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インタビュー

【ONE】チームラカイがコロナ禍の地域を支援「良い時も悪い時も共に分かち合ってきた」

2020/04/28 12:04
【ONE】チームラカイがコロナ禍の地域を支援「良い時も悪い時も共に分かち合ってきた」

(C)ONE Championship

 フィリピンの名門ジム「チームラカイ」の選手たちは、格闘家としてだけでなく、それ以外でもスーパーヒーローであることを示し続けている。

「チームラカイ」は今回、フィィリピンの政治団体「ACT-CIS Partylist」と協力して、コロナウイルスが広がっている周辺のベンゲット地域の高齢者や恵まれない人々の支援に乗り出した。

 ヘッドコーチのマーク・サンジャオを始め、ONEストロー級世界王者のジョシュア・パシオ、元世界王者のエドゥアルド・フォラヤンやケビン・ベリンゴン、ジェヘ・ユスターキオらが2020年4月17日、外出をしなくてすむように物資を無料で届ける「Mobile Tulong(移動式援助)」のプロジェクトに参加したのだ。

 チームは新鮮な野菜や果物、米を詰め、必要としている家々に配った。「成功だった。ACT-CIS Partylistのエリック・コ・ヤップ議員と協力し、ベンゲットの高齢者に救援物資を配布することができた」と、サンジャオは説明した。

「コミュニティの中に困っている人がいると思っていた。だから、『チームラカイ』のメンバーから多くの人数がこのプロジェクトに参加すると決めた。『Mobile Tulong』のプロジェクトと合わせ、全体の取り組みが強化されたと思う」

 もともと「チームラカイ」はマーク・サンジャオ代表が、バギオ近郊にあるコルディリェラ大学で散打を教えてきたグループが発端だ。2003年、同大学で「ラカイ・ウーシュー」としてスタートした。

 しかし、国内で注目を集めるようになった総合格闘技を、フィリピンのウーシュー連盟は問題視した。サンジャオたちは対立を避けるため、別の名前を付けることにした。2006年、「ウーシューと距離を置くために『チームラカイ』という名前を考え出したんだ」(サンジャオ)

 大学の敷地を他の一般の学生と共有してきたグループから独立したチームへ。練習スペースは大学のジムから、市場の肉屋の2階へと移らざるを得なかった。しかし、ここから4人の世界チャンピオンが生まれたのだ。

「当初のジムにはマットがなかったから、どうやってグラップリングの練習をするかに苦労したよ」とフォラヤンは振り返る。「生みの苦しみだった。自分たちは本当にゼロから始めたんだ」。

 サンジャオ代表自身もMMAで活躍を続け、フィリピンの全国タイトルを獲得した時、ジムのメンバーはすぐに急増した。だがすぐに、彼らはいなくなっていった。

「URCCバンタム級チャンピオンだった自分が試合に出るたびに、ジムに帰ると、一緒にトレーニングしたいという人たちがやってきた。試合の後も毎回、ジムは満員だった。でも2~3カ月もすると、また誰もいなくなるんだ」

 資金繰りの厳しい状態は続いた。

 フィリピンでMMAの人気は高まっていたものの、地元の団体は定期的にイベントを開いているわけではなかった。そのため、選手は大会だけで生計を立てることができなかった。サンジャオは経済的に厳しい状況に直面したものの、自分の情熱を信じ、それを貫き通した。

 周辺の学校から、顔見知りの選手をリクルートして、ウーシューのバックグラウンドを持つチームを強化した。コルディリェラキャリア開発校からホノリオ・バナリオを、コルディリェラ大学からジェヘ・ユスターキオを招き入れた。選手たちがURCCでベルトを獲得していくと、チーム・ラカイの会員も増え始めた。

 2018年を終えた時、「チームラカイ」は4つのONE世界王者タイトルを持っていた。2020年、ベルトは4本から1本になった。しかし、パシオが一度は失ったベルトを取り戻し、親友ダニー・キンガッドも合流。チームラカイの次世代の成功を担うリト・アディワンもいる。

 現ONE世界ストロー級王者のパシオは言う。「自分がここに来たとき、みんなが大きな一つの家族として付き合っているような兄弟愛を感じた。それが、このチームを特別なものにしている理由だと思う。良い時も悪い時も共に分かち合ってきたチームだ。みんながそのことを心に留めている」と語る。

 2016年11月に青木真也に勝利しベルトを巻いたフォラヤン(※2019年3月に青木が王座奪還)は、もともと国家試験に合格して教員免許を取得した高校教師だった。フォラヤンは、社会の中でチャンピオンを作り上げる特質と、その特質がどう格闘技を超えて広がっているかについて語る。

「コロナウイルスが世界中に蔓延している間、自分たちの主な役割は、お互いを高め合い、頼り合い、祈り合い、そして守り合うことだ。結局のところ、お互いに助けあわないといけない。ベンゲットの協力者のサポートと援助を通じて、影響を受けやすい高齢者を支援する手助けができて嬉しく思っている」

 2019年8月、サンジャオはこれまでのジムを閉鎖し、同じ町ラ・トリニダードに大規模な施設をオープンした。

 コロナウイルスの感染者が増えるにつれ、フィリピンでは不安が高まっている。だがサンジャオはこの前例のない異常な事態の中で、人々を励まし、前向きでいるよう促し、そしてできることなら他の人たちを助けてほしいと考えている。

「自分たちは強いままで、信じるものを保ち、前向きな姿勢を維持する必要がある。これらの試練と挑戦は乗り越えることができるだろう」とサンジャオは語る。「自分を大事にし、健康を維持し、この危機の中でお互いに励まし合おう。そしてみんなの安全のために、神に祈ろう」。(協力:ONE Championship

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