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2020年4月17日(金)『Road to ONE:2nd』の全6試合が「無観客」で行われる。
新型コロナウイルスの感染拡大により経済活動も停止し、「0か100か」の選択が声高に叫ばれるなか、終息まで長期化することを見据え、感染のリスクを避けながらもバランスを取って、コロナと共に生きることが必要となってくる。
多くの大会が「中止」となるなか、『Road to ONE:2nd』では、「無観客」とし、格闘技中継としては「ここまで徹底するのか」と思われるほどの対策を取って、試合を実施する。
この「コロナ時代」のイベントのベンチマークになるかもしれない明日の『Road to ONE:2nd』に向け、「sponsored by ABEMA」として、同大会に関わるABEMA「格闘チャンネル」の北野雄司プロデューサーに話を聞いた。
──まず、4月17日(金)の『Road to ONE:2nd』を「2nd」として今年も開催・生中継するために、「sponsored by ABEMA」あるいは「協力」として名を連ねることになったいきさつを教えてください。このコロナ禍で試合機会が失われている選手に、その場を与えたいという思いもあったのでしょうか。
「『Road to ONE』は本来ONE Championshipの日本大会を盛り上げるために始まったプレ・イベントですが、今年はもともと決まっていた4月の日本大会がリスケジュールになり、会場だけが空いていました。そこでせっかくだから何かやりたいですね、という長南(亮・TRIBE TOKYO M.M.A主宰)さんや坂本(一弘)さん(サステイン代表)とのお話の中で、ONEや修斗を配信する放送局として自然な流れでスポンサードが決まりました。そして、このイベントですが、ABEMAだけでなくスポンサードしてくださる企業もいます。
また、5月~6月には試合のオファーが来ているはずだった青木真也選手や、中止になったONE Warrior Series出場予定選手にも試合の機会を提供できたら……と思いました」
──「自粛要請」が続いたなか、コンテンツ・興行・エンターテインメント業界として、「自粛」に右へ倣えの状況に一石を投じたいという思いなどもあったのでしょうか。
「『無観客試合』だとしてもそこに闘う覚悟のある選手たちがいるなら、プラットフォームとして極力安全な中継体制を協力して構築し、放送する。そうやって格闘技を提供する場を用意したいと思っています。新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかかったとしても、完全になくなるわけでなく、私たちは『ウィズ・コロナ』の時代を生きることになる可能性もあると考えていますし、今回が最初の安全対策トライアルだと思っています」
──6試合とこじんまりとしながらも個性的なカードが並びました。なかでも青木真也vs世羅智茂、宮田和幸vs田中路教の2試合はほかではあまり観られないメンバーです。グラップリングとはいえ、通常、日本ではあまり試合を見ることさえ限られる田中、青木、宮田の3選手に出場をオファーした理由や、それを快諾した選手への想いを教えてください。
「すごくいいカードですよね。早くオンエアが見たいです(笑)。青木選手は前回の試合から約半年。常にベストコンディションを保っているし、『自分の可能性を使い切りたい』と口にしているのを聞いて、ぜひオファーしたほうがいいのではと思い、話し合いました。そもそもイージーなカードをご本人が望んでいないので、長南さんが世羅選手を提案してくださいました。また田中選手はLFAと契約し本来アメリカに行っている時期ですが、『グラップリングを1試合やってみたい』という申し出を人づてに聞いていました。宮田選手が受けてくださるのは望外でしたが、坂本さんが尽力してくださいました。グラップリングって『寝技じゃないか』って思うかもしれませんが、彼らの練習を見に行ったらすごく獰猛ですからね。熱い試合を見せてくれるはずです」
──たしかに。ハイレベルなグラップリングは打撃戦のような音がしますし、投げ技もあり危険なことに変わりありません。さて、大会開催発表時から、刻一刻と新型コロナウイルスの状況が変わり、国内外の格闘技大会も軒並み「無観客」そして「中止」へと傾いていきました。そんななか「Road to ONE」も当初の「通常大会」から「無観客大会」「取材陣も入れない」と変わっていきました。その間に、どのような逡巡や決断があったのでしょうか。選手出場やマッチメークに難航もあったと思います。選手・関係者の反応をどのように感じていましたか。
「日々状況が変わるので、毎日変更や試行錯誤をしながら進めています。例えば、会場変更になったのが先週。ONEのチャトリCEOに安全対策などを報告して『Good Luck on your event!』とGOサインをもらったのが一昨日の14日。万全の安全対策のためギリギリながら進行しています。この状況で“試合をしたくない”“練習が十分に積めない”あるいは“試合をするべきじゃない”と考える選手など、いろいろな意見もありますし、そもそも、イベントをやるべきかどうかはまだ正解が分からないですが、そこに闘う選手がいて試合が行われるのであれば、やれる限り最大限の対策をして、放送できればと思います」
──UFCが決行を宣言していたビッグマッチを中止にするなど、世界的に「無観客」でも関係者が集まることなどで、世論が厳しくなっています。今回はビッグマッチではありませんが、無観客の大会実施にあたり、
「会場を専門業者によって1日複数回の消毒を実施」
「サーモグラフィー、体温計による検温」
「うがい」「アルコール消毒」
「『密集・密閉・密接』の3密を極力避ける」
「選手並びに大会関係者にマスク着用を義務付ける」
などを発表していますが、それ以外にも、大会後も症状を追って確認するなど、非常に細かい注意を払っていると伝わってきています。詳しく教えていただけますか。
【写真】距離が近くなるスタッフは防護服を着用。専門業者の消毒のほか、様々な消毒器具が用意されている。
「選手・関係者・スタッフ・カメラマンや音声・照明さんに至るまで、全員現場まで来るのに『極力公共交通機関は使わないでください』とお願いしています。駐車場代やタクシー代は主催者側やABEMAが負担します。また、カメラマンなど密着して仕事をする必要があるスタッフには1カ月前に発注していた防護服を着用してもらいますし、セコンドは1名まで、とお願いしました。
ほかにも、会場と隣接した場所に、控えスペースとしてホテルやビルの会議室を借り切っています。ここの消毒をする業者を探していたところ、もともと格闘技関係のお仕事をしていて今は清掃・消毒の仕事をしている方が『格闘技に恩返しをしたいから、無償でやる』と申し出てくださいました。さすがに無料というわけには……と話していましたが、熱い想いが込み上げました」
──新型コロナウイルスとの付き合いが長期化するなかで、経済活動において「0か100か」の選択だけでなく、出来るだけ感染のリスクを避けながらもバランスを取って、活動していくことが必要となってくると思います。「緊急事態宣言」で、試合会場の確保もままならないなか、それでも格闘技を見せる──お気持ちを教えてください。
「異口同音に『コロナが落ち着いたら』と言われますが、『やがて全てが元どおりになる』となんとなく思っているなら考えが甘すぎると思います。先述のように『ウィズ・コロナ』の時代が来る可能性も考えられますし、終息しても格闘技ファンの方々が元どおり会場に戻って来てくれる保証もありません。格闘技の灯を絶やさないために、格闘技を伝え続けていかないと、みんなで何十年もかけて築いて来たものは失われてしまうと思います。しかし、現状を鑑み感染拡大は絶対に防がないといけません。矛盾した命題のように感じますが、今はその最適解を探して、各団体や選手と連携して、格闘技の生中継・放送を続けていきたいと思います」
──なるほど。人間は、歴史の中で何度も大きなパンデミックも経験してきています。ペストは14世紀には推計5千万人もの命を奪ったと記録されていますが、それでも「格闘技」が無くなったわけではありません。だから、きっと格闘技は残る。でも、ファイターたちや興行、媒体も今を生きている。その今を生きる人たちがいることで次の世代にも繋がっていくと考えます。我々『ゴング格闘技』も格闘技を伝え続けていこうと思います。
Road to ONE:2nd
4月17日(金)19時~ABEMAで独占生中継
解説:大沢ケンジ 実況:清野茂樹
▼Road to ONE グラップリング ウェルター契約 10分1R(判定無し)
青木真也(元ONE 世界ライト級王者/EVOLVE MMA)
世羅智茂(2017年 IBJJFアジア選手権黒帯フェザー級準優勝/CARPE DIEM)
▼Road to ONE ムエタイ 72.5kg契約 3分3R
緑川 創(Monster Guns)
西川大和(西川道場)
▼Road to ONE MMAバンタム級 5分3R
祖根寿麻(ZOOMER)※元修斗環太平洋バンタム級王者
後藤丈治(TRIBE TOKYO M.M.A.)
▼Road to ONE MMA フェザー級 5分3R
工藤諒司(TRIBE TOKYO M.M.A)
椿 飛鳥(トライデントジム)
▼Road to ONE グラップリング フェザー級 10分1R(※判定無し)
宮田和幸(BRAVE GYM)
田中路教(フリー)
▼ムエタイ・ストロー級 56.7kg 3分3R
HIROYUKI(日本)
ポン・ピットジム(タイ)