受刑者も「普通の人」。格闘技で胆力をつけてもらいたい
――それはいったいどんなきっかけで、どんな運動を教えているのですか。
「運動を教えることが出来る人の募集があって、選考のときに『自分がやらせてもらえたら、3カ月おきに体力測定をしながら、ちゃんとデータを取って報告できるし、格闘家だから格闘技を通して、人の痛みや、楽しんでもらいながら教えることが出来ます』と話して採用していただき、2016年から週1でずっと、府中刑務所の主に高齢者の受刑者に、ボクササイズなどの運動を教えています」
――法を犯して塀の中に入った受刑者に、身体を動かすことを教えることで、リトル選手は何を伝えたいと考えていますか。
「みんな普通の人間なんです。ちょっともろい、ちょっと弱い人間なんですけど。『語り合う会』にも参加させていただいて、みんなちょっとしたミスとか、ちょっとしたずれで、刑務所に入って、出てもまた居場所がなくて、また入ってということもあります。
ボクシングでパーリングしたときに、チョンと当てたらめっちゃずれていっちゃうような、ああいう感覚で人生も崩れて行く。それは、どんな人でも同じ危険性があって、自分ももしかしたらそっち側に転ぶことだってあるかもしれない。そんな普通の人のちょっとしたもろさが、格闘技を通して身体を強くすることで、確実にメンタルの強さにも繋げることが出来ると思っています。そして、人との繋がりです。他者と繋がりが無いとどうでもいいやと思って法を犯してしまうので、その人との繋がりを大事にしています」
――格闘技は1人では出来ないですよね。たとえマススパーでも相手がいるし、試合は他者と向きあうことになる。
「そういったことをボクササイズの中でもいろいろ工夫してやっています。いつも人と身体を動かしていることで、ちょっとした場面で踏み留まれる──胆力をつけてもらいたいんです」
――格闘技はその胆力がつくと。
「はい。教えることで、自分も教わっています。いつも行くと『待ってたよ』って言ってくれるし、試合が決まると『頑張って応援しているよ』と言ってくれる。待っていてくれる人のためにも、『勝ちましたよ』と報告したいです」
――ジムでの指導や外での指導を終えて、ガッツマンでの練習は何時頃から行うのですか。
「練習を始めるのは夜の10時半か11時くらいからスタートして、12時半くらいまで練習して、その後でHIDE'S KICKさんに出稽古に行ったり」
―─24時を越えて出稽古を受け入れるほうもすごいですね……ほかにも?
「最近は行けていないのですが、CAVEで稽古をつけてもらっています」
―─ガッツマン繋がりということですね。そんな格闘技人生をもう10年以上、続けていて、今回の試合でリトル選手としては、もう1段階、突き抜けたいところですね。
「シンタさん(石渡伸太郎)から、いつも『いつ引退するんだ?』と言われて(苦笑)、自分でもキャリアの終盤で、最後に来たビッグチャンスだなと思っているので、これはもう本当にこういうコロナの時期に来たるべくして来た“プレゼント”を絶対にモノにして、その先に繋げたいです」