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コラム

【UFC】「負けたら引退」も考えていた朝倉海、開始8秒の蹴りでスモザーマンの足を破壊。バンタム級での進化と可能性は──

2026/06/01 11:06
 2026年5月30日(土)中国・マカオ ギャラクシー・アリーナで開催された『UFC Fight Night: Song vs. Figueiredo』(U-NEXT配信)にて、朝倉海(ジャパントップチーム)がキャメロン・スモザーマン(米国)に1R1分50秒、左フックでKO勝ちした。RIZIN時代のバンタム級に戻してUFCで初白星。試合後、スモザーマンは朝倉から浴びた1発の右カーフキックで、左前足を破壊されていたことが分かった。 体勢が崩れても強打が打てる  試合は1R、ともにオーソドックス構えで、対峙しても身体の大きさで引けを取らない朝倉のペースで始まった。  少し低めの構えからいったん間合いを外し、先に右カーフをスモザーマンの左前足にヒットさせると、スモザーマンは足を流されそのまま右に1回転して正対した。  朝倉はさらにオーソから左ハイを強打。右腕でガードするスモザーマンだが、朝倉に組みの対処と自信が見える間合いと攻撃だった。朝倉の2発目の右ローは前足を引いてかわすスモザーマン。  左から右で飛び込む朝倉。バックステップでかわすスモザーマンだが、顔の位置が変わらない。入りのフェイントを入れ、遠間から左ジャブを突く朝倉。手数が少ないスモザーマンはここで左ジャブを見せる。  左前手フックを振って前に出る朝倉。かわしたスモザーマンにさらに右ボディストレートを届かせ、さらに左三日月蹴りを腹に。スモザーマンが前に出てきたところに左前手のフック。スモザーマンは右手でガードも朝倉のスピードについていけていない。朝倉の入りに左フックを振るが、朝倉はすでに身体を戻している。  朝倉の右の入りをかわしながらカウンターの左ジャブを当てたスモザーマン。「やったな」という表情を見せる朝倉だが、左ジャブをダブルで突くスモザーマンをさばく朝倉は間合いをコントロールしている。  そして、左から詰めて沈んで右アッパーを見せておいて一気に踏み込んでの左フック! さらに右ストレートを打ち抜いた朝倉! 体勢が崩れても返しの強打が打てる体幹の強さ。スモザーマンは両ヒザを着いてダウンもすぐに立ち上がる。  立ち上がったスモザーマンをケージに詰めた朝倉は、勝負所で詰めながらもここは冷静で、さらに右から左をコンパクトに当てる。ケージ背に左を空振りしたスモザーマンがバランスを崩すと、戻り際に朝倉は右から返しの左フック! ダウンしたスモザーマンに右から左のパウンドでレフェリーが間に入った。スモザーマンは失神。  朝倉はセコンドのもとに走り、新体制でチーム入りした金原正徳ヘッドコーチらとハグをかわした。元来のバンタム級でスピードのみならず、体幹・力強さも増していた。 「バンタム級でまるで別人のよう」と聞かれ「2試合連続で負けてしまったから」と涙  ケージインタビューでマイケル・ビスピンから「君には大きなプレッシャーがかかっていたし、当初はベルトを逃してしまった。でも、あれは135ポンド(バンタム級)とは別の階級での話だ。これから君はこんな姿を見せてくれるのか? 今夜はまるで別人のようなファイターに見えるから」と問われた朝倉は、英語で「ああ。2試合連続で負けてしまった。だから……ごめんなさい」と言葉に詰まり涙をぬぐうと、「僕はこの試合で自分がどれだけ強いのか、証明したかった。僕の打撃は世界一だと信じている」と語ると、ビスピンから「確かにそう見えたよ。それに、これはバンタム級での初戦だよね。挑戦したい相手はいる?」と聞かれ、「どこでも誰とでも、できるだけ早く戦いたい」と笑顔で語ってケージを降りると、ケージサイドで観戦した兄の朝倉未来と勝利のハグ、グータッチをかわした。  試合後、朝倉はパフォーマンスオブザナイトを受賞し、10万ドル(約1590万円)のボーナスを獲得。朝倉は公式Xで「コーチたちに配ります」と語っている。 [nextpage] 負けたら引退を考えていた  2連敗後の朝倉にバンタム級に戻すことをうながし、メッセージを送ったことで、コーチを務めることになった金原は、自身のYouTubeで「今回は勝って当たり前の試合だったのかもしれないけど、そんな簡単に勝てる相手でもないと思っていた。このUFCのとんでもない化け物がいる中で、一勝するって本当に大変なこと。戦前の予想では、『朝倉海が全然有利だ』なんて言われてたけど、そんな余裕は僕らにはなく、全然舐めてもいないし油断もしてないし、“いろんなパターン”は想像していました。前に言った通り、朝倉海は強い。この一言に限ると思って。ケージインする時も『お前、自分を信じて。強いから自分を信じろ』って送り出してあげました」と、UFC初のバンタム級戦に向かった状況を明かす。  2023年大晦日のフアン・アーチュレッタ戦以来、2年5カ月ぶりの勝利。朝倉海も試合後、自身のYouTubeで、「引退覚悟」の大きな重圧のなかでUFC3戦目に向かっていたことを語る。 「今回負けたらもう本当に引退は正直考えていて、負けてたら多分リリースされていたと思うし、そうなった時に(UFC)デビュー戦でタイトル戦のチャンスをもらえてそれで勝てなくて、次の試合も負けて、これで今回3連敗になってリースされたら、もう行くとこないなと思ってたし、なんか自分の目的も無くなるなと思ってた。初めて2連敗したのと、若干“自分を信じられない”部分があるというか、そこでの不安みたいなのが初めてあって。怖さはあった」と吐露する。  それでもストライカーのスモザーマンと立ち合い、「スピードで全然、俺の方が上ってたし、向こうも打撃の選手だけど、打撃の引き出しとか、スピードとかで絶対に俺の方が上だと思ってたんで。もうそこには自信を持ってた」と、試合前からスタンド勝負での自信はあったという。 体重は重くなってスピードは速くなってる。『倒せる』感覚がある  立ち合いでの反応、体幹の強さ、パンチ力、フライ級のときと比べ、バンタム級での手応えを大きく得ている。 「やっぱり減量も少なく力も出るし、筋肉も落ちないから“体重は重くなってスピードは速くなってる”と思う。多分、映像見てもらえば分かると思うんだけど、フライの時より速いし、パワーも全然あるんだよね。  フライ級の時は、身体のコンディションの不安がすごいあった。力が出るかなとか、あと集中力とかも持たないし。なんか打たれた時に効きやすくなってたりとか、そういうのもめっちゃあったんだけど、やっぱりバンタム級だとそういう不安が一切なくて、より自信を持って戦えた。  なんか“倒せる”っていう感覚がある。フライ級の時は当たっても“あれ? 倒せないな”みたいな、空回りしちゃうというか。当たってんのになんか全然力入ってないっていう。それで大振りになっちゃったり、負の連鎖みたいな感じだったんだけど、やっぱりバンタム級のこの身体は、もう軽く(打って)でも倒せるなって」と、フライ級では出力のみならず、耐久力や集中力にも影響が出ていたと明かす。 「海外の大きい──今回の相手も結構リカバリーが大きかったと思うんだけど──相手でも全然倒せるっていうのもやっぱり自信になったし。本当にやっぱりこの階級がベストだっていうのを改めて感じましたね」と、バンタム級で実績を積み上げていくつもりだ。 [nextpage] テイクダウンの無い相手だったが、組まれても自信があった。そしてオープニングの1発で──  今回の対戦相手のスモザーマンは典型的なストライカーで、UFC1勝3敗のなかで、UFCのデータではテイクダウンやサブミッションはゼロ。それゆえに、テイクダウンをしてこない相手に対して朝倉は、自身の強みを活かせるマッチアップだった。  同時に、朝倉の立ち方は間合いをコントロールしながらもスモザーマンが組みに来ても構わないという腰の位置で、組み技への対処に自信を感じさせるものだった。  ともにオーソドックス構え。試合開始8秒、朝倉はスモザーマンの左前足に踏み込んでの右カーフキックを当てた。反応できずチェックできないまま左足を蹴られて1回転したスモザーマンが受けた蹴りはこの1発。試合後、スモザーマンは松場杖をついて会場を後にしている。  2020年の大晦日に堀口恭司との再戦でカーフキックで足を潰された朝倉は、その後、カーフを自身の武器とし、25年8月のUFC前戦でも敗れはしたものの、ティム・エリオットの左足の腓骨を骨折に追い込んでいる。今回も、朝倉はオープニングのこの右カーフキックに折れたんじゃないか、と大きな感触を得ていた。  オクタゴンで2連敗を喫するなかで、「UFCのレベルの高さというのを改めて感じました。練習への取り組み方、自分の生活リズムだったり、すべてを変えないと勝てないなと感じて、すべてを変えました。練習方法なども変えて、もう本当に格闘技中心の生活で。自分自身が成長して乗り越えることができました」という朝倉。その取り組みには、今回の試合で見せなかった進化も含まれている。  金原コーチはいう。 「早く終わってしまったがゆえに贅沢だけど、まだ海の取り組んできたものが見せられなかったっていうのも正直あった」と。その成果を見せるのは、リスタートを切ったバンタム級での2戦目だ。フライ級での“負の連鎖”は、バンタム級でよりMMAとして強い上位陣を相手にしても払拭できるか。  試合後の会見で朝倉は、今後について対戦相手は問わず「今年3試合やりたいと思っているので、できれば本当にすぐ試合を組んでもらいたいですし、確か8月(29日)に上海で(大会が)あるので、その試合に出たい」と、3カ月後の連戦を望んでいる。
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