ロッタンとムエタイルールでも渡り合ったDJ(C)ONE Championship
「デメトリアス・ジョンソンが2RのMMAルールで一本勝ちすることは予想できたけど、1Rのムエタイルールでロッタンから逃げることなく打撃で対抗したのには本当に驚かされた。特別ルールのスーパーファイトをもっとやっていこうと気付かされたよ」──大会後の囲み取材でチャトリ・シットヨートン会長兼CEOにそう言わしめた、3月26日の『ONE X』でのDJ対ロッタンのミックスルール戦。
DJことデメトリアス・ジョンソン(米国)は、那須川天心と激闘を繰り広げたムエタイの鬼神ロッタン・ジットムアンノン(タイ)を相手に、1Rのムエタイルールで、打撃戦を避けることなくスタンドで対峙した。
右ロー、左ボディと上下に散らせて圧力をかけるロッタンに対し、DJは右ストレートを返すと、MMAでも得意としている首相撲&ヒジ・ヒザ蹴りでロッタン相手に反撃。左ボディから入るロッタンに右オーバーハンドで押し返す技術も見せた。
試合後、ミックスルールの1Rでのムエタイを「初めての経験で楽しめたよ」と、DJは笑顔を見せた。
「ああいう距離で自分と対峙する対戦相手は初めてだったから、その対策はしてきたけど、たいていのムエタイ選手っていうのは立ち上がりはちょっと遅めで、独特のリズムを持っているから、ロッタンもそうやって徐々にペースアップして最終的にKOしたい、というふうに考えておかしくなかった。
ただこちらの陣営としてはっきり分かっていたことは、彼が今日は1R(ムエタイルール)でカタをつけたいと思っていたであろうことだ。そうでなければ、2R(MMAルール)に俺の全てのスキルセットを前に戦わなくてはならなくなるのだから」
ムエタイファイターとしても近い距離を好むロッタン。それが1R目のムエタイルールでフィニッシュすべく、さらに圧力を強めて仕留めに前に出た。
DJは、「序盤で僕がクリンチしたときに、“だめだめ、それはしちゃいけない”と止められたけど、あれは自分の自然な反応だった。MMAだったら、より完璧なタイミングでテイクダウンして、1Rで試合を終わらせられていた状況だったから。だからこその、ムエタイ1Rだったわけだ」と、組んでのクリンチの攻防にも自信があったことを語る。
テイクダウンが許されなくても、組めばヒジ・ヒザを突く。これはUFC史上最多連続王座防衛記録「11」をマークしたDJの“道具箱(スキルセット)”のひとつで、それらが融合しているのが、DJのMMAと言える。
しかし、誰もがロッタンの圧力にロープや金網に詰まり、決定打をもらうなか、DJにはそれを跳ね返す力と技があった。
「ロッタンがああいう戦い方になるであろうことも見越していて、多くの人が、彼にはフットワークは無いと言っていて、それで自分が分かっていることといえば、彼はスタンドバウトの世界最高峰であるということ──つまり、足を動かすだけならすぐに出来る。彼が苦手としていることといったら、“前に出る戦い方に慣れているが故に下がって戦うっていうことが出来ない”ことだ」と、鬼神ロッタンを下げさせることで、ペースを掴むことを可能にしたという。
そして、2RのMMAルール。“何でもあり”になるだけで、下がるのはロッタンになった。しかし、ここでもDJは冷静だった。