我々にはコーチすべき若者たちがたくさんいます
金網から放たれたイーグルは、このまま格闘技の世界から飛び立ってしまうのか。
2020年10月24日、ゲイジーとの試合でヌルマゴメドフは、あの日、熊を倒したように、マットに両ヒザを着きながらもダブルレッグテイクダウンを決めた。すぐにマウントを奪い、上から三角絞めの体勢に。
Former/Interim/Interim champ.
— UFC (@ufc) October 26, 2020
🏆 @TeamKhabib closed his career with an unbelievable run. #UFC254 pic.twitter.com/yJwne2DGcG
左足で相手の右脇を開けさせ、右足で首を刈り、腕を抱えて後方に倒れ込み、腕十字も狙える形から両足を三角に組んだヌルマゴメドフ。定石通り胸を張って、腕を内側に流されないよう外側に置いたゲイジーだが、ハビブは腕も流さず頭も引きつけず、正対しないで絞めた。ゲイジーはタップするも気づかれず、再度のタップの直後、失神した。
それは、オールドスタイルと異なり、モダン柔術家たちが見せる90度に角度をつけた三角絞めの極め方だった。
試合後、ヌルマゴメドフはAKAの親友ダニエル・コーミエーに、このマウントからの三角絞めは、父アブドゥルマナプが気に入っていた関節技であり、試合前にゲージーが「タップはしない」という言葉を聞いていたため、絞め技を選択したことを明かしている。父から受け継いだレスリングに柔道、コンバットサンボ、そして一時は敵対していたブラジリアン柔術の技術も採り入れ、ハビブは、最先端のMMAを戦っていた。
引退を決めたハビブだが、帰路、父と同じ五十路となったAKAのハビア・メンデスコーチの隣りで、試合前とは異なる未来も語っている。「我々にはコーチすべき若者たちがたくさんいます。私はいつもあなたを助けます」。
その言葉に、マスクを着けたハビアは笑顔の写真とともに「史上最高のファイターに別れを告げることで、未来の偉大なコーチと共に、未来のチャンピオンを作るための新たなスタートを切ることができます」と記している。