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UFCのダナ・ホワイト代表が12日(日本時間13日)、米国のスポーツアナリストでプロレスラーのパット・マカフィーの番組に出演。11日(同12日)のUSADAの声明を「卑劣な行動」と表現し、UFCが新たなアンチ・ドーピング・プログラムの運営に、独立した会社を雇うつもりだと語った。
米国アンチドーピング機関(USADA)は11日、トラビス・タイガートCEOの声明として、「コナー・マクレガーがUSADA検査対象者に復帰したこと」と、「UFCとUSADAがアンチ・ドーピング・プログラム契約を2023年をもって終了すること」を公式に発表した。
そのなかで2021年7月のダスティン・ポイエー戦での負傷以降、2023年「TUF 31」後のマイケル・チャンドラーとのコーチ対決に臨むべくUSADA検査対象者に復帰したマクレガーについて、「少なくとも6カ月間検査プールに入る必要があり、2回の陰性検査を提出することを義務付けている」とし、「我々はUFCに対して、いかなる例外も認めるべきではないということをUFCに対して明確かつ断固として伝えてきた」と記していた。
マカフィーの番組でダナ代表は「(USADAとは)年末まで。我々は別の方向に進むことにしている。特に、あの汚れた、昨日彼らがやった卑劣な行動には後で対処するつもりだ」と語り、「USADA以外にも薬物検査を行なっている会社はある」と、新たなドラッグテスト会社にてドーピング検査を行うことを示唆していた。
その後、UFCのハンター・キャンベル エグゼクティブ・バイス・プレジデント兼チーフ・ビジネス・オフィサーは米メディアに、USADAに謝罪と声明の撤回を求める法的書簡を送ったことを語り、UFCが今後、USADAの代わりに「ドラッグフリー・スポーツ・インターナショナル」を採用することを発表している。
「ドラッグフリー・スポーツ・インターナショナル」は米国ミズーリ州カンザスシティの薬物検査機関で、NCAA、NFL、MLB、NBA、LPGA、NASCAR、HIWU(The Horseracing Integrity & Welfare Unit)など、300以上のスポーツ団体のドラッグテストを行ってきた。
同社は2018年にインターナショナル・ドーピング・テスト&マネジメント(IDTM - スウェーデン・ストックホルム)と合併。WADA規程に準拠したドラッグテストの利用が可能となっている。
その中で各団体は、それぞれのプログラムでドラッグテストを行っている。今後、UFCはどんなレベルで、同社でドラッグテストを実施していくか。
五輪レベルのチェックでは、選手は練習時間と場所を居場所情報として予め提出することが義務づけられており、WADA基準のUSADAでは、このプログラムが適用されていた。
一方で、UFC関係者・ファイターの間では、このUSADAの居場所ポリシーの扱い方、システムに不満も上がっていた。
UFCのカラー・コメンテーター(解説)のジョー・ローガンは、自身のポッドキャスト『ジョー・ローガン・エクスペリエンス』で、UFCは薬物検査を社内で行うべきだと発言し、「6カ月ルール」や、ファイターが治療目的で薬物を摂取することの制限について、利点よりも難点の方が多い、と語っていた。
「私は、それらすべてを社内で行うべきだと本当に思う。USADAは──まあ、もうやっていないが──計量の日と同じように朝6時半に選手たちを起こすようなことをしていたからね」
さらに、USADAがファイターの健康に有益である可能性のあるサプリメントを禁止することで、利益よりも害の方が大きいとした。
「ボディプロテクションペプチド157は怪我の治癒に非常に優れたペプチドです。アスリートは、“特にMMAのようなスポーツ”では、できることはすべて活用できるようにあるべきだと思う」
しかし、USADAのトラビス・タイガートCEOは、11日の声明でローガンのコメントに言及し、「我々は承認された医学的根拠のないファイターが、単にオクタゴンに戻るために、実験的な未承認ペプチドやテストステロンのようなパフォーマンス向上薬を治癒やケガのために使用することを許さない」と反論していた。
新たなドラッグテスト会社と組むことを決めたダナ・ホワイト代表は、「このスポーツをやっていて学んだことの一つは、現実はどんな脚本よりも優れているということだ。現実について話そう。コナーとチャンドラーは戦うはずだった。コナー・マクレガーがオクタゴンに戻ることは、我々全員が想定している。2024年は『UFC300』が控えているし、コナーが戻って来る。来年か、どうなるか」──UFCの今後の発表が注目される(※【追記】2024年8月現在のUFCアンチドーピングプログラムの実態を朝倉海が語る)。