ムエタイのモンコン、そして『HUNTER×HUNTER』ネテロ会長の「百式観音」へのオマージュでもあるイリーの弁髪姿(C)jirkaprochazka
元RIZIN王者として、UFCランカー相手に2連続KO勝利し、最短距離でグローバー・テイシェイラの持つUFCライトヘビー級王座への挑戦権を得たイリー・プロハースカ。6月11日(日本時間12日)、いよいよシンガポールで決戦のときが来る。
会見で「アジアでの試合は有利と思うか」と尋ねられ「僕にとって場所は一切関係ない。(王者の地元の)リオでもラスベガスでも日本でも同じさ」と静かに語ったチェコの侍は、日本のファンの想いも背負い、史上初の偉業に挑む。プロハースカが、大一番前に、本誌に語った言葉を紹介したい。(text by Horiuchi Isamu)
セフードとの練習は最高だった
──プロハースカ選手、『UFC275』の事前会見を終えた直後に、引き続きご自宅からZOOM取材を受けて下さりありがとうございます。
「大丈夫だよ」
──記者会見では、王者テイシェイラ選手もあなたも挑発の言葉を発することなどまったくなく、お互いリスペクトして試合に臨む姿勢でした。
「僕はいつだって相手をリスペクトして試合に臨む。僕にとって試合とは、相手に怒りをぶつけるものではない。重要なのは自分について知ることだ。己を知れば、自信を手にし、冷静さを保ち、謙虚になれる。それが全てさ」
──42歳にして戴冠という快挙を成し遂げた王者のことは、どう思っていますか。
「今言った通り、リスペクトの気持ちを持つだけさ。現在は彼が王者だ。でも僕はその地位を獲りにいく。自分のファイティングスタイルの方が優れているし、ファイトIQも僕の方が高いと信じている。そしてファイティングスピリットにおいても勝っている……いや、それに関してはより『大きな』ファイティングスピリットという言い方が正確だ。最高に研ぎ澄ました武器をもって、勝利を得るつもりだよ」
──武器ということで言えば、先ほどの記者会見であなたは、現在のご自分の課題はグラウンドゲームであり、テイシェイラ戦はそこを強化する良い機会だと話されていました。
「そうさ。そのためにアリゾナ州のファイト・レディでトレーニングを積んできたんだ」
──ファイト・レディにはフリースタイルレスリング五輪金メダリストにしてUFC二階級制覇のヘンリー・セフードがいますからね。他にもジョン・ジョーンズ、デイヴィソン・フィゲイレド等超大物ファイターが集まってきています。
「ヘンリーとの練習は最高だったよ。自分に必要な新しい技術をたくさん教えてもらえて、僕はどんどん吸収できた。あそこで練習できて良かったし、最後はタイのバングタオ・ジムで仕上げるつもりなんだ」
──プーケットのタイガームエタイで教えていたヒックマン兄弟が、かの地に新しく開いたジムですね。記者会見では、時差と気候に慣れるためとおっしゃっていました。
「そしてあのジムはレスリングに強いんだよ。だからこそ僕はそこを選んだ」
──グラップリングに長けた王者に対抗するためですね。ファイト・レディでは以前一緒に練習したことのあるジョン・ジョーンズとも練習する予定だったとか。
「いや、結局彼は来なかったから練習できなかったんだ。でも他の良いトレーニングパートナーたちに恵まれたよ」