ザイードは上から攻めるのは強い
──青木選手の中でザイードが危険だと思うポイントは?
「やっぱり上から攻めるのは強いと思いますよ。上から攻めるのに対して、僕は逆に上を取るのか、もしくは下からやるのかは試合をしてみないと分からないけど。とにかくやり甲斐があると思うんですよね」
──青木選手の能力を総動員して戦うということですか。
「能力を総動員だし、全部頭を使ってやるのが面白そうで、やり甲斐があると思います」
──そうしたらスタンスは変わらないと思いますが、今までとアプローチの仕方は変わりますか。
「いや一緒一緒。全部一緒。全部一緒でぶつけるだけ。まあどう出るかは分からないですよ」
──具体的な対策はありますか。
「相手の出方が分からないですよね。中国人(リーポン)の時みたくホールディングして来るのか、もしくはちょっと動きがあるのか、出方が分からないので、やってみないと本当に分からないです。そんなの現場の“セッション”だから、お互い向き合ってみないと分からないよっていうことを毎回思うんですけど。向き合ってみてその日の空気、相手の体調、雰囲気、風、全部読んでやんないと分からないですよね。それが面白さだと思うし」
──常にご自身をアップデートしてはしていると思いますけど、引き出しの数はどんどん増えていきますか。
「減っている。減らしている。もう、いっぱい選択をするようになったら、若い子の方が選択する体力もあるし強いから、とにかくシンプルにシンプルにいかに無駄なことを排除していくかっていうスタイルですよね」
──シンプルに、誰もが知っている技の精度やオリジナルなディテールを磨いて勝つ。一方で、感情が溢れている青木選手を良く見ますが、勝利にこだわる感情はどういうものですか。
「それは、僕ほど “勝ちたい”と思ってやっているやつはいないですよ。これは文化的に理解されないかもしれないけど、やっぱりみんな勝ちたくて勝負に徹底的にこだわるから、勝敗を越えたものが作れると思うんですよ。そこで勝負を捨てちゃったら、ただの演劇になっちゃうわけじゃないですか。その演劇をやりたいわけじゃなくて、僕は勝負に徹底的にこだわることによって、そこで起こる自分の伝えたいことだったり、物語、ストーリーをお客さんに伝えたいんですよね」
「刺激ジャンキー」だからやりがいがある
──ザイード・イザガクマエフ戦を受けることは青木選手のキャリアの中でも良いチャレンジになると思いますか。
「楽しいというか快楽というか刺激だと思いますよ。39、40近くなってきて選手を続けていると、皆なんかこう変わった人というか、社会的にあれな人の巣窟ではあるんですけど。やっぱり皆に共通して言えるのは、“刺激ジャンキー”だから、これ以上の刺激はないっていう意味で、やっぱりやりがいがあって楽しみですよ」
──イザガクマエフ選手は、青木選手と11歳差で、幼い時から青木選手のことを見ていた。だからこそ対戦を熱望してきたと思います。青木選手は若い選手に伝承していきたいと以前言っていましたが、国は違えど何か伝えたいことはありますか。
「別に選手に伝えたいマインドはなくて。格闘技選手に自分のやってきた思い、自分のやってきたことを伝えたい思いはあんまりないんですよ。それは何でかっていうと、結局やっていることが違うんだから伝わらないんですよね。線でやっている人と点でやっている人とでは伝わらなくて。じゃあどこに伝えたいかっていうと、社会で頑張っている人たちに青木的なイズムというか猪木イズム。古舘伊知郎のインタビューの『闘魂は連鎖する』じゃないけど、その自分の考え方みたいなものを残していけたら幸いだなと思うくらいかな」
──イザガクマエフ選手は倒す価値のある選手だと。
「いや、何だろな。究極相手じゃなくて自分がどれだけ一生懸命やれるかなっていうとこの目線が大きいですね」
──そういう意味では青木選手が今まで築いてきた事、これから築いていくストーリーの中で勝ちたいということでしょうか。
「いや、勝ちたいな。それは思います。また何かパシッと勝ちたいなという気持ちと。もうちょっと競技生活を続けたいなと思いますよね」
──どんなものを残したいですか。
「“残したい”ね……。これが不思議と無いんだよね。全く無いんだよ。自分の資産、レガシーみたいな。残したいもの全く無い。本当に好きにしてくれって感じですね」
──この試合は、どんな展開になると思いますか。
「“我慢比べ”じゃないですか。何かこう我慢比べで負けないような試合をしたいと思いますけどね」