朝倉未来選手がこのルールでやりたいと言ってくれるなら、喜んでやります
――朝倉未来選手が路上で襲われる、YouTubeのドッキリ動画とかもご覧になられましたか。
「見ました」
――ご自身だったら?
「あれに関しては僕もそんなプロでもないし、あまり人のことは言わないようにしましょう。僕があれができるかといったら分からないです。ただ、練習はしておきます」
――菊野選手は、朝倉兄弟2人とアライアンスでの練習で手合わせがあると思います。2人のことをどう感じていますか。
「素直に朝倉兄弟のことを尊敬していますよ。選手としても尊敬するし、YouTuberとして、社会的に成功していることも。僕には出来ないことだから」
──その朝倉未来選手が、今回の「BREAKING DOWN」を発案したことについては?
「当然、朝倉未来選手は修羅場を潜ってきた選手なので、素直にそういう強さというのは憧れるし、1分間というのは、朝倉選手らしい発想かなと思いました」
――手を合わせたときの印象を教えてください。
「本当にライト(スパー)ですけどね。まず2人ともめちゃくちゃ身体が強いなと思いました。全然僕なんかより遥かに身体が強いです。持っているものという意味でも。
朝倉海選手は僕より2階級くらい下なのかな。僕がガッチリ抑え込んでも跳ね返すくらい強くて。イメージとしては、朝倉未来選手は腰が凄く強くて、クレバーというか、打撃のカウンターとか、間合いの操作とかも得意な感じです。僕と練習したときの海選手は本当にイケイケでした。後退のスイッチが無くて、わーっと前に来るから、僕も押されるくらい。少しリスキーだなと感じたくらいで、その後、マネル・ケイプに敗れてまた修正して、それだけじゃない選手になっている。またレベルが上がったなと思っています」
――今回、勝利して、路上での戦いも経験している朝倉未来選手を引き出したいという思いはありませんか。
「もちろんそういうルールでやってくれるんだったらむちゃくちゃ興味ありますよ。勝てるとは思わないですけど、やってみたいとは思います。でもそこまで望んでいないです。こっちからお願いする話ではないのですが、彼がやりたいと言ってくれるなら、喜んでやりますけど」
格闘技団体BreakingDownが今後どんな盛り上がりをしていくのか、とてもワクワクする。
— 朝倉未来 Mikuru Asakura (@MikuruAsakura) July 1, 2021
俺もいつか出場したい
1分最強の男は憧れる
――今回の反響や、自身のモチベーションが高くなったら、定期的な参戦もありますか。
「それは気分次第です。今は僕は職業空手、格闘家じゃないので、道場を持ってアマチュアとしてやりたいということだし稽古として出てるので、またやりたいと思ったら出るだろうし」
――あらためて、試合の話に戻りますが、無差別とか路上に近いものではあるかもしれないけど、やっぱり限定はされている。金網オクタゴンにも囲まれていますし、それがフルサイズで大きいということもあります。
「UFCと同じサイズですよね。それは経験済みです。もしエレベーターで戦ったらけっこうキツい。目突き、金的がないと無理かなと思います。だけど、今回はちょっと広いので、多少はいけるかなと。効くかどうかですね、あの体格に。体重というのは攻撃力であり、防御力なんです。そこにどれだけ……まともに当てても効かないと思うので、うまくポイントに、急所にいい角度で当てないといけない」
――あの身体にボディを打って効くのか分からない。
「厳しいですね。意識を散らしてポイントに当たればいいかもしれない。アゴや肝臓、そういうところに当たれば。しかもそれを狙わずに自然に出せないと。いやあ、ドキドキしますね。怪我をして指導ができなくなると生活に支障をきたすので。でもこういうルールをやってくれるというのは本当ありがたいので、このチャンスをしっかり活かしたい。この状況を受け入れてくれて、相手もいたという、本当恵まれていますよね」
――できれば素手でやりたいくらいですか。
「そこはすごくいつもジレンマなんですよ。実戦性と安全性。大会である以上、安全性はやっぱり担保しなきゃいけない。僕も怪我をしたくないし、殺したくもない。だから、そこのバランスが競技というのは難しいですよね。グローブを着けることは納得しますよ。オープンフィンガーでやろうということで」
――バンテージはいつも巻くのですか?
「僕は巻かないです。沖縄空手をやりだしてから巻かなくなりましたね」
――より素手に近いから?
「バンテージを巻かなければ握りがしっかりできるので。そこからは試合で骨も折ってないですね。テコンドーで無茶して折りましたが(苦笑)、それ以外は折ってないですね。テコンドーにも取り組み、学んだことはすべて僕の中にありますからね。散々いろいろなことをやってきましたから。甲冑戦とかも。そのうえで自分なりに競技を楽しみつつ、武術を楽しみつつ、やっていますよ」
――DEEP100の記念大会でグラップリングのエキシビションも行いました。
「やりました。久しぶりにリングインしましたね」
――またいつかMMAにチャレンジということは?
「ルールが面白ければという感じです」
――MMAのルールは、いまの菊野選手にとって面白くないと。
「今はちょっと僕の思う強さとはズレているので。“僕がズレた”んです。逆にいえば、もともと僕はそうだったのに、(競技を)選んでいたんだけど、自分らしく生きようということで、こっちに行ったという感じです。やっぱり無理していた自分もいたので、いまは解放されています」
――素手に近いラウェーにも興味がありますか?
「ラウェーも僕が思う強さとは違いますね。寝技がないので。その時点で実戦じゃまったくない。寝技は必要なんですよ。ただ、密着・膠着が駄目なだけで。だって組まれたら負けますよ。それではつまらない」
――倒されても身は護れないといけないと。
「そのとおりです。誰が相手でも勝てるというか、負けない強さはあったほうがいいと思う」
――徒手格闘技として、あらゆる状況を想定したいと。
「そう。だから、そこに殺意を持たれたら無理です。守れない。後ろに目をつけておくことは無理なので。パッと今日常で起こり得る場で守るというのが僕の思う強さです。だから戦場で戦えないし、殺し屋には勝てないと思っています。だからみんなと仲良くしたいですね。僕、ずっとこんなことを言ってるかもしれない。変わっていないといえば変わっていないんです。ずっと、ドラゴンボールに憧れたままなんです」
――フルサイズのオクタゴンは広いですよね。沖縄空手も学ぶなかで、相手が距離を取った場合、あるいは超接近戦で押し込んだ場合、どう打撃を当てるという考えはありますか。
「別に近かろうが遠かろうが、いつもどおり“顔に手を伸ばします”よ。空手の型とかいろいろあるんですけど、技もあるけども、技よりももっと奥の鍛錬というか、身体の使い方、原理・原則ですよね。重心移動とか、歩隔を揃えるとか。それは全てに応用が利くので。僕が手を伸ばせば、そこに技が乗るわけです。威力が乗るので」
――それを出せる身体も作ったということですね。
「そうです。ああしてこうしてじゃなくて、手を伸ばせばそれが技になる」
――それは相手が動き、姿勢が崩れても?
「姿勢も自由に。姿勢が良ければよりいいですけど、姿勢が崩れてもリラックスと動きによって威力が出る。見ていてください」