全身にグシャっと伝わって、これは終わったなと(RENA)
「立ちではいけてるなと思ったので」というRENA。立ち技の距離にしたくない山本はすぐに詰めて、右足を触りながら左オーバーハンドへ。コーナーマットまで詰まったRENAだが、頭を押さえて右回りにステップし、山本の組みを断ち切る。
山本が左を振りかぶり身体を沈めたフェイントに、左オーバーハンドを警戒し、右手で右目をガードするRENA。反応が速い。
フィニッシュはその次のアクションだった。
立ち会ったRENAは軽く左足で前蹴り。そこに呼びこまれるように打ち終わりに右手でヒザ裏を掴みにタックルに入った山本に、RENAは一転、右ヒザ一閃!
顔面にもらい、脳を揺らされた山本はダウンしながらそれでも必死に右足を手繰り行くが、足を後方に引いたRENAはがぶりから左の鉄槌を17連打。ダメージの中、足を掴んで亀の体勢のまま殴られる続ける山本を見て、レフェリーが間に入った。
2R 3分35秒、TKO。
フィニッシュについて、陣営は「タックルにヒザ蹴りが入る」と狙っていたという。しかし、左の蹴りのフェイントでその着地際を狙って飛び込んだ山本の頭に、入れ替えた右のヒザ蹴りを内側にピンポイントで当てるのは、離れ業だ。女子選手としては驚異的なフィニッシュ力を持つRENAならではの追い込まれてからの一撃だった。
勝者は「ほんとうに体が勝手に動いたっていう感覚に近いです。感覚的に練習で1回、以前、偶然に顔に当たったことがあって、グシャっという感覚があった。それと同じ、全身にグシャっと伝わって、これは終わったなと思いました。私の中で衝撃が走りました。狙ったというよりは、練習通り、身体が覚えていたんだなと思います」と、フィニッシュの瞬間を語る。
敗者は、「ちょうど良いタイミングでフッと(ダブルレッグに)入ってしまったところを合わせられたという感じですね。集中してどんなタイミングで攻めるのかを見ていなかったのが、大きな原因かなと思います」と、立ち上がりを許してからの詰めが甘かったと語った。
リング上では、「山本美憂さんがいてくれたからここまで女子格闘技を作れました。5年ぶりの再戦でぼろぼろになるくらいいい試合になりました。喋ることも考えていなかったけど、またリングで戦います。沖縄には毎年来ていますし試合をしたいです。大晦日もあるんで、ちょっと分からないですけど(笑)」とコメントしたRENA。
山本は、ホームの観客に「……ただいま。いまここで私のことを愛してくれる沖縄のみんながいることを感じました。帰ってきて強くなったところを見せたかったですけど……ごめんなさい。でも、ここまで戦えたのはみんなの愛の力だと思います。ほんとうにごめんなさい、負けてしまって」と言葉を振り絞ると、「最後に家で待っている、子供達に言わせてください。“ママは負けちゃったけど、もうすぐ帰るよ”」と英語でメッセージを贈った。