MMA
コラム

プロMMA3戦、永井佑虎に起きたこと──頭部の怪我で引退した永井と練習相手の石渡伸太郎が事故防止を呼び掛ける

2020/07/04 04:07

彼に何かあったら、RIZINで戦えなかった

「いま思えば」と石渡は振り返る。

「スパーリング後、永井は歩いていたりもしたので、『もう帰って休みなよ』と言っていた可能性もあったなって。あそこで帰らせていたらアウトだったかもしれない。あのときは会員さんもいて、ほかの選手もいたのですが、あの後、ジムのみんなでミーティングして、あらためて『監督がいないときはスパーリングをしない』『頭痛があるときは練習禁止』『実力差があるときの練習のやり方』などを確認し合いました。どんな状況であろうと、頭が痛かったら休む。間違いないです。命より大事なことはないですから」

 後遺症が無く退院出来た永井は、26日後のさいたまスーパーアリーナに足を運んでいる。石渡と佐々木憂流迦の試合を観戦するためだった。

「病院に搬送された彼に何かあったら、自分は佐々木憂流迦戦(2019年7月28日「RIZIN.17」ノースサウスチョークで石渡が一本勝ち)、出来なかったと思います。憂流迦戦、本人が来てくれて、勝ってバックステージに行ったら、泣いて喜んでくれて……『ありがとう』って僕も言って。ほんとうに後遺症も無く帰って来てくれてよかったな、と思いました」

 事故の当事者として、ジム内でのことを公にするにはリスクもあり、実際に様々な反響があった。

「今回の件は、本人の許可を得て周囲には話していましたが、格闘技のことをよく知ってもらうために、今後、少しでもこういった事故を減らすためにも、一般の人にも公開した方がいいと思っていました。1年が経って、永井本人と代表(奥野泰舗)とも話をして『知ってもらうべき』ということで、今回、ツイートをしました」

 その言葉は、選手のみならず、メディア側からも絶えず発信していかなくてはならないことだ。それは身体を酷使しながら、身体を守るという矛盾のなかで競い合うスポーツを見せるうえで、最低限の条件となる。

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