キックボクシング
インタビュー

【KNOCK OUT】重森陽太、社長に試合を見に来てもらって社員採用、スーパーハードな二刀流

2020/08/11 09:08

勝負事で楽しむって、やっぱり実力がないといけない

 どんな質問にも丁寧に、分かりやすく、理路整然と答える重森。話が試合のことに及んでも、その語り口は変わらなかった。

 昨年のKNOCK OUTの「ベストバウト」といえば、満場一致で重森陽太vs翔(しょうた)・センチャイジム(昨年11月1日、後楽園ホール「KNOCK OUT 2019 BREAKING DAWN」)だろう。一進一退の攻防から、3Rに翔が先に2度のダウンを奪い、重森はあわやKO負け寸前まで追い込まれたが、冷静にカウンターのヒジでダウンを奪い返し、4Rに立て続けに2度のダウンを奪ってTKO勝ち。この「倒し倒され」の激闘に会場は興奮のるつぼと化し、試合の模様は『キックボクシングKNOCK OUT』(当時はTOKYO MXやBS日テレなどで放送。現在はYouTubeで定期放送)で繰り返し放送された。


(写真)倒し倒されの激闘となった重森vs翔

「反響は大きかったですね。近所でも声を掛けられることが多くなりました(ニッコリ)。40戦近くやってきて、あまり倒されたことはないんですけど、あの試合で『倒されやすいイメージ』が良くも悪くも付いてしまって(苦笑)。ただ『重森は面白い試合をする』と期待していただけるようになったのをすごく感じますし、感謝しています」

 激闘は、重森が事前にイメージした通りだったという。

「必然といえば必然だと思いますね。試合前に『相手の土俵で勝つ』と言いましたけど、パフォーマンスではなく、本気でそういう試合運びをしようと思っていて」

 翔は「年内での引退」を公言しており「最初で最後のKNOCK OUT出場」に最高のモチベーション、最高のコンディションで臨んできた。重森も、翔の気合いを感じながらも引っかかるものもあったという。

「翔選手が試合前のインタビューで『噛み合わないと思う』と言ったんですよ。で、自分は翔選手は引退試合ですし『絶対に噛み合わせたい』と思ったんですね。だから『真っ向勝負をしたい』と思って、そこはかなり意識しました。『翔選手のやりたい試合をやろう』とキックをキャッチして蹴り合う展開でも、首相撲の展開でも『パンチで打ち合いがしたいんだろうな』と感じたらパンチで打ち合ってもいい、と。結果としてヒジの打ち合いになっちゃったんですけど」

 重森には「戦いの美学」がある。

「勝負するところはしなければいけないし『ここは引けない』というところは絶対に引かないです。だから、試合後に『これだけテクニックを教えてるのに、なんで行くんだよ』ってよく怒られるんです(苦笑)」

 試合中に「チャンスだ」と感じたら、躊躇なく踏み込んで攻勢を掛けるのが重森のスタイル。リスクを恐れないこの姿勢が、翔・センチャイジムとの名勝負を生み出した。

「自信、なのかもしれないですね。自分は試合中に焦ることがないんです。どんなに効いていても、切られても、頭の中では『あと何分』『あと何ラウンドある』と考えています。デビュー戦が5歳で、タイのラジャダムナンスタジアム(※ムエタイ二大殿堂の1つ)で初めて試合をしたのが小学3年生。その時はめちゃめちゃ緊張して、飛び込むような気持ちでしたよ。今は試合中も冷静ですけど、それは幼い頃からやってきて、戦歴を重ねて、経験がちょっとずつ大舞台で活きてきているのかな、と思います」


 9月13日の「創世のタイガGRAND PRIX 61.5kg RED 初代王座決定トーナメント」について、重森は「楽しむ」と言い切った。

「勝負事で楽しむって、やっぱり実力がないといけないんですよ。だから『楽しい』と感じられない時は『俺、弱いんだな』と思ってまた頑張れるんです。
 子供の頃から、毎試合、毎試合『どういう気持ちで試合に挑めばいいのか』を考えてきました。ちょっと野蛮な気持ちになるべきか、リラックスするべきなのか、とか。まだ明確な答えにはたどり着いていないですけど、今の時点では『試合前も、試合中も、楽しい、と思ってる時はいい動きが出来ている』というのが一番答えに近いと思ってます。
 だから、創世のタイガGPも楽しむ。KNOCK OUTのトーナメントでは、55.5kgで先輩の(江幡)塁さんが優勝した時に『次は自分が獲ります』と意気込んで声を掛けて、塁さんに『頑張れ』と言って貰いました。僕がトーナメントを優勝して、伊原道場に2本目のベルトを持って帰ります。ぜひ、応援をよろしくお願いします」

取材・撮影/茂田浩司

(プロフィール)
重森 陽太(しげもり・ようた)
1995年6月11日、東京都出身。伊原道場稲城支部所属
戦績:39戦31勝(17KO)3敗5分。身長181cm。
タイトル歴:日本バンタム級王者。日本フェザー級王者。WKBA世界ライト級王者。
5歳からキックを始め、16歳でプロデビュー。18歳で初戴冠。以降、階級を上げて3階級制覇を達成。
長身と長いリーチを活かした蹴り技を得意とするが「打ち合う時は打ち合う」好戦的スタイルで、昨年の翔・センチャイジム戦では「KNOCK OUT年間ベストバウト」と言われる激闘を展開して勝利した。

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