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コラム

【K-1】王者・大和哲也「最高の恩返し」と挑戦者・佐々木大蔵「最強の証」2人の歴史と想いが詰まった“K-1 NEXT”

2022/09/08 19:09
【K-1】王者・大和哲也「最高の恩返し」と挑戦者・佐々木大蔵「最強の証」2人の歴史と想いが詰まった“K-1 NEXT”

2020年12月13日に対戦している大和(左)と佐々木

 2022年9月11日(日)神奈川・横浜アリーナで開催される『K-1 WORLD GP 2022 JAPAN~よこはまつり~』。

 今大会の目玉の一つは、武尊が返上したベルトを誰が獲るのか、つまり「武尊の次にK-1の主役になる者は誰か」を決めるK-1スーパー・フェザー級王座決定トーナメント。


  そしてもう一つの大一番が、K-1スーパー・ライト級タイトルマッチ王者・大和哲也vs.挑戦者・佐々木大蔵だ。大和と佐々木は2年前にスーパーファイトで激突し、この時は佐々木が勝利しているが、今回はどうなるのか。単なる「再戦(大和にとってはリベンジマッチ)」ではない、興味深い試合だ。


 大和のK-1王座戴冠は、近年稀に見るドラマティックな結末だった。2010年7月、国立代々木競技場第一体育館で開催された『K-1 WORLD MAX』の-63kg日本トーナメントを驚異の3連続KO勝利で優勝。一躍「K-1MAXの新たな主役」と注目を浴びながらも、当時のK-1が活動休止となり、大和がK-1のリングで輝くことはなかった。

 大和はムエタイ・キックボクシングに戦いの場を移し、合計8本のベルトを獲得した後、新体制で復活したK-1に2017年から参戦。満を持しての「K-1世界王座への再チャレンジ」だったが現実は厳しかった。


 2018年3月に野杁正明の持つK-1スーパー・ライト級王座に挑んだ一戦ではKO負けを喫し、同年11月の第3代K-1スーパー・ライト級王座決定トーナメントでは一回戦でゲーオ・ウィラサクレックの左ハイキックに沈んだ。さらに不可思や佐々木大蔵といった同階級のトップクラスの選手たちにもワンマッチで敗れた。

「大和哲也の時代は終わった」と囁かれたものの、大和自身は「必ずK-1王者になる」という夢をあきらめなかった。それまで取り入れることがなかったボクシングジムでの練習をスタートさせ、2021年12月のK-1大阪大会で大野祐志郎相手に復活のKO勝利。今年4月の『K’FESTA.5』でK-1王座挑戦のチャンスを得ると、12年前と同じ代々木第一、しかも12年前にトーナメントを制した時と同じ左フックで、王者・山崎秀晃を一撃KOし、悲願のK-1王者となった。


 団体の活動休止と2度の挑戦失敗を乗り越え、12年越しに叶えた34歳でのK-1王座戴冠。これほど分かりやすく「あきらめなければ夢はかなう」を証明してみせたファイターは大和哲也以外にいないだろう。

 対する佐々木大蔵も「叩き上げのテクニシャン」のキャッチコピー通りに、ここまで決して平たんな道のりではなかった。

 デビュー当初は勝ち負けを繰り返すキャリアで、決してトップ選手とは言い難い選手だった。2016年に第4代Krushライト級王座決定トーナメントを制して、キャリア初のベルトを手にし、K-1の王座決定トーナメントに選ばれたが、待っていたのは厳しい現実だった。


 2017年の初代K-1ライト級王座決定トーナメントでは1回戦でウェイ・ルイにKO負け。階級を上げて挑んだ2018年の第3代K-1スーパー・ライト級王座決定トーナメントでは、決勝まで勝ち上がりながらゲーオに敗れて準優勝。K-1のベルトは手が届かなかった。

 それでも佐々木はあきらめることなく、2019年にKrushスーパー・ライト級王座を獲得すると3度の防衛に成功。K-1でのワンマッチと合わせて驚異の10連勝をマーク。その中には2020年12月の現王者・大和哲也戦の勝利も含まれる。


 同門の山崎秀晃が同じスーパー・ライト級のK-1王者に君臨していたため、王座挑戦のチャンスは巡ってこなかったが、コツコツと勝利を積み重ね、ひたむきに強さを追求してきた。4月に山崎が大和に敗れて王座陥落すると、佐々木は6月のKrushで王座防衛に成功した上で「大和選手の挑戦者、僕しかいないでしょ!Krush王者としてK-1王者に挑ませてください!」と宣言。普段はほとんど自己主張をしない佐々木の珍しい「王座挑戦アピール」で一気に機運が高まり、大和も受諾して今回のタイトルマッチが実現した。


 王者・大和は「2年前に大蔵選手に負けて、生まれ変わることが出来た。僕に強くなるきっかけを与えてくれた大蔵選手に最高の恩返しをしたい」と、この試合を“恩返し”と表現し、挑戦者・佐々木は「僕は格闘技で一番強い男になりたいという思いがあって、その結果としてK-1のベルトという証が欲しい」とベルトを位置付けている。

 タイトルマッチを組んだ中村拓己K-1プロデューサーは「この試合もK-1が見せたい『K-1NEXT』です」という。


「今K-1では『これからのK-1を誰が担っていくのか?』というテーマのもと『K-1 NEXT』という言葉を使っていますが、これは新しい選手や若い選手だけのことではない。キャリアを重ねた選手がリングで見せるものも『K-1 NEXT』だし、ベテラン選手が創る『K-1 NEXT』があってもいいと思っています。

 佐々木選手は待ち望んだタイトルマッチを前に、ただ『ベルトが欲しい』『チャンピオンになりたい』ではなく『自分が一番強い男になるための結果としてベルトが欲しい』と言い、大和選手は自分のベルトを奪いに来る相手に『僕に強くなるきっかけを与えてくれた選手。最高の恩返しをしたい』とメッセージを送っています。


 自分の人生の大一番をこんな味のある言葉で表現するのは、経験とキャリアを積んだ選手にしかできないと思います。この2人が交わることでしか見せられないものがあるはずだし、僕は2人がこれから何を見せてくれるのかにも興味がある。まさに、これもK-1が見せたい『K-1 NEXT』ですね」

 大和が、佐々木に勝利して王座防衛を果たして「最高の恩返し」を果たすのか。佐々木が、大和に連勝して、悲願のK-1王座戴冠を果たすのか。

 それぞれの歴史と思いがギッシリと詰まったタイトルマッチ。いったい、よこはまつりはどんな結末が待っているのか。

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