MMA
インタビュー

【UFC】手の骨折から11カ月ぶり復帰の中村倫也「深く沈むほど大きくジャンプする」「勝ちにこだわる自分を肯定し続けて、今その瞬間、瞬間を生きていれば、フィニッシュも見えてくる」=1月19日(日)『UFC 311』

2025/01/16 11:01
 2025年1月18日(日本時間19日)米国カリフォルニア州イングルウッドのインテュイット・ドームにて開催の『UFC 311: Makhachev vs. Tsarukyan 2』で、元ONEのムイン・ガフロフ(タジキスタン)と対戦する中村倫也(ATT)が、U-NEXTのインタビューに応じた。  中村は、MMA9勝0敗(5KO/1SUB)の29歳。2017年レスリングU-23世界選手権のフリースタイル61kg級で優勝後、2021年7月に修斗でプロMMAデビュー。2022年6月から23年2月にかけて行われた『ROAD TO UFC』バンタム級トーナメントでググン・グスマン、野瀬翔平、風間敏臣をいずれも1Rフィニッシュで優勝、UFCとの契約を勝ち取った。  2023年8月のUFCシンガポール大会で、ファーニー・ガルシアに判定勝ち後、2024年2月の『UFC 298』アナハイム大会でカルロス・ヴェラにも判定勝ちしたが、右の拳を骨折し長期欠場。米国フロリダのアメリカントップチーム(ATT)での8週間のファイトキャンプを経て、さらに日本に戻り、高谷裕之、齋藤奨司、メンタルコーチらとともに最後の仕上げを行い、11カ月ぶりにオクタゴンに復帰する。  対戦相手はタジキスタン出身で、サンボをバックボーンに持つムイン・ガフロフ。ONEからUFC入りし2連敗も、前戦で初勝利を手にしており、2013年のプロデビュー以来KOで10勝、7つの一本勝利(アームバー4回、ギロチン2回、RNC)とフィニッシュ率が高く難敵だ。  試合を前に、UFCバンタム級ランキング入りを目指す、9勝無敗の中村倫也が意気込みを語った。また、同イベントの開催地はロサンゼルス国際空港に程近い、イングルウッド市のイントゥイット ドーム。7日に発生した山火事の被害が甚大なLA開催にあたり、現地の様子も伝えてくれた。 ◆『UFC 311: Makhachev vs. Tsarukyan 2』2025年1月19日(日)午前8時アーリープレリム、午前10時プレリム、正午メインカード開始(日本時間)※中村倫也は、アーリープレリム第3試合に出場予定。U-NEXT配信。 中村倫也「プレートを入れずに、血を洗い流さず自然治癒することで骨同士の結びつきは強くなる」 ──倫也選手の背後にお寿司の品書きが見えていますね! 減量メニューは寿司ですか? 「後ろがお寿司屋さんですね! でも今、僕が食べているのは肉とサラダです(笑)」 ──食事中にすみません。コンディションは良さそうですね。 「はい、バッチリです!」 ──1月10日にご自身が投稿された「私。。。明日 ロサンゼルス行きのフライトなのですが。。。」という内容も注目されていて、山火事で被害が甚大なLAでの開催ということで、心配もあったことと思います。到着されてからの現地の様子や、実際に目にしている状況を教えていただけませんか? 「僕が想像していたのは、空港に着いた瞬間煙たいのかな? ということや、会場もどうなるか分からないと言われながら出発したのですが、ただ“気にしてもしょうがねえ!”っていう振り切り方はずっとできていたので、最終的にはUFCの判断に従おうと思っていたのですけど、(現地に)入ってみたら全然そんな、想像していた煙が立ち込めているようなこともなくて。現地の人だと、ちょっと空気の違いは感じるみたいですけど。思ってたよりも全然大丈夫で、試合に集中できるなという感じですね」 ──火事の光景を目の当たりにすることもなく、ということですね。 「ホテルのロビーが70階と高層なので、バーっと山の方を見渡せるんですけど、火事が起こっているところを見ても全然火は上がってないですし、夜空は星がバッチリ綺麗に見えるし、いつも通りのような光景で、むしろ本当にそんなことが起きているのか、というような光景です。毎年この時期に(山火事が)起きる地域ではあるから現地の人も慣れているというのもあると思います。だから選手としては、全然問題ないですし、心配なことは全くないです」 ──そういう被害に遭った場所に向かう際には、気持ちの面で影響はありましたか?たとえばですが、「勇気づけなくては」というような……。 「僕の戦うモチベーションとしては、常に日本を背負ってやっている気持ちは変わらないので。だから、現地のことを意識としては持っていないですが、結果的にそういうことになればいいかなとは思っています」 ──改めて、およそ1年ぶりの試合ということで、現在どんな心境でファイトウィークを迎えていますか? 「ファイトウィークになったらもう、どうパフォーマンスを出そうかなっていうことに常に集中している状態なので、試合間が空いたことについては特に考えていません。準備の段階で、そこに対する不安みたいなものもありはしましたけど、今回メンタルコーチングの方にもセコンドについてもらって、そこは、バッチリ心配ないように当日出せるように持っていって、チームとして行くので、不安は一切抱えていないです」 ──チームや練習環境についてなのですが、出稽古していたアメリカン・トップチーム(ATT)に所属することに決めたことについては、どういった経緯がありましたか? 「ATTでは(堀口)恭司さんに、自分がMMAをやっている中で、ここが甘い部分なんだというところだったり、このシチュエーションでの考え方はこうだとか、体を動かしながら指摘をしてもらっていて、すごく腑に落ちるところが多くて。そういう感じで、近くで同じ現役として(堀口選手が)背中を見せてくれる姿が“すごくいいな”と思って。所属になることを決めました」 ──そういう状況で今回セコンド陣には変化がありますか? 「今回は11月あたりに試合があるかなと思って、10月末ぐらいに帰ってきていて、中途半端な時期に試合が決まったんで、また日本でキャンプを張りました。だから今回は調整もキャンプも日本でやったので、あのいつも通り日本のチームでメンバーを組みました。やっぱり高谷(裕之)さんに後ろについてもらったら自分の重心も落ちるし、一個、力も、ギアが変わるっていう感覚がずっとあるので、今回もお願いしてます。で、そこのチームの齋藤奨司選手と、あとはメンタルコーチングの慶人さんとともに臨みます」 ──前戦では、試合直後、判定の時からずっとフィニッシュに至らなかったことに対して悔しそうな表情を浮かべていて、謝っている姿が印象的でした。 「ねえ、偉そうに(笑)」 ──いやいや、そんな。とはいえ見ている側としてはUFCでの連勝をご本人とともに喜びたかったところではあるかと思います。 「そうですよね。やっぱり、そういうふうに思わせてしまったことに対しても、すごい、“ああ、反省……”っていうのも感じましたし、今回は、何よりも(UFCは)すごい厳しい場所であることには変わりがないので、勝利を一回しっかり喜ぶのも大事だなというふうには、感じましたね」 ──当時を振り返ってみればそういう厳しい場であればこそ勝ち方が重要だったのですね。 「周りが『プロスペクトだ、期待の新人だ』と、すごい盛り上げてくれていて、自分もそこに乗っかりたいって思いもあったし。やっぱり(見ている人が)そうやってフィニッシュして勝っていく選手だからこそすごく好きになるっていうのは、ちっちゃい頃の自分もそうだったので、そういう姿を目指していたが故に、自分自身にがっかりして、その落差にがっかりして。“2連続で判定か”っていう悔しさがあったんですけど。  今回は“もう判定でもいい、絶対に勝つ!”という気持ちになっています。そういう自分も大事にするようになれた、という感じですね。前は“ヤバい! このままだとフィニッシュできないぞ”って、自分の中でも戦いが始まっちゃって。それで無理やり行ったところ拳を折ったりもしたんだな、というのも分かったので。あくまでも勝ちにこだわる自分っていうのを肯定し続けて、その中で、常に今その瞬間、瞬間を生きていれば。見えてくるものがフィニッシュだと思っているので、今は」 ──その当時であってもフィニッシュを追求すること自体は、確実に勝利するためには必須の考えだったと思うのですが、そのために焦ってしまったことというのが、ご自身としては反省する点なのでしょうか。 「当初は反省点でしたね。ただ、やっぱり一番大事なのは勝つことだし、勝つために一番可能性が高い選択をして行くことを選んだ自分のことは、褒めるようにはなりました。ただし、それで頭が先に行ってしまって心と体が分離してしまう、その瞬間に、怪我や事故というものが起こったりすると思うので。そういうことがないように今回はメンタル面も仕上げてきました」 ──前戦で骨折した拳の治療方法なのですが、プレートを入れず、自然治癒をしたということなのですが、それはどういう違いがあるのでしょうか。 「折れた瞬間、お世話になってる先生から、『インタビュー見たけど早くこの接骨院行って』って言われて。川越の骨折の専門の接骨院に行ったりして。で、お話を聞いて。折れ方的にすごい『自然治療、自信ないな』とか最初は言ってたんですけど、でもまあ、もう『骨折の治療には日本一自信があるから、もう任せて』と、最終的に言ってもらって。自然治癒のメリットは、骨折したらやっぱ骨をくっつけるために血を集めるんですけど、それを洗い流さないので、骨と骨のくっつく力っていうのはかなり強くなる。  プレートをパッて入れてしまうよりも、骨同士の結びつきっていうのは強くなるし、プレートを入れれば早く打てるようになるんですね。すぐプレートが骨の役割をしてくれるんで。だけど、その血を手術の段階で洗い流してしまうから、骨同士の結びつきっていうのは弱くなってしまうから。ガンガン打ってたらプレートが曲がって、で、骨折面がまたぐちゃってやって複雑骨折で再手術だったりっていう可能性もあるっていうのを聞いて。やっぱり、心配なく思い切り打ち込みたいなと思いました。自分がかがんで、下がっている時間はその分長くなったんですけど、深く沈むほど大きくジャンプするっていう先生の言葉を信じて、長いリハビリを乗り越えました」 ──リハビリ期間が長くなり、復帰が遅くなることについてどのように考え、行動していましたか。コンスタントに試合を積みたいという歯痒さはなかったでしょうか。 「やることは無限にあるし! パンチ以外にもですし、逆に(拳を痛めたことで)そっちに気が散らない分、やりたいこと、思いっきりできるじゃん! と思って。手以外の部分を見つめたりできる時間になりました」 ──前向きにとらえて出来ることを行動してきたのですね。その怪我はさておき、ご自身のMMAの完成度を上げるために、どのような課題をもって取り組んできましたか? 「スピードと反応に自信がある分、そこに頼ってしまった部分があって。チャンスを逃したりする、そういう部分が自分の中ではすごく多いと思ったので、よりギリギリでかわすとか、よく見て、点と点じゃなくて、いろいろな攻撃があってこの攻撃に繋がってるんだっていう、線でつなげる格闘技だとか、自分が理想とする格闘技っていうものを作る時間にはなったかなと思います。こういう格闘技したいなって思ってる動きを追求していました」 ──では、待望の復帰戦について、対戦相手のムイン・ガフロフ選手の印象は? 「対戦相手はフィジカルが強くて組みの力もあるし、思い切り振ってくるし、フィニッシュ率も高く危ない相手っていうことをちゃんと認識しながら。自分が、一個レベルアップした格闘技っていうのを作ってそういう相手を制すっていうのは、今後登っていく上で絶対に必要だし、そういう意味ではいいテストになる相手だなっていうふうに思ったので、いい感じで作り上げてきたんで、それを披露するのが楽しみです」 ──ガフロフ選手、フィニッシュ力のある強い選手ながら先ほどおっしゃったように「厳しい」UFCにおいては、2連敗から前戦で勝ち星を掴みました。今回は生き残るために絶対落とせない気持ちでいると思いますが、そういう相手と対峙する倫也選手としては……。 「“相手の気持ちは知らねえ!”っていう姿勢で臨みます。こっちにはこっちの都合があるんで!」 ──今回、どんな試合を見せたいですか? 「今後、特に今年はしっかり試合数もこなし、3つぐらい取ってランキング入りにしたいと思ってますので、そこにつながるパフォーマンスを出したいなとは思ってますね。この1年、あの深く屈んだ分、しっかり地に足をつけて作ってきた格闘技を披露するのが楽しみです」 ──セミメインイベントは、ご自身の階級でタイトルマッチが行われますが、アピールしたい等、意識することはありますか。 「そういうやつらって、あんまり下のことは考えていないですし。まあでも、UFCのスタッフには“あ! 食い込んでくるじゃん”っていうふうに思わせるようなパフォーマンスをはしたいかなと、思ってますね」 ──ズバリ、タイトルマッチの勝敗予想を! 「ウマル・ヌルマゴメドフの……、……うーん……、判定勝ち!」 ──ありがとうございます! 最後に、日本でU-NEXTを通して応援している皆さんにメッセージをお願いします。 「日曜日はアーリープレリムでまだあの朝早い時間になると思うんですけど、元気をいっぱい与えますので、皆さん早起きして、ぜひ当日はU-NEXTでご視聴お願いします」
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