目の粗いざるで篩に掛けられたような日々を生き抜いた
――MMAの試合では、ちょうど10勝10敗。豪快に勝つ時もあれば、派手に負けるときもあるリトル選手が、12月の前戦では佑勢乃花選手に判定勝ちでした。あの試合で掴んだことは?
「これまで3分3R制の試合が多くて、怪我で休んだりもしていたこともあり、5分3Rで少し消耗はしたんですけど、意外とMMAで試合をしたというか、あんまり僕の試合っぽくない地味な試合だったんですけど、動きの繋ぎがあって、こういう戦い方もありだなとは思いました」
――その白星が無かったら今回の試合も決まらなかった。ガッツマンで格闘技のキャリアを10年以上続けて、仕事も軌道に乗せながら、ファイターとして戦う理由を教えてください。
「そうですね……中学生のときにPRIDEで桜庭さんの試合を見てから、“僕はこれをやらなくてはいけないんだ”と思って、そのまま家の近くの極真空手の道場を見学に行ったんですけど、ちょっと怖くて駄目で、高校で部活で身体をつくろうと思ってラグビーを3年間やって、引退したタイミングでガッツマンに入門しました。格闘技に幼い頃から触れたわけでもなく、バックボーンも無かったけど僕、小柄で小さくて、友達から“リトル”って呼ばれていて、やっぱりいつもどこかで強さというものに憧れがずっとあったのかなと思います。
そんな自分が、伝統を重んじるガッツマンの先輩方に、礼儀から何から教わり、厳しい練習にも耐えてこれた。あれを抜けてこれたから、いまどんな逆境でも全然、大丈夫なんです。あの頃、ブームでたくさんの人がいましたが、辞めてしまう人が多かった。ガッツマンに残った人たち、新しくジムを出しても格闘技を諦めなかった人たち──みんなプロになって、チャンピオンシップにたどり着いています。すごい目の粗いざるでふるいにかけられたような日々でしたが、しがみついた人間だけが残ってた」
【写真】ガッツマン道場にて。PANCRASEを主戦場とするが、「修斗」の文字のもとで練習を重ねてきた。
――その生き残りとしては、まだ19歳に負けられないと。
「そこはちょっと、桜田直樹代表をはじめ、シンタさん、神酒(龍一)さん、村山(暁洋)さん、奥野(泰舗)さん、廣田(瑞人)さん……みんないる中で、自分はそこまでの選手にはなっていないですけど、泥を塗るわけにはいかない。これまで先輩の方々の試合を見てきました。シンタさん、石渡伸太郎さん、ボロボロでも全然気にしないで試合に向かって、いつも終わった後に何日か入院するような試合を見せる。覚悟が違うんです。僕もそういうつもりで試合をしたいなと思います」
――では、今回の試合を見る人たちに、最後にメッセージをお願いします。
「今回は明らかに相手が勝ってほしいという大会の意図が見えるんですが、そこは自分もずっとファイターをやってきたので、今回はヒールに徹してでも、みなさんには申し訳ないんですけど、勝ちをいただいていきます」
――『ガキには、未来しかない』なかで、35歳の小さな巨人の格闘技にも期待しています。
「おっさんにも未来だらけなので(笑)。おっさんにも未来しかない──それを見せます!」