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2022年6月11日(日本時間12日)、シンガポール・カランのシンガポール・インドア・スタジアムにて『UFC275』が開催される。
シンガポール初開催となるUFCナンバーシリーズのメインイベントは、ライトヘビー級王者グローヴァー・テイシェイラ(ブラジル)に、元RIZINライトヘビー級王者のイリー・プロハースカ(チェコ)が挑戦するタイトルマッチ。
日本のファンも大注目のこの一戦の見どころをWOWOW『UFC-究極格闘技-』解説者としても知られる“世界のTK”髙坂剛氏に語ってもらった。
相手のパンチは空振ってるのに、プロハースカのパンチだけが当たっている
――日本でもRIZINライトヘビー級王座を獲得するなど大活躍したイリー・プロハースカが、いよいよUFC王座に挑戦しますね。
「プロハースカはUFCに来て3戦目でこのチャンスをつかんだわけですから、すごいことですよね」
――これまでヴォルカン・オーズデミア、ドミニク・レイエスというトップランカーをしっかりKOしての文句なしの王座挑戦でもあります。
「勝ち方も衝撃的でしたからね。だから、もしかしたらトップコンテンダーに連勝したという結果だけでなく、プロハースカのファイターとしての特性的なところも評価したんじゃないかというフシもあるんですよ。というのも、プロハースカはこれまでのUFCライトヘビー級にはいないタイプの動きができる。簡単に言うと、ドミニク・クルーズとかTJ・ディラショーの重量級版という気がするんです」
――変幻自在の高速ステップでバンタム級に革命を起こした2人のような動きが、ライトヘビー級でできると。
「プロハースカは、あんなにデカいのにステップを使うし跳ねるし飛ぶし。なおかつ相手の見えないところから打撃が飛んできて、全局面で倒すものを持っている。このタイプって、世界のトップ選手が揃った今のUFCライトヘビー級でもちょっと見当たらないな、と。だから、もしかしたらUFCサイドも“こいつは面白いな”“さらに化けるんじゃないか”と感じて、次々とチャンスが与られた部分もあったんじゃないかと、自分なんかは思ってるんですけどね」
――マイケル・チャンドラーは、元Bellatoer世界ライト級王者としてアメリカでも知名度抜群だったから、2戦目でいきなりUFC世界ライト級暫定王座決定戦のチャンスが与えられたのも分かりますけど。プロハースカの場合、それまでアメリカではほぼ無名だったわけですからね。
「またプロハースカは、すごく武道的な戦いをしようとしているように見える。本人の中ではまだ構築中だと思うんですけど、相手に触らせずに自分の攻撃を入れることをやろうとしてるんじゃないかと思うんですね。だからこれまでの試合を見ても、打ち合いになっているように見えて、じつは打ち合いになっていない。相手のパンチは空振ってるのに、プロハースカのパンチだけが当たっているとか、そういうことが起こっている。
とくに前回のドミニク・レイエス戦はそうだったなって思うんですよ。お互い打撃をやり合って見える場面もあったけれど、試合後のプロハースカの顔を見ると、ほとんど傷がついてなくて綺麗なんです。ということはパンチをもらってないし、もらったとしてもスリッピング・アウェーなどの技術、動きを使ってダメージを逃している。その上で、自分はダメージがない状態で相手を斬る、そんなことをやろうとしている感がありますよね」