MMA
インタビュー

【UFC】衝撃KOで挑戦権獲得! UFCとRIZIN、初の二冠王に向けイリー・プロハースカ「Wボーナス? 森の中の小さな家で、熟練するために毎日をただ鍛錬に費やしたい」

2021/05/02 18:05
 2021年5月1日(日本時間2日)米国ラスベガスのUFC APEXにて「UFC Fight Night: Reyes vs. Prochazka」が開催された。  メインイベントのライトヘビー級戦では、RIZINでベルトを巻き、オクタゴンに参戦した28歳のイリー・プロハースカ(チェコ)が、世界王座に2度挑戦している31歳のドミニク・レイエス(米国)と対戦した。  試合は、上下のフェイントや間合いを外しての打撃を見せるプロハースカが圧力をかけると、レイエスはサウスポーから得意の左のカウンター攻撃で応戦。さらにテイクダウンも織り交ぜるが、立ち上がったプロハースカが2R、左を効かされながらもテイクダウン。立ち上がったレイエスを金網に詰めて、右エルボー、続く打ち下ろしの右エルボーは空振りになるも、そのまま回転して左のスピニングバックエルボー一閃! レイエスを前のめりに失神させる衝撃KOを決めた。  新渡戸稲造の『武士道』を愛するプロハースカは、試合後、「とても良い試合だった。とにかく自分の格闘技の美を伝えたい、そう思っていた。ただ自分は勝ちに急ぎすぎるという傾向があるので、それによってレイエスのパンチをいくつかもらってしまったのは、ミステイクだった。試合のたび鍛錬を繰り返さなくてはと痛感している」と、謙虚に語った。  インタビューアーのポール・フェルダーから「毎試合、学びがあるというのは素晴らしいことだね」と感心されると、「流れに身を任せていたというか、レイエスのカウンターパンチがあって、プランを考えている余地が無くなっていて、流れのなかでスピニングエルボーを出した」と、フィニッシュを振り返った。  そして、ダナ・ホワイト代表が、この試合の勝者が王者に挑戦すると明言していることについて「OK。もちろん、準備はできてる。隣国のブラホヴィッチのことは好きだし、とても光栄なことだ。謙虚に受け止めたい。チェコのみんなありがとう。マーシャルアーツの本分をみんなと分かち合いたい」と、あくまで慎ましく語った。 試合後、会見場に現れたプロハースカは、今回の試合の課題やフィニッシュのこと、王座戦のことなどをより詳細に語っている。  コンテンダーを相手に「学びがあった」というプロハースカの求めるもの、真意は何か。“サムライ”プロハースカの言葉は以下の通りだ。 レイエスはあんな状態でものすごいいいカウンターを打ってきた ──試合を終えた率直な感想を聞かせてください。 「最高な試合だった。素晴らしい対戦相手で、彼は素晴らしい人間だと思う。というのも試合の前も後も、彼に対する悪い感情が何ひとつ起きなくて、試合に集中できたということはとても好ましいことだと思う」 ──UFC2戦目でライトヘビー級王座に2度挑戦経験のある、3位のレイエスとの対戦で、緊張しなかったですか。 「ちょっとナーバスになったけど、自分にとっては、タイトルショットがどうだとか、マッチメイクがどうとかはそんなに重要じゃなくて、この旅路を満喫するということ、つまり、強い相手とケージでハードな試合をする、それが好きなんだ。  この試合は素晴らしいものだったと思うし、それを楽しみ、彼のファイトIQというものを堪能させてもらった。学ぶべき新しいスキルだったり思考だったり、必要とするものを学びとったよ」 ──試合のなかで学びがあったと? 「今日のブロックやディフェンスを見た? 初戦ではできなかった。まだまだいろんなことをフィックスしていかなきゃいけない。なんて言ったらいいのかな、こういう状態……彼が(体を揺らす)グラグラしていたとき、そのときに出してきたカウンター、あれが今日得た、とても大きな学びなんだ。  あんな状態でものすごいいいカウンターだった。だから、僕は“よし、とらえた!”って思っていて、自分の流れになっていると確信していたわけだけど驚いたんだ。2回以上あったかな。だから次に向けての大きな学びだった」 ──レイエスはテイクダウンをしかけ、逆にプロハースカ選手もテイクダウンから上になりましたが、蹴り上げを受けました。あのダメージは? 「ああ、あったね。彼はグラウンドでも素晴らしかったよ」 ──右の打ち下ろしのヒジ打ちからそのまま回転してのバックヒジが見事でした。あれは狙っていたのでしょうか。 「最後のエルボーは流れに任せて出たものだ。これこそ、このアンテナ(髪を触って)を張っている理由かもしれないね、アイデアをキャッチできたんだ」 ──あれはキャリアでいちばんのフィニッシュでしたか。 「ノーだ」 ──では、もっと良かったKOとは? 「うーん、そういうことじゃないんだよね、なにがもっと良かったとかっていうフィニッシュの仕方の話というより、つまり、この試合の場合、ずっと完璧な自分のコントロール下でできたことじゃなくって、ドミニクは何度も何度も僕を驚かせた。それはつまり、自分のような人間はまだ“良い選手”とは言えないと思うんだよ。自分は最高の選手になりたいんだ。誰かがよりよいのだとしたらまだ自分はベストじゃない」 ──この衝撃的なKOの何がそんなにイマイチだったと思わせているのでしょうか。 「より早くこの試合を終えるたくさんのチャンスがあった。自分はケージにそんなに長いこと留まりたくないんだ。こんな血塗れの舞台に長くいるというのは、熟達してないと言える。自分はこの道を極めたいって思っている。その意味で今日の試合はそうとは言えないから。より格闘技の素晴らしさをみんなに伝えたい。試合で何が起きているのかを教えてあげたいんだ」 ──ダナ・ホワイト代表は、この試合の勝者が王者(※9月に対戦予定のライトヘビー級王者ヤン・ブラホヴィッチと1位のグローバー・テイシェイラの勝者)に挑戦すると明言しています。タイトルマッチについてどう考えていますか。 「僕にとってのUFCジャーニーというのはとっても速くて、それをすごく楽しんでて、タイトルファイトを得られて嬉しいよ。まだテイシェラがいるし、ブラホヴィッチとの試合は、組まれれば楽しみにしている。それは彼は階級の最高位にいるからだ。ただ、自分には時間が必要なんだ。最高の場であるUFCファイターであるということをもうすこし味わわなくてはいけないし、準備をして取り組んだドミニクとの試合を経て学んだことがあって、それで自分をもっともっとアップグレードしなきゃいけないっていう段階だから、そのために時間が必要なんだ」 ──11月のヴォルカン・オズデミアとの試合はアブダビでした。観客はいませんでしたが、米国ラスヴェガスで初めての試合はいかがでしたか。 「乾燥してるけどこの街は気に入ったし、カジノもあって人々はいい感じで、2週間いて少し時間もあって、最後に試合をしていた日本と全然環境が違うと思ったよ。これからはこの場所で自分を見せていきたい。その上で観客のあるなしは関係ない。ケージでのパフォーマンスがすべてで、それに対して観客の有無が自分の試合の良し悪しを左右しない」 ──ファイト・オブ・ザ・ナイト(プロハースカvs.レイエス)と、パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト(プロハースカ、ギガ・チカゼ)の両方を獲得しました。10万ドル(約1千100万円)のボーナスをどうしますか。 「高級車を買って壊しちゃおうかな……(笑)。家のために使ったりすると思うんだけど。なんていうのかな、考えというものが、つまりある一面で、お金があればなんだって手に入って、高い船とか買っちゃって女の子連れてパーティーして、なんて思ったりもするんだけれど、自分には森の中の小さな家で、日々鍛錬をして、熟練するために毎日をただ鍛錬に費やしたい、という考えがある。そっちが自分の内省の芯だと思う」
全文を読む

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.331
2024年3月22日発売
UFC参戦に向け、ラスベガス合宿の朝倉海。「プロフェッショナル・ファイターの育て方」でチームを特集。『RIZIN.46』鈴木千裕×金原正徳インタビュー、復活K-1 WGP、PFL特集も
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア