私からのお願いは、朝倉選手に顔を上げてもらい戦い続けてほしい
試合では、スタンドで優位に立つ朝倉が、クレベルの組み・引き込みを断ち切り、消耗を誘いながら打撃をヒットし始めていた。そんななか、2Rに朝倉の右目を大きく腫らせたクレベルのコーナー際でのヒジ打ちは、クレベル陣営の鈴木博昭が授けた作戦だった。
クレベルにどうしてもテイクダウンされたくない朝倉は、相手の脇を差し上げるために腕を下に置くことになる。その顔面が空く瞬間をクレベルはヒジ打ちを狙っていた。
伸びきるような打撃。上体は浮くが、たとえ相手に組まれても引き込めばいい。朝倉としては、その引き込みが効力を発揮しにくい、コーナー下に落とすことで、下からの動きを制限するつもりだったが、その少ないスペースのなかで、前に出してきた腕をクレベルは巧みに逃さず三角絞めへ。予告通り、1回の相手のミスを勝利に繋げた。
すべてが高いレベルで出来た上で、さらに突出した武器を持つのが現代MMAのトップレベルだ。その意味では組みに不安を持つ朝倉と、スタンドとレスリングに難があるクレベルの両者ともに、ウェルラウンダー同士の戦いではなかった。その得意な部分と苦手な部分での競り合いの勝負で、クレベルの殺傷力が上回ったと言える。
「おそらく私たちの戦いは長い格闘技の歴史に語り継がれていくでしょう。私からのお願いは、様々な人のモチベーションのためにも、朝倉選手に顔を上げてもらい、仕事を続け、戦い続けてほしいということです」と、クレベルは激闘を越えた盟友に語る。
そして、心身ともに追い込まれたがゆえの失神した相手への咆哮は、「いろいろな人から、試合で朝倉選手を極めた直後に何を言ったのか聞かれます。実際の話、あなたとの熱い戦いでアドレナリンが出ていて、熱くなってしまって何を言ったのか覚えていなくて、でもあなたの気分を害するつもりは全くなく、もし変なことを言ってしまっていたとしたら、朝倉選手に申し訳なく思います」と謝罪した。
続けて「私がしたいのは、チャンピオンになるため、ファイターとしての仕事をするという、ただそれだけです」と、あらためてRIZINフェザー級のベルトへの想いを語った。
チャンピオンベルトを持つ斎藤裕もヴガール・ケラモフとの激闘を制し、「年内にクレベル選手と防衛戦をやりましょう」と語っているため、次戦はいよいよタイトルマッチとなるか。
週1回くらいでファイターとしての日常やトレーニング風景などを投稿していく、というクレベルの今後にも注目だ。
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