日本時間の5月12日(日・現地時間11日)、ブラジル・リオデジャネイロ、ジュネス・アリーナで『UFC237』が開催された。
メインイベントでは、“冷徹女子”ローズ・ナマユナスが持つUFC世界女子ストロー級のベルトに地元ブラジルの“女ヴァンダレイ”ジャシカ・アンドラージが挑戦。
猛牛のごとく突進するアンドラージに、サウスポーのナマユナスは闘牛士さながらのステップと正確な右ジャブでアンドラージの左目を腫らしていく。
しかし、2Rにナマユナスを首相撲にとらえたアンドラージが片足タックルをハイクラッチで組み、頭上高くリフトしてナマユナスを頭からマットに叩きつけ、失神KO勝利。得意の“パイルドライバー”をオクタゴンで決めて、新王者に輝いた。
また、元世界フェザー級王者のジョゼ・アルドが、矢地祐介、粕谷優介、廣田瑞人ら日本人3選手を含む16試合で16連勝を記録中のアレックス・ヴォルカノフスキーと対戦。
豪州ラグビー出身のヴォルカノフスキーの強烈な圧力に金網に釘づけにされたアルドが判定負けを喫した。アウェーで1位のアルドを撃破したヴォルカノフスキーはトップ3との対戦をアピールした。
元世界ミドル級王者のアンデウソン・シウバは、ジャレッド・キャノニアのローキックに右ヒザを破壊され、TKO負け。BJペンもクレイ・グイダに判定負けするなど、レジェンドファイターたちは勝ち星に恵まれず。
第1試合では、第2代ストロー級クィーン・オブ・パンクラシストのヴィヴィアニ・アラウージョUFCデビュー。2階級上のバンタム級で3R、右フックで鮮烈KO勝利を挙げ、次戦でのストロー級戦を望んだ。
◆UFC 237: Namajunas vs. Andrade5月12日(日・日本時間)ブラジルリオデジャネイロジュネス・アリーナ
【Main Card】
▼UFC女子世界ストロー級タイトルマッチ 5分5R×ローズ・ナマユナス(米国)[2R 0分15秒 KO]※ハイクラッチのシングルレッグからスラム(パイルドライバー)で失神○ジェシカ・アンドラージ(ブラジル)
1R、アンドラージvsナマユナス、ともにオーソドックス構えから。スナップを効かせたジャブを突き左右に回るナマユナス。そこに大きな右をアンドラージは狙う。上下にもフェイントするナマユナス。さらにジャブを左目に当て、アンドラージは左目を腫らす。
左右を振りシングルレッグからハイクラッチに組んでリフトするアンドラージ。しかし、ナマユナスもキムラにとらえて着地。もう一度、リフトしたアンドラージはマットに叩きつけるがナマユナスは下から腕十字を狙い、離れたところを立つ。
今度は逆にナマユナスがダブルレッグテイクダウン。立つアンドラージは左右を振り中に入ってくるが、左ヒザ蹴りはナマユナス! ダウンしたアンドラージにギロチンも狙う。アンドラージは接近戦を望み、左右を振りながら前へ。しかしナマユナスは首相撲にとらえる。
2R、突進するアンドラージをマタドールのごとく左右にかわして右ジャブを当てるナマユナス。なおも詰めるアンドラージだが、下がりながら回ってさばいて、ナマユナスはサウスポーから左を突く。
大きな左右を振りついに金網に詰めるアンドラージだが、すっと左にかわすナマユナス。追い足を休めず首相撲にとらえたアンドラージ。金網際でシングレッグから得意のハイクラッチにとらえると、ナマユナスは再びキムラロックへ。アンドラージは高くリフトしてナマユナスを頭からスラム! キムラロックに入っていたナマユナスは受け身をとれず、失神。アンドラージが新王者に!
ナマユナスの打撃をもらいながらも、金網につめて得意のパイルドライバーで逆転KO勝ちを決めたアンドラージは、UFC女子世界ストロー級のベルトを肩にかけ、「コーチが10年前に受け入れてくれたおかげです。パイルドライバーをUFCでやった人はいないはずです(※スラムではフランク・シャムロック、ティト・オーティズ、マット・ヒューズらのKOあり)」と歓喜のコメント。
すぐに意識を取り戻した敗者も「ブラジルは素晴らしいところでした。家族のために戦った彼女も素晴らしかった。私のプレッシャーは大きかったです」と涙を流してコメントした。
◆ジェシカ・アンドラージ 「私の肩にベルトが載せられるなんてイリュージョンだと言った人がいたけど、これでどう?」
「まだ自分がUFC女子ストロー級チャンピオンなんて実感がわかない。試合中に何が起きたのかさえも話せないくらいなの。パラレルワールドにいるような気分。私が勝ったってことを実感しただけ。私の肩にベルトが載せられるなんてイリュージョン(錯覚)だと言った人がいたけど、これでどう。地元でタイトル戦に勝つ、家族もチームもいてくれて、人生で一度も経験したことのない最高に素晴らしい気分よ」
▼ミドル級 5分3R○ジャレッド・キャノニア(米国)[1R 4分47秒 TKO]※右ローキック×アンデウソン・シウバ(ブラジル)
1R、オーソドックス構えのキャノニア。サウスポー構えのアンデウソンの左ミドルに地元の観客から大きな歓声が沸く。金網を背にしながらも徐々に押し返し、左ハイ! ブロックの上ながら再び大歓声が。しかしキャノニアも構わず右ストレート! 右のダブルにアンデウソンも首相撲にとらえるが、その外側からキャノニアが右フックを振る。
キャノニアは右ローをアンデウソンの右ヒザの内側にヒット! 外側にヒザが流れたアンデウソンはダウン! ガードポジションを取ろうとするが、足を押さえて動けず。キャノニアは鉄槌の追打を振り落とさず、レフェリーが試合を止めた。
試合後、ブーイングの中でキャノニアは、「最初にアンデウソンにお礼を。彼はチャンスをくれた。僕と試合をしなくてもいい彼が自分と試合をしてくれたんだ。ファンにはまた別の想いがあるだろう」とマイク。
アンデウソンは、キャノニアをハグし、互いにヒザを着いて礼。目を赤く腫らせながら「みんなすまなかった。調子が良くなかったヒザにキックが当たってしまった」と語った。
◆ジャレッド・キャノニア「ファンが俺のことを尊重してくれないのなら……」「試合は計画通りにいった。キックで勝つなんて当然予想していなかったけど、ありがたくいただくよ。ファンには反応しないようにして試合に臨んだけど、ちょっと優越感を見せびらかしてやらないといけないかな。アンデウソンのことは尊敬しているし、世界中の尊敬を集めている人だ。でも、ファンが俺のことを尊重してくれないのなら、俺だって尊敬するつもりはない」 ▼フェザー級 5分3R×ジョゼ・アルド(ブラジル)[判定3-0]※30-27×3○アレックス・ヴォルカノフスキー(豪州)
1R、アルド、ヴォルカノフスキーともにオーソドックス構えから。頭を振り、圧力をかけるアルド。左ジャブも。ヴォルカノフスキーは右ロー。しかし右ストレートはアルドがスウェーバックでかわす。アルドは左右ボディを続けて当て、ヴォルカノフスキーのバックフィストの打ち終わりにも右を入れる。
しかしヴォルカノフスキーも近づきながらテイクダウンプレッシャーを入れて組み付き前へ。右を差すが、アルドは突き放す。スイッチしての左ハイはヴォルカノフスキー。アルドは跳びヒザで飛び込む。ヴォルカノフスキーは受け止めて押し返す。
2R、右ストレートを入れるヴォルカノフスキー。さらに左ロー。そこにアルドは右を狙う。右アッパーから左ストレートを狙うアルドだが、ヴォルカノフスキーはかわす。左ジャブはアルド! 近づけばヒザも当てる。ヴォルカノフスキーは左右を打ちながら組み付き、金網に押し込み左で差すが、アルドが差し返して体を入れ替えると地元ファンから大きな歓声が沸き起こる。左ストレートで飛び込むヴォルカノフスキーをかわすアルド。ジャブをあごを引いて受けながらも前へ。右を返す。
3R、ヴォルカノフスキーが前へ。しかしかわして右を打つアルド。ヴォルカノフスキーもそこに右ストレートをヒットさせる。左右からの前進力はラグビー出身のヴォルカノフスキー。アルドは金網背に体を入れ替える。左ジャブで前に出ることでリズムを作るヴォルカノフスキー。接近戦で脇を潜るアルド。しかし、ヴォルカノフスキーはいつものように押し込んで左で差してアルドの身体を伸ばして金網にくぎ付けに。続けて右で差し替え、頭をアゴ下につけると、アルドは動けず。ホーン。
判定は3-0でヴォルカノフスキーが1位のアルドに勝利。MMA17連勝をマークしたヴォルカノフスキーは試合後、「全力で行こうと決めていた。アルドを尊敬しているよ。世界中の母の日、おめでとう。次に俺と戦いたいやつ、出てこい。トップ3とも戦いたい」と、チャンピオンのマックス・ホロウェイをはじめ、2位のブライアン・オルテガ、3位のフランキー・エドガーらとの対戦をアピールした。
◆アレックス・ボルカノフスキー「ラウンドを取ったと気づいたのは、クリンチを仕掛けて向こうが離れようとしていないのが分かった時」「最後の2ラウンドは自分が勝ったと確信していたから、冷静でいられた。もちろん、第3ラウンドにフィニッシュしたかったけど、試合をうまくコントロールできていたと思う。ラウンドを取ったと気づいたのは、クリンチを仕掛けて向こうが離れようとしていないのが分かった時。俺は負けなしだ。ジョゼ・アルドの地元で彼をフィニッシュできれば最高だったんだろうと思うけど、同時に、史上最強ファイターの1人とフルラウンドを戦い抜いて勝ったんだ。タイトルを目指していく」
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▼ウェルター級 5分3R×チアゴ・アウベス(ブラジル)[判定0-3]※27-30×2、28-29○ラウレアノ・スタロポリ(アルゼンチン)
◆ラウレアノ・スタロポリ「彼と戦って勝つのが夢だった」 「チアゴはレジェンドだし、ブラジル最強ストライカーの1人だ。とても敬服している人だし、彼と戦って勝つのが夢だった。俺はブラジルに住んでいるのに、ファンはまだ俺のことを知らないらしい。今回の試合後にはたくさんの人が応援したいと思ってくれるはずだ」
【Preliminary Card】
▼女子141ポンド契約 5分3R○アイリーン・アルダナ(メキシコ)[3R 3分24秒 腕十字]×ベチ・コヘイア(ブラジル)
右ストレートにダブルレッグに来たコヘイアをがぶりパウンド。バックに回り後ろ三角狙いから、亀のコヘイアに対しうつ伏せになって腕十字を極めた。
◆アイリーン・アルダナ「今回のフィニッシュは想像もしていなかった」 「1万通りのノックアウト方法はイメージできていたけど、今回のフィニッシュは想像もしていなかった。自分の打撃はとてもよく分かっているし、キャリアでもこれが3回目の一本勝ちよ。UFCでこれを達成できて本当にうれしい」
▼ライトヘビー級 5分3R×アントニオ・ホジェリオ・ノゲイラ(ブラジル)[1R 2分07秒 KO]○ライアン・スパン(米国)
◆ライアン・スパン「ブラジルでも2試合目だったから、事実上、俺はブラジリアンだ」 「素早く決めたかったし、とっとと終わらせようと最初から計画していた。でも、相手はベテランだし、長いことここでやっている。思った通りにできたけど、それに頼っていたわけじゃない。リトル・ノグ(ノゲイラ)はレジェンドだし、彼のことは本当に尊敬している。彼の地元で戦ったことはとても意味が大きい。必死にトレーニングしてきたし、本当に最高だ。UFCでは今回が2試合目で、ブラジルでも2試合目だったから、事実上、俺はブラジリアンだ。今はまだ誰かを指名するような立場にいないけど、今日の試合で誰かの目にとまってくれたらと願っている」
▼ライト級 5分3R×カート・ホロボー(米国)[判定0-3]※26-30×2、27-30○ティアゴ・モイゼス(ブラジル)
◆ティアゴ・モイゼス「もっと力を見せられると思っている」「彼は本当にタフだ。距離を取るのが難しかった。最後は何発か食らったけど、テイクダウンを取れたし、柔術もグラウンド・アンド・パウンドもうまくいっていた。自分のパフォーマンスには満足していない。もっと力を見せられると思っているけど、焦ってはいないし、トップを目指して続けていく」
▼ウェルター級 5分3R○ワーレイ・アウヴェス(ブラジル)[3R 4分13秒 KO]×セルジオ・モラエス(ブラジル)
◆ワーレイ・アウヴェス「戦略は相手の足を蹴っていくことだった」 「今回の試合の戦略は相手の足を蹴っていくことだったから、膝から入っていけた。一度試したらうまくいかなかったけど、簡単に諦めるつもりはなかった。今回の試合で思い通りに勝つためにかなりトレーニングしてきたんだ。今の契約では今回が最後の試合だったから、きっちり更新できるはずだ。すべてのチャンスを与えてくれたUFCにとにかく感謝したい。負けた試合でも、すべて自分がもっと成熟して次につながることだった。今日は気持ちのバランスが取れていた。結婚して、素晴らしい家族がついていてくれる。より優れたワーレイになっているし、ここからはさらにもっとうまくなっていけると思っている」
▼ライト級 5分3R○クレイ・グイダ(米国)[判定3-0]※29-28×2、29-27×BJペン(米国)
◆クレイ・グイダ「B.J.のタフさに疑問を持つ者はいないだろう」「昔ながらの戦いだったな。こうなるんだろうなとは思っていた。俺が彼をフィニッシュすることを期待していたように、みんなもそれを期待していたと思う。でも、彼のタフさに疑問を持つ者はいないだろう。B.J.のようなレジェンドとの試合に挑んだんだ。これまでで一番の勝利さ。でも、これが最後でもない。俺たちはこれからもランキングを駆け上がっていくつもりだし、彼が成し遂げたことに挑戦し、頂点に立つつもりでいる」
【Early Prelims】
▼女子フライ級 5分3R×プリシラ・カショエイラ(ブラジル)[判定3-0]※30-26×2、29-27○ラウナ・カロリーナ(ブラジル)
◆ルアナ・カロリーナ「ブラジル版コンテンダーシリーズのおかげで、UFCの試合がどんな感じなのか分かっていた」 「タフな試合になるだろうと予想していた。プリシラは最高のファイターだと思っているし、彼女はずっと前に出てきていた。楽ではないだろうと思っていたけど、彼女の試合はかなり研究したし、勝つためにやるべきことは分かっていたつもり。今回がUFCデビューだったけれど、リラックスできていた。ブラジル版コンテンダーシリーズのおかげで、UFCの試合がどんな感じなのかすでに分かっていたしね。デイナ・ホワイトの前で戦ったこと、家族や友達の前で戦えたことは本当にうれしい」
▼バンタム級 5分3R○ラオーニ・バルセロス(ブラジル)[2R 4分49秒 TKO]×カルロス・ホアキン・クロス(ペルー)
◆ラオーニ・バルセロス「試合を受けてくれたホアキンのことは尊敬している」 「最高だった。もしかすると、選手としてのキャリアを通して一番だったかもしれない。対戦相手の変更でいろいろと厄介だったと思うけど、試合を受けてくれたホアキンのことは尊敬しているし、それが重要だと思っている。あまりにリラックスして落ち着いていたら、向こうにノックアウトされていたかもしれない。かなり強力な打撃を食らったし、心配もあったけど、セコンドやコーチから自分の試合をしろと言われて行けた。打撃もつながったし、有効打も当てられた。柔術もまとめられた。相手はタフだったし、UFCで素晴らしい将来が待っていると思う。自分にかなりプレッシャーをかけていたんだ。どの試合も、いつも自分の思い通りにいかなくて、もっとうまくやれるはずだと思っていた。今回で一歩先に進めたと思う。これから最高の相手と戦おう。その準備はできている」
▼バンタム級 5分3R×タリタ・ベルナルド(ブラジル)[3R 0分48秒 KO]○ヴィヴィアニ・アラウージョ(ブラジル)→試合リポート
◆ヴィヴィアニ・アラウジョ「私はストロー級のファイターだから、その階級の方が合っている」 「ずっとUFCに参戦するこのチャンスを期待していたの。きっとかなうと思っていたし、時間の問題だと思っていたから、しっかりと準備できていた。対戦相手を待っていただけね。オファーを受けた時、誰が相手でも覚悟はできていたし、UFCデビュー戦で最高の勝利を収められるとポジティブに考えていた。私はストロー級のファイターだから、その階級の方が合っているし、これからもっと勝利を見せられるはず」