負けても落ち込まず次を考えている自分がいるということは、まだまだ伸びしろがあると思っています(山本)
試合後会見でRENAは、「色んな思いがあった大会でした。率直に楽しかったなと思いました。本当に2回戦ったことは今でも実感がない。3回目があるかどうかも分かりませんが、(5年前と)全然違う美憂さんでしたね」といい、山本も「(前回と違いRENAは)寝技、一本で極めてこようという姿勢がありましたね」と、互いに再戦では新たな2人として戦っていたと語る。
RENAは、2007年のプロデビューから、類い稀なスタンドテクニックでほぼ顔を腫らすことなく勝ち続けてきた。それはMMAになっても変わらなかったが、オープンフィンガーグローブのスタンド打撃のみならず、グラウンドでも打撃のあるMMAで、綺麗な顔のまま戦っていられるのは稀有な例で、まだ相手も含め、競った厳しい戦いをしてこなかったともいえる。
「まだこの勝利が嘘のようです。『衝撃的な勝ち方をする』と言っていて、本当に衝撃的になりました。私の顔も衝撃的ですけど(苦笑)。初めてだったので縫うとき震えていましたもん。痛かったです、麻酔。たぶん4、5針くらい。両目腫れて、初めてじゃないですかね、こんなになったのは。でも今回、意味のある試合で傷が残っても、これはすごくいい思い出になると思います」と、腫らせた顔で充実の表情を見せた。
ヒザ蹴りを受け、足を掴んだまま鉄槌を浴びて動けず、試合を止められた山本は、ゴング後も顔を覆い、マットにひざまずいたまま号泣。しばらく動けなかったが、顔を上げると、同じレスリング仲間で反対側のコーナーに立ったAACCの阿部裕幸代表から「ほんとうに強かった」とハグを受けた。
リング上で山本は、RENAを抱き寄せ、「『試合をしてくれてありがとうございます』という話をしました」という。
会見では、「あと一歩のように見えたが」と問われ「はい、そうですね。悔しいです。私のホームですし、ほんとうに勝ちたかったです。(KIDに)見せたかったですね。それだけじゃないけど、その想いは凄く強かったです」と唇を噛んだ。
今後については、「まずは、ゆっくりしてジムのこともありますし、ウチの選手のことなどやることをやってから考えます」としたが、「負けて悔しいけど、負けても毎回落ち込まない。次のことを考えたりするので。そういう自分がいるということはまだまだ伸びしろがあると思っています。それがいいのか悪いのかは分からないけど」と小さな笑顔を見せた。
逆転勝利とも言えるフィニッシュの、その瞬間だけを切り取っても、勝負は見えてこない。そこに至るまでの流れがあり、その心技体の結実が勝敗を決める。
同時にあの時、もし山本が抑え込み続けていたら、もしRENAが立てずにいたら……の「たられば」は結果論で、3Rにはまた新たな展開が待っていただろう。ただたしかなのは、両者の動きの様々な局面で攻防があり、それがフィニッシュに繋がっているということだ。
両者ともに前戦から確かな進化を見せた名勝負。
リヴェンジを阻んだRENAは、「もっともっと上を目指していけると感じた試合でした。今回、すごく楽しかったので、やっと“帰ってきたな”って、輝けるのはこのリングだなって強く思ったので、大晦日も行けるかな、無理かなって(笑)、傷もあるので相談しながら、来年も羽ばたけるように頑張ります」と語っている。