2021年3月21日(日)名古屋・日本ガイシホールにて「Yogibo presents RIZIN.27」が、4,558人の観衆を集めて開催された。
メインイベントの第14試合では、女子スーパーアトム級(49.0kg)タイトルマッチ(5分3R・ヒジあり)が行われ、王者・浜崎朱加(AACC)が、挑戦者・浅倉カンナ(パラエストラ松戸)を判定2-1で退け、初防衛に成功した。
試合後、浜崎は会見場で、あらためて浅倉の成長を「寝技のデフェンス能力が上がっていた」とし、パラエストラ千葉ネットワークの作戦である「3R通して判定で勝つこと」について、序盤の自身の猛攻で疲弊した面もあり「後半で体力は削られていた」と課題が残る試合内容だったことを明かした。
また「アームロックの防御」についても、浅倉陣営から「『何回も映像を見たよ』と言われました(笑)。かなり研究されてたんだな、というのは感じました」と吐露しながらも、スプリットに割れた接戦を制した要因を「意地もあります。最後も守りに入るよりは攻めていきたいなという気持ちもあって、ガムシャラというか、気付いたらタックルに行ってました」と、終盤のシングルレッグで前に出た動きを「意地」と評した。
2連勝で浅倉を退けた浜崎だが、コロナ禍で海外強豪選手の招聘がままならない状況だ。浅倉との3度目の試合について問われると、苦笑しながらも「今回の試合で逆にモチベーションが上がったというか、自分がまだまだだな、と思ったので、また試合があれば、もっと成長したカンナとやってみたいなという気持ちはありますか。『それ(3戦目)まで負けないでください』と(浅倉から)言われたので、一緒に成長したいなと思います」と、気を引き締めた。
また、大会総括で榊原信行CEOは、女子がメインを飾った浜崎とカンナのタイトルマッチについて、「RIZINの女子の格闘技の5年間の歩みのなかで、これがもうひとつの“堀口vs.海”ではないけど、集大成になったのかなと思います」と感慨を語った。
一方で、「ただ、これで女子格闘技が終わりということではないので、次の扉をどういう形で開けていくか。2連敗したカンナも“頑張ったね、もうちょっとだったね”という言葉は嬉しくないと思います。やっぱり足らないものが多かったと思います。まだまだ浜崎を越えるものが足りなかった。圧倒的な若さやフィジカルとかスピードとか、まだ超えられていないことを真摯に受け止めて、それでもカンナには歩みを止めずにチャレンジしてほしい」と叱咤激励した。
その上で、「逆に女子格闘技の若い選手には、浜崎にも底が見えたという気がしたのでは。1Rで本人が大振りになって自身が体力を削ってしまったところがあったと思う。絶対ではなくチャンスはあると思うので、日本の若い女子選手にも奮起してほしい。絶対的なスーパーアトム級の王者が必ずしも手の届かない選手ではないという、そんなことをかいま見る試合になったし、ひとつの句読点を刻む大きな試合になったかもしれない」と、国内で無双を続けた女王と、ライバルたちの差が縮まっているとした。
試合後の浜崎朱加との一問一答は以下の通りだ。
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浜崎「逆にモチベーションが上がった」
──試合を終えた率直な感想を教えてください。
「一本、KOを狙っていましたけど、自分が思ったような試合展開じゃなかったので、嬉しいというより悔しい気持ちの方が大きいです」
──ダメージはいかがですか。
「ダメージはないですね。少しヒザが打ち身になって痛いくらいで。来週くらいには普通に練習に出来るかなと思います」
──対戦を終えて、相手の印象に変化はありましたか。
「そうですね。対戦前は相手を煽るようなことを言いましたが、まあ、最初戦ったときよりも一回りも二回りも強くなっていますね」
──割れた判定についてはどう考えましたか。
「判定の内容については、勝ったか負けたかとは考えなくて、判定は割れたんですけど、負けたとしてもしょうがないかなと思いました。判定になったからには、審判の方にお任せなので、もし負けたとしても不服はないです」
──終わった時点では、競り勝ったかなという感じでしたか。
「そうですね……まあダメージという点ではあっちの方があるのかな、と思いました」
──どこが浅倉選手の成長を感じましたか。
「全体的に成長してましたね。打撃よりも寝技のデフェンス能力が上がっていたかなと思いました。パラエストラ……あっちのチームの作戦にハマっちゃったなと感じました」
──それはアームロックの防御も含めて?
「そうですね。『何回も映像を見たよ』と言われました(笑)。かなり研究されてたんだな、というのは感じました」
──「思ったように行かなかった」と。どんなプランで臨みましたか。
「毎回、作戦はまったく立ててなくて、相手がすごく研究していて、相手の作戦通りに試合が進んでいったのかな、と思います。3R判定勝負を狙っていたじゃないですか。その通りになりましたし、結構、体力も削られてたんで、そこはちょっと、私のなかでも課題が残る試合だったなと思います」
──1Rの打撃戦が強引なようにも見えましたか。
「打撃では結構、勝っていたというか、いいのが当たっていた感触はあったんで、いつもこんな感じなんですけど、もしかしたら倒せるかなと思い、殴り急いだというか、KO狙いすぎて、力みすぎちゃって、結構、最後の方、疲れちゃったな、という感じです」
──その一方で、この試合を浜崎選手が制することができたのは?
「うーん、まあ意地もありますし、そこが一番ですかね。試合のなかで負けたくないという気持ちもありますし。最後も守りに入るよりは攻めていきたいなという気持ちもあって、1回、倒したいなという、ガムシャラというか、気付いたらタックルに行ってました。次の世代の子に頑張ってほしいという気持ちもありつつも負けたくない。やるからには抜かれないように頑張ります」
──メイン前までの試合内容が、ご自身の試合に影響しましたか。
「今回、フィニッシュ率が高かったので、私も1Rから極めるつもりでいったんですけど、結果こうなってしまって。すごい試合が多かったので刺激になりました」
──実際にメインを終えて、どんな気持ちになりましたか。
「そうですね……不甲斐ない気持ちもありつつも……カンナちゃんがすごく成長していたのは素直に嬉しいです。(自分も)まだまだだ、負けられないなと思いました」
──「激闘」にさせたくなかった?
「ハハハ、そうですね」
──今後ですが、コロナ禍でなかなか海外強豪を招聘できず、浜崎選手のモチベーションの持ち方としてはどう考えていますか。
「いやーもう、今回の試合で逆にモチベーションが上がったというか、自分がまだまだだな、と思ったので、ちょっとまた、頑張らなきゃなと思いました」
──それは3度目の勝負も来い、という意味も?
「あー(苦笑)、また試合があれば、もっと成長したカンナとやってみたいなという気持ちはありますか。『それ(3戦目)まで負けないでください』と(浅倉から)言われたので、一緒に成長したいなと思います」
──女子MMAの今後について、どう感じましたか。
「日本でいま、二番手というか、私のすぐ下が浅倉カンナ選手だと思っているんですけど、もっともっと強くなると思うので、未来は明るいというか、これから盛り上がるんじゃないかなと思います」
──今後の展望について教えてください。
「今回、ちょっと悔しかったんで、もっともっと練習して、圧倒して勝てるような強さを見せていきたいなと思います」
──勝利者賞でハーレーダビッドソンを手に入れましたが、どう使いますか。
「そうですね。届いたら、すぐ乗りたいです。大きいから、(倒れたときに)起こせるか心配(笑)。あんまり遠出はしたことが無かったので、鎌倉とか海とか行ってみたいと思います。(サイドカーもつけて?)犬を乗っけていきたいですね(笑)」