俺もコーナーは信頼してるし、彼らが言うことをしっかり聞くようにしている」

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.335
2024年11月22日発売
年末年始の主役たちを特集。UFC世界王座に挑む朝倉海、パントージャ独占インタビュー、大晦日・鈴木千裕vs.クレベル、井上直樹、久保優太。武尊、KANA。「武の世界」でプロハースカ、石井慧も
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア

関連するイベント