(C)ゴング格闘技
2021年7月4日、朝倉未来がスペシャルアドバイザーを務める大会『BREAKING DOWN』(トライフォース赤坂)に、元UFCの菊野克紀(誰ツヨDOJOy)が出場。新たな対戦相手が、元大相撲力士の野尻和暉(フリー)に決定したことが発表された。
▼第20試合 スーパーヘビー級 スペシャルワンマッチ 120kg超
菊野克紀
野尻和暉
当初、菊野は、朝倉未来のチームでYouTubeチャンネルで編集を務める佐々木大(トライフォース赤坂)との対戦が決定していたが、佐々木が怪我により欠場。未来は、「菊野選手はどんな相手でも、体重差があっても大丈夫だと男気ある返答をいただいています。格闘家にとっては名前を売るチャンス」と、ファイターに挑戦を呼び掛けていた。今回の急募に「100件近くの応募」が届いたという。
『BREAKING DOWN』はフルサイズの金網オクタゴンを使用した寝技ありの総合格闘技ルールで、試合時間は1分。スペシャルマッチ以外は、プロ戦3試合以下のアマチュア選手が参加可能で、時間内に決着がつかない場合は3人のジャッジにより旗判定で勝敗が決まる(2本以上で勝利)。
本誌では、野尻との対戦が決定した菊野にインタビュー。なぜ、『BREAKING DOWN』出場を決めたのか、無差別級戦に臨む思いを聞いた。
大会の模様は「ABEMA PPV ONLINE LIVE」にて、14時30分より、全試合・完全生中継される。
欲を捨てて、迷いとか不安も捨てて、手放して「今ここ」に集中して臨めたら
――武術に傾倒する菊野選手が「BREAKING DOWN」に参戦ということで驚きました。
「そうですか。出そうじゃないですか」
――なぜ出ようと?
「ルールが面白そうだから」
――今回の試合はフルサイズのケージで行われ、ルールは1分間の総合格闘技ルールという中で、どこに興味を持たれたのですか?
「実際にありそうだから。護身というか、何か揉め事があったときに、起こり得そうな戦いだからって感じです。競技っぽくないから」
――路上であり得そうだと。
「そうですね。僕が求める強さを表現するのに近いルールかなと感じました」
――しかし1分です。それが「求めるもの」に近いのでしょうか。
「たぶん実際、揉め事が起きたときに、20秒くらいで決着が着くと思うんです、ガチャガチャって。だから、1分というのはそういう想定としてはいいかなと。安全なグローブをつけて、安全な攻撃の上だったら、1分くらいが妥当かなと思います」
――現実世界でその場面を想定しているとはいえ、実際にそういった場面はありましたか。
「そこまでのはなかったですね。けんかを止めたくらいはありますけど、自分が巻き込まれたというのは今までないかな」
――ここ数年で求めてきた菊野選手の動きは、BREAKING DOWNにどう繋がると考えていますか?
「僕が求めるものというのは、単純に“強さ”なんですよね。強くなりたいし、別に戦場に行きたいわけでもないし、誰かをぶっ飛ばしたいわけでもなくて、自信を持って日々を送りたいというか、安心して日々を送りたいというか、いざというときに身を守れる、大切な人を守れる強さが欲しいということで、それを表現するのに、『稽古』としていいルールだなと思いました」
――制約が多く競技になればなるほど、「正面衝突」になってフィジカルの強い者が勝つ、と話したことがありましたね。
「そうですね」
――それは、今回の戦いはそうならない?
「1分間という制限の中だったら、例えばガッチリ固めてとかっていう攻防を、相手がしないのであればそこまで影響しないのかなと思いますね」
――そういう中で、対戦相手が一旦決まって、佐々木大選手という、ライトからウェルター級の選手でした。それが怪我で飛んだときはどのように感じましたか?
「まず受けていただいてありがとうございましたでしたし、怪我をお大事にしてくださいという感じです」
――佐々木選手が飛んでしまったので、同じチームの朝倉未来選手はどうですか、とは思いませんでしたか?
「それはさすがに思いませんよね(笑)、そんなことをしてくれるとは思ってないです」
――今回の対戦相手がヘビー級の元力士の野尻和暉選手になりました。これは快諾された?
「そうですね。面白そうですねと」
――今、菊野選手は何キロですか?
「80キロくらいです」
――対戦相手はどれくらいと聞いていますか?
「プロフィールをちゃんともらってないんですが、見た目は百何十キロはありそうですね」
――大相撲では和歌武蔵 和樹として序二段で活躍。DEEPメガトンGP、RISE、スタンド頭突き有効のIGFにも出ています。重量級の動きですが、サウスポー構えでRISEでは右ジャブでダウンを取ったりもしてます。
「そうなんですか。そこまでは知らなかったです。まだちゃんと見ていないんです」
――そういう相手と体重無差別で戦うことに関してはどう考えていますか。
「なおさらいいですね。僕はもともと『体重は気にしません』ということを伝えたうえで、先方は佐々木選手を出してきたので。元々僕はそのほう(無差別)が面白い、とは思っていました」
――どんな試合も危険ですが、あまりにも体重差がありすぎるので、1分間でノンストップで衝突して来られたら、あるいはグラウンドでもかなり危険なのでは、と感じました。
「怖いですよ、本当に。大怪我をする可能性だってありますし。怖いのは怖いです。だけど“ありがたい”というか、そういう試合を組んでくれるというのがありがたいです。自主興行の『敬天愛人』という大会で、そういう体重差がある試合をやりましたし、『巌流島』でもやりましたね。その責任って、主催者が背負うわけじゃないですか。怪我するのは僕だけど、なんか言われたときに責められるのは主催者。それをちゃんと背負ってくれるというのはありがたいですよ。(実力を)信じてくれているというのもあるのかもしれない。“いざ”というときに体重を合わせるということはないわけで。そういう相手からも身を守れる稽古をしたい。その意味では自分は超アマチュア選手です」
――なかなか得られる体験ではないと。
「そうですよ。相撲取りと戦えるんですよ。しかもキックボクシング経験者と。怖いですね」
――相手は相撲取りだと。では菊野さんは“何取り”ですか?
「なんなんですかね。僕いつも肩書で迷うんですよ。空手はやってきましたけど、でも空手だけじゃない。武術家というとちょっと恥ずかしい。競技ファイターを人生の中心には今置いていない。ちょっと僕もいま肩書が欲しいです(笑)」
――人間・菊野克紀として戦う。
「そうですね。すごくシンプルな、僕としては変わってなくて、強くなりたいし、孫悟空に憧れて、ジャッキー・チェンに憧れての延長線上でこうなってるだけで、逆にみんながルールに染まっていくのが不思議なんですよ。競技に染まっていくのが。孫悟空は言わないじゃないですか、『体重合わせて』とか。だから、まあシンプルなんですけどね、そこは」
──でも、今回もルールがある「試合」です。対戦相手は主催者から提示されたものでしたか。
「もちろんそうです」
――菊野選手は選ばなかった?
「僕は選んではいないですね。『誰でもいいです』と伝えました」
――シュートボクシングの元チャンピオンの鈴木博昭選手も名乗りを挙げていました。
「ドキッとしましたけどね。これはすごい試合になるなってね。絶対ぐっちゃぐちゃになるじゃないですか、お互い。でもそれはまたやったら面白いなと思いました。契約のこととかは分かりませんが、とりあえず僕は、一言も口出ししてないです」
――提示されて、それを受けたと。
「そうですね。野尻選手の名前が出て。ただ、ひとつ主催者にお願いをしました。グローブが練習用のちょっと、あんこの部分がもっこりしたグローブですよね。それを小さい『普通のオープンフィンガーグローブにしてください』とはお願いしました」