「あの低い構えからのワンツーは練習していました」(山口元気代表)
鈴木が所属するクロスポイント吉祥寺の山口元気代表は、スタンド部分での今回の秘策は「構え」にあったことを明かす。
「実は、あの低い構えからのワンツーは、練習してきました。組みに対処したあの構えからもいかに打撃を当てるか」
その言葉通り、鈴木は、組みに対処できる低い構えからでも、カーフキックを含む左右のローを金原の前足にこつこつと当てていった。
フィニュシュに至るポイントは3つある、と鈴木は言う。
「一個はカーフキックから勝負のチャンスの流れがあって、ボディ打ちの流れがあって、あと腕十字を狙われたときにそこでいかに綺麗に対処するか、そこが勝負どころでしたね」
息詰まるスタンド戦の攻防。徐々に圧力をかける鈴木は、下がりながら左ジャブを突く金原をかわして左ボディ! さらに金原の左ジャブをかわして右を当てると、金原は一瞬、足が揃ってしまう。
畳みかける鈴木は、ここでワンツーの右を強振。ダックして避けた金原はロープ背に右を返すが、そこに右を狙う鈴木は望んでいた「打ち合い」の展開に持ち込む。
嵐のような強打のラッシュ。
「千裕の打撃は、自分が想定していたものでした。パンチが強いし、蹴りだったり、ハンドスピードも速かった。打ち合いになることも結構、覚悟決めていたんです。そこで勝てないとは自分でも分かっていたけど、それを“させられた”というか、自分がそれに“呑みこまれてしまった”という感じですね」(金原)
カーフを当てた鈴木が、フィニュシュに持ち込んだ左ボディ。それはMMAで打つことが難しい距離の打撃だ。つまり、相手のテイクダウンを切ったことで鈴木は、上下に散らした打撃を入れて、組みのあるMMAのなかで金原の懐に入り、レバーを突いている。
「キーポイントがあるんです、左ボディです。金原さんは左ボディが効いて動きが止まって目つきが変わったので、仕留めに行きました」(鈴木)
右カーフ、左ボディ、右ストレート。金原の打ち返しより回転速く左右を打つ鈴木の右に、後退した金原は腰を落としてマットに手を着いた。
「ガードの上から打たれて、効いてしまって、そのままちょっともうグラグラしてしまって。一発もらったらもう終わりだとは自分ではずっと思っていたので、ガード高めには意識していたけど、そのガードの上から効かされてしまった。ガードの上から効かされたこと? 練習とかでも無かった」(金原)
ガードを固めて立ち上がる金原を詰めた鈴木は右ヒザから左アッパーのダブルで金原をダウンさせると、ハーフガードの金原を潰して左のパウンドをラッシュした。
被弾しながらも、金原は下から腕を手繰り、腕十字を狙っている。しかし、パウンドしながらも鈴木は、その動きを察知していた。
「あそこで腕取られていたら僕の負けでしたけど、臨機応変に対応できたので。そこが最後の勝負どころじゃないですか」
下からの腕十字もかわして、金原が戻した両足を押し込んだ鈴木が中腰からパウンドを連打すると、正面からチェックしていたサブレフェリーからリングにレフェリーストップのバトンが投げ入れられた。