(C)ONE Championship
シンガポール・インドアスタジアムで事前収録された「ONE:UNBREAKABLE III」が2021年2月5日(金)、ONE公式アプリ「ONE Super App」や「ABEMA」にて配信された。
同大会では、ONEバンタム級で佐藤将光(日本)がファブリシオ・アンドラージ(ブラジル)と対戦、ONEストロー級で澤田龍人(日本)がロビン・カタラン(フィリピン)と対戦。佐藤が23歳の“ワンダボーイ”と接戦の末、惜敗。澤田はリアネイキドチョークで一本勝ちし、2連勝をマークした。
メインイベントは、MMA女子アトム級戦で、元ONEキック&ムエタイ二冠女王のスタンプ・フェアテックス(タイ)が、MMAでアリヨナ・ラソヒナ(ウクライナ)と対戦。ラソヒナの腕十字を再三凌ぐなど寝技の成長を見せたスタンプだが、残り7秒でギロチンチョークにタップアウト。スタンプはタップではないと主張したが、ジャッジはラソヒナの一本勝ちをコール。2021年開催のアトム級GPの出場候補争いは、混戦模様となってきた。
▼MMA女子アトム級 5分3R(47.7kg- 52.2kg)
×スタンプ・フェアテックス(タイ)52.10kg, 1.0172
[3R 4分53秒 ギロチンチョーク]
○アリヨナ・ラソヒナ(ウクライナ)52.20kg, 1.0023
元ONEキック&ムエタイ二冠女王のスタンプ・フェアテックス(タイ)が、MMAでアリヨナ・ラソヒナ(ウクライナ)と対戦する。
柔道家で元弁護士の経歴を持つラソヒナはMMA12勝4敗。うち10勝を腕十字でフィニッシュしている“腕関十段”だ。2014年にROAD FCでハム・ソヒ(韓国)に判定負け後、産休。2018年に復帰してからは母国のWWFCで2連勝を飾っている。
MMAでは5勝無敗のスタンプは、MMAキャリアでは上のグラップラーを相手にいかに戦うか。公式インタビューでスタンプは、「(2冠王となり)無名だった自分が有名になり、メディアのスポットライトを浴びて、みんなに知ってもらえた一方で、重圧があったし、質問にどう答えよう? とか緊張していました。表情はどうかな? とか。今まで経験したことがない状態でした」と、プレッシャーがのしかかっていたことを告白している。
練習、そして私生活でもパートナーであったロッタン・ジットムアンノン(タイ)とパートナーを解消。王座陥落を「失った物を後悔していますが、トレーニングに集中できなかった結果。集中力を失い、自己管理がなっていませんでした。一言でまとめると、自分は“悪い子”でした」と振り返る。
2020年8月以来の実戦、そしてMMAでは約半年ぶりの試合に臨むにあたり、「いくつかの出来事を経たことで、今年をより良い年にするための励みになりました。もっと自分のやるべきことに集中して、やる気を高めないといけないと。5カ月間、試合がなかったのでプレッシャーはありますが、また戦うのが楽しみ」という。
ハム・ソヒとも対戦しているラソヒナに勝利することは、2021年に開催が予定されているアトム級GPに臨むうえでも、重要なテストとなる。ハムはグラウンドにおいてもラソヒナを圧倒しているため、スタンプがラソヒナに手子摺るようであれば、GPに暗雲が立ち込める。ハムは対処したが、ラソヒナの腕十字のみならずガードからの足関節も、対処を間違えば危険なトランジションとなるだろう。
同級5位のスタンプは、立ち技2冠に加え、3つ目のMMAで世界タイトルを目指し、さらにかつてのタイトルも取り戻す、という。
「アトム級のトーナメントに参加したいです。そこから、3つ目のチャンピオンベルトを掴みたいと思っています。世界王者ベルトを掴み取る力、そして失った2つのベルトを取り戻す力があると、この試合で証明したい。今年は自分がどこまでやれるかを自分自身に証明したい。必ず戻ってきて、試合にだけ集中すると約束します」
ショートの髪を赤く染めて登場のスタンプ。ダンスも控えめでケージイン。しかし、コールには大きな笑顔。対するラソヒナは険しい表情でスタンプを迎える。
1R、ともにオーソドックス構え。左ジャブから入るラソヒナ。スタンプは右ロー。ラソヒナは左のダブルで飛び込む。シングルレッグでテイクダウンはラソヒナ! しかし、なんとオモプラッタのスタンプがスイープし、ヒジを打ち込みマウント&バックへ! 正対したラソヒナがリバーサルからパスガード、得意の腕十字へ!
すぐに上体を起こしてヒジを抜いたスタンプ。明らかに寝技の向上を見せる。スタンドへ。右ストレートを打つラソヒナに右のカーフキックはスタンプ。ラソヒナはシングルレッグテイクダウン。完全にパスガードしないまま腕十字も、ここは腕を抜くスタンプが起き上がり、スタンドでヒジ打ちへ。ラソヒナの右ローに、スタンプは右ストレートを放つ。
2R、強いワンツーで入るラソヒナ。スタンプ相手にスタンドでも対峙する。そこに打ち返すスタンプ。左ジャブを突くラソヒナ。前足重心のスタンプに右ローを狙うラソヒナ。しかし、そこに右のカウンターを狙うスタンプ。低いシングルレッグはラソヒナも、切るスタンプ。
ラソヒナの入りに右のダブルを見せるスタンプ。かわすラソヒナ。スタンプの右をかわしてニータップからテイクダウンを狙うラソヒナ。しかしスタンプは切って差し上げるとヒジ! ラソヒナのテイクダウンを切って上を取るとマウントへ。ラソヒナはケージウォークで上を取ると、腕十字へ!
ヒジは入っているが、スタンプはまたいで抜いてスタンドに戻る。ラソヒナの入りに右を当てるスタンプ! ラソヒナは後方にダウン! 立ち上がるが動きが落ちる。
3R、左ジャブを狙うラソヒナの打ち終わりに右ローを当てるスタンプ。待ちのスタンプ。左ミドルを当てるが、それを掴みながらラソヒナも右を振る。距離を取るスタンプは右ミドル。しかし、前足を上げながらムエタイの構え。そこにラソヒナは左ジャブを突く。ラソヒナの右ミドルにすぐに蹴り返しは入れる。互いに手数を落とした最終R。カウンター待ちのスタンプに、ラソヒナはシングルレッグから小外を合わせてテイクダウン。
またもオモプラッタを狙うスタンプだが、ここは察知するラソヒナがインサイドガードに入る。パスガードを狙うラソヒナに、シングルレッグに入るスタンプだが、そこにノーアームギロチンチョークを合わせるラソヒナ!
ハイエルボーで首を捩じられたスタンプは左手で1度強くタップ、2度目は触るような仕草でレフェリーがストップ。ゴングにスタンプはタイムアップと勘違いか、ダメージを感じさせずすぐにガッツポーズしたが、腕を叩いた動作はタップと判断されてもおかしくなく、ラソヒナの一本勝ちとジャッジされ、スタンプは「WHY?」と不服を表明した。
勝者インタビューでラソヒナは、「とてもハッピーです。とても疲れました。相手は思っていた以上に寝技が強かった。もっと成長して勝って、タイトルを狙っていきたい」と王座戦線に名乗りを挙げた。
残り7秒でギロチンチョークにタップアウトしたスタンプ。ONE初参戦で金星を挙げたラソヒナが加わり、2021年開催のアトム級GPの出場争いは、混戦模様となってきた。