2022年8月13日(土)米国サウスダゴタ州スーフォールズのサンフォードペンタゴンにて、『Bellator 284: Gracie vs. Yamauchi』(U-NEXTライブ配信)が開催され、メインイベントのウェルター級戦(5分5R)で、ネイマン・グレイシー(ブラジル)とゴイチ・ヤマウチ(ブラジル)が対戦する。
同級5位のネイマンはヘンゾ・グレイシーの甥で、11勝3敗のうち9つの一本勝ちを誇る柔術黒帯の寝技スペシャリスト。2022年2月の前戦で、同級暫定王者のローガン・ストーリーに判定で敗れ、今回が再起戦となる。
対するゴイチは、ウェルター級転向2戦目。ブラジル人の両親のもと愛知県安城市で生まれ、3歳でブラジルに移住。クリチーバで、柔術、ボクシング、ムエタイなどを学び、27勝5敗のうち21の一本勝ちをマークする極めの強さを持つ。
師匠を辿ると、ともにグレイシーの名がルーツにあり、その先頭には「前田光世」の名前が並ぶ。
今回、本誌では日本人の祖父を持つゴイチ・ヤマウチにインタビューを試みた。ゴイチは今回の寝技師対決に、「自分にとってすごく意味のある試合になる。Bellatorでグレイシーを相手に5Rを戦う。僕にはグレイシーの血が流れているわけではないけれど、グレイシーの精神が宿っているんだ。自分を作り上げた一族の選手と戦うこと。ネイマンと戦うことが決まった時、自分のこのキャリアのスタート地点を振り返ったよ。グレイシー一族と戦うことの意味を、今回の試合で見つける事ができると思う」と語っている。
また、日本の『THE MATCH』での那須川天心vs.武尊の試合も熱く語った、ゴイチ・ヤマウチの言葉を聞いてほしい。
情報が少なかったから、自分で考える癖がついたし、とにかく独自で研究するのが大好きなんだ
──ゴイチ・ヤマウチ選手は、愛知県の安城市で生まれたのですよね。3歳のときにご両親の母国のブラジルに戻った。ご祖母が日本人だと聞いています。
「いや、祖父が日本人なんだ。親戚の7割くらいは今も日本に住んでいる。ブラジルで僕はアジア人と認識されているんだ(笑)」
──となると、2018年1月の『Bellator JAPAN』で日本に来た時は、親戚の方々と会ったりもしたのですか。
「会ったよ! 日本では本当に自分の家にいるようだった。実際、僕は『ヤマウチ』として日本で生まれて、3歳まで育ったから、今はブラジルに住んでいて、ブラジルも自分の住んでいる街も、家族も友人も大好きだけど、常に自分の一部は日本にあるように思っている。日本に帰ると皆、僕を家族として扱ってくれるし、もっと頻繁に日本に行ければと思っているんだ」
──2013年のBellator参戦以降は、米国での試合が多くなった今でもチームヤマウチで練習していますか。
「米国ではトレーニングしていないよ。自分の持っているセットスキルを信じているし、いいチームだからね。米国へ渡ってチームを変えてまでトレーニングをしようとは思っていない。一般的には『米国でMMAのトレーニングする事がプラスになる』と言われているのは知っているけど、自分は違うと思っている。チームも少し変わって、叔父のオサムは今はプロ選手にあまり関わっていなくて、自分が他のパートナー達と一緒にチームを指揮しているんだ。以前は、オサムの従兄弟の──僕は兄弟と呼んでいるけど──シュウジと2人でトレーニングをすることが多かったけど、今は9人から10人くらいでチームを組んでいるよ」
──ともに練習しているシュウジ選手は今年も2連勝して現在、4連勝中ですね。
「とてもよくやってる。いろんな要素があったと思うけど、様々な事を犠牲にしながら頑張って連勝している。僕もその一部になれていれば嬉しいね。僕の兄弟だし、いろいろなことを互いに教え合っているんだ」
──現役のファイターでありながらチームをコンダクトするのは大変ではないですか。
「今の状況は全く問題ないよ。互いに教え合うことで、疑問点が明確になる。もし分からなかれば、ブラジルでもスペシャリストたちに聞けばいい」
【写真】ゴイチのヒーローは魔裟斗、試合コール時にはこのポーズだ。
──なるほど。ゴイチ選手は、柔術黒帯で、アマチュアボクシングでもジョン・リネカーを破って、パラナ州の王者となっています。ケージも含めたレスリング面では、どのようにスキルアップしていますか。
「レスリングについてはね……実際取り込むのは大変だったよ。なぜかと言うと、自分のグラップリングのベースは柔術で、レスリングにあまり興味がなかったから(苦笑)。ただ、興味深い事があって、2022年の初めに試合をする予定があった時に、ある人に出会ったんだ。彼は米国のレスラーで、ATTのレスリングコーチだったと思うよ」
──スティーブ・モッコではないですか。
「ああ! そうかもしれない。彼から『ゴイチはチャンピオンになれる逸材だけど、レスリングにもっと興味を持たなきゃダメだよ。米国でトレーニングしろと言っているのではなくて、もっと多くのアメリカ人のレスリングベースの選手とトレーニングしたり、コーチに教わったりして、もっとレスリングに興味を持って、レスリングのスキルを身につければ、もっと今の競技を好きになると思うし、強くなる』と言われたんだ。その言葉の意味をよく考えて、アドバイスを真剣に受け止めて、それまで以上にレスリング、グラップリングの練習を始めたんだ。
実は、これまでのBellatorの試合では、信じてもらえないかもしれないけど、例えばマイケル・チャンドラーと戦ったときはグラップリングのトレーニングは2セッションくらいしかしなかった。本当に強度の低いものしかしてこなかった。トレーニングキャンプでは打撃を中心にする事が多かったんだ。
でも、彼の言葉を受け止めて、ブラジルでもレスリングに割く時間が多くなった。それ以降は打撃とのバランスが取れて、レスリングも柔術も、ボクシングもキックボクシングもやっている。フィジカルトレーニングも筋肉をつけて身体を大きくしてきた。本当にトレーニングの仕方が変わったんだ。だから、次の試合には自信をすごく持っているんだ」