(C)新井丈 ARAI JO
2024年9月29日(日)さいたまスーパーアリーナで開催される『Yogibo presents RIZIN.48』のフライ級で、南アフリカEFCフライ級・バンタム級二階級王者エンカジムーロ・ズールーと対戦する新井丈(和術慧舟會HEARTS)が、KrushやKNOCKOUTで戦う心直(REON Fighting Sports GYM)の道場破りを受けて立ち、仮想ズールーとしてスパーリング。MMAの厳しさを叩き込み、その後、練習相手として交流を深めている。
“NEVER GIVE UP”を信条とする新井は、プロ初勝利以降、9連敗を喫したが、2019年10月から怒涛の11連勝。2023年11月に、同年のベストバウトともいえる、山内渉との修斗世界フライ級王座決定戦に3R KO勝ちし、ストロー級とフライ級で修斗史上初の2階級同時王者となった。
その激闘からわずか1カ月後の大晦日にRIZINに初参戦。ヒロヤと対戦したが、2RハイキックでダウンしTKO負け。2019年2月から続いた11連勝がストップした。
その後、新井は連戦から離れ、本格的に肉体改造に取り組み、これまで適正階級だったストロー級からフライ級で戦うための身体作りを行って来た。
(C)新井丈 ARAI JO
9カ月ぶりの復帰戦が、南アフリカの二冠王者ズールーに決まり、9月29日の試合に向け、追い込み練習に入るなか、見知らぬキックボクサーから喧嘩を売られた。
「オープンフィンガーキックルールじゃなくてMMAルールで新井丈とやりたい 修斗で強く見えるだけでしょ?w おれこないだまで修斗のこと地方団体だと思ってたしwwww MMAデビュー戦にちょうどいいと思って喧嘩売りました 俺の喧嘩買ってくれませんか? もちろん公式戦で」(心直)
その挑発を新井丈は無視することなく「なんで?? HEARTSにおいでよ 明日やってあげるよ」「1週間くらいはジム来てもすぐ空けれるようにしとくから」と返答し、DMでも連絡。6日後、和術慧舟會HEARTSの扉の前に、心直はやって来た。
MMAデビュー戦で、というのはナメ腐ってるんで、新井丈を
──新井選手のXの「しんた来た これからやる そんなDAY6」の投稿を見て、すぐに大沢代表に「やるなら行きます」と連絡したら「終わりました」という返信が返ってきまして。
「あ、あのスパーリングを現場で見ようとしてたんですか?(笑)」
──はい(笑)。まず経緯を整理しますが、発端としては、心直選手の発言が気になっていたのですか。
「気になってもいないですけど(笑)。存在は知ってて、Krushとかでへんなバズり方してるイタい奴がいるという認知はしていたんですよ。そのなかで、RIZINのカード発表会見で俺にも木下カラテにも1、2個しか質問飛んでこねーだろうな、みたいな。だいたいメイン級の選手に質問が集中して、会見では俺らヒマなんだろうなって、思ってたんですよ。まあ、実際そうなって。その後に、心直がああいう発言をして。俺がそれを知った頃にはインプレッションが結構伸びていたので、“これはせっかくだから、ごちそうになろうかな”“ちょっと絡んでおくかな”みたいなイメージで対応した感じですね、最初は」
──修斗王者で本来、格上である新井選手が対応しなくてもいいところで敢えて絡んだのは、今おっしゃったようなかたちで、RIZIN参戦を盛り上げる側面があったということですね。とはいえ、やはり修斗について心直選手から「地方団体」というような言われ方をしたことには、カチンと来るものはあったのでしょうか。
「そうですね。そこからは、“マジでこいつ絶対後悔させたろ” というスイッチ入って、案の定インプレッションもさらに伸びたし、ちょっと“何日か心直イジリを続けていこうかな”と思っていました」
──「オープンフィンガーキックルールじゃなくてMMAルールで新井丈とやりたい」「MMAデビュー戦にちょうどいい 俺の喧嘩買ってくれませんか? もちろん公式戦で」と言われて「HEARTSにおいでよ 明日やってあげるよ」と返して6日間、実際にHEARTSに来るとは思っていました?
「来ないと思ってましたね、ジムには。SNSで経過報告をあげるなかで、“DMしてみた”っていう日があるんですけど、その返信で最終的に来る形になったっていう。俺がDMしなかったら来る勇気がなかったと思いますよ。直接したことで逃げられなくなった感はあります」
──やりとりの当初からHEARTSに来ればいいと提案していたのは、ジムで十分、あるいはお金をとるようなものじゃない、という?
「フッ(笑)。……そりゃそうですよね、(MMA)デビュー戦で、というのはナメ腐ってるんで、新井丈を。試合なんかやるつもりはなかったし、ただ修斗をバカにしたことだけは後悔させないといけないと思ってたので、『HEARTSに来るなら、いつでもやってやるよ』って」
──心直選手は、当日は一人で現れたのですか?
「一人で来ましたね。大沢さんが終わったあとに “よく一人で来たな! 怖くなかったの?"って聞いてたんけど、“怖さはありませんでした!”って。多分アイツ、ただのバカなんです(笑)、怖いもの知らず」
──直近のKrushでの矢島直弥戦のKO勝ちなど、左の攻撃は強いですし、打撃では自信を持ってやれる気持ちだったのか。ヒジやヒザもありで?
「ヒジ、ヒザもサポーターつけて全部ありの5分3ラウンドでしたね」
──この出稽古スパーリングに、大沢さんは「それでいいよ」という感じでしたか。
「はい。あの人はなんでも許してくれるので。ただアレっすね、大沢さんも心配はしていたので、直前にリスクヘッジの意味も含めて、即席の契約書を作ってくれて。双方合意のもとでやるスパーリングで、ケガしても自己責任だというような内容のものを書いて、やっています」
──心直選手が「行く」と返答し、そして実際に来たとき、どう思いましたか?
「うん、まあ、“よく来たな” というくらいに思いましたけど」
(C)新井丈 ARAI JO
──長い時間の立ち合いから始まった最初のラウンドではどう感じました?
「最初は打撃だけで勝負しようと思ってたので、半分くらい打撃やって。で、まあ相手とも“はじめまして”だし、試合のイメージで自分はやったので。次のRIZINでの対戦相手(エンカジムーロ・ズールー)と同じ“蹴れるサウスポー”なので、それに対して自分の練習してきているスタイルがどこまで通用するのか、みたいな実験的な意味合いもあって集中してやってましたね。
そのなかでもキックボクサーにすぐテイクするのは、ちょっと漢じゃねーな! と思ったので、最初の半分くらいは打撃でやったんですよ。それはやっぱり強かったです、打撃に関しては。やっぱりHEARTSの選手とはまた違うスタイルだし、そこを専門分野とする選手だなとは感じました」
──たしかに、サウスポーで蹴れる相手との緊張感あるスパーはズールー戦前にちょうどいい機会だったかもしれませんね。やってみて、あの左テンカオ、左ストレートはやっぱり危ないですし、実際いかがでしたか?
「うーん、あそこらへんに関しては何も怖くなかったですけど、はい(笑)」
──たしかに、新井選手はガンガン前に出て拳を振っていました。
「ある程度、タイミングも、もらってはいるけど把握はできていたというか。相手も疲弊してきたし、自分の圧もかかっていた感じですかね。やっぱり新井丈にはああいう攻撃を狙うんだろうなって。いい練習にはなりました」
──そしてテイクダウン後は、スタンドもグラウンドも一方的でしたが、ダウンやブレーク後に心直選手も頑張って続けましたね。
「そうですね。そこは根性あるっていうか、やっぱバカだなと思いました(笑)」
──練習だったから新井選手も本気ではない部分も多く感じられました。大沢代表が分けても立ってくるならやろうという気持ちでしたか。フィニッシュも出来たように感じました。
「うん……、まあ、大沢さんが途中から心直のセコンドしながら“最後まで頑張れ!”みたいな雰囲気だったので、俺もそういう考えでしたかね」