(C)Josh Hedges/Zuffa LLC/UFC
2020年2月8日(日本時間9日)、米国テキサス州ヒューストンのトヨタ・センターにて『UFC247』が開催された。
メインイベントではライトヘビー級タイトルマッチが行われ、王者ジョン・ジョーンズがMMA12戦全勝のドミニク・レイエスを迎え撃った。
5Rにおよんだ試合は、後半のチャンピオンシップラウンドで手数を増し、テイクダウンを決めるなど、スタミナ面でも盛り返した王者が判定3-0(48-47×2, 49-46)勝利。ジョーンズがジョルジュ・サンピエール(カナダ)が持つUFC史上最多タイトルマッチ勝利数の「13勝」を抜く「14勝」を記録し、ライトヘビー級では3度目の防衛に成功した。
判定3-0という結果以上の接戦。
タフファイトを制した王者は試合後、「必死に戦った。一番感動した勝利とはいかなかったけど、これまでも一度として楽なものはなかった。簡単なことなんて何もない。全力を尽くしたし、5Rにはチャンピオンたるところを示せたと思う」と、3R戦とは異なる5Rの王座戦で勝利することができたことを語った。
さらに、「彼(レイエス)は何度もハードな打撃を打ち込んできた。ファンは俺が打たれるのが好きみたいだけど、そう滅多にあることじゃない。ただ同時に、俺もテイクダウンを取っているし、1回と言わず彼のバックを取っている。寝かせ続けられなかったけど、バックを奪ったし、テイクダウンを成功させて、5R目は完全に俺が優位だった。必死に勝ち取ったとしても勝利は勝利だ」と勝因を語り、最後に「レイエスはすごい若手だね」と、この試合まで12戦無敗だった挑戦者を称えた。
一方、MMA13戦目で初黒星となったレイエスは、「1Rから3Rは自分が取っていると思った。4、5Rはチャンピオンシップラウンドで彼が盛り返したけど……まあ、結果は結果だ。自分が本物だと分かっている。(サプライズは?)無いよ。彼は強かった。打撃でも接戦だった。でもこれがファイトだ。ダメージはゼロじゃない。でも僕も彼にダメージを与えたと思う。みんな応援ありがとう。自分の心に響いたよ」と、3Rまでは自身のラウンドだったことを主張している。
試合後の会見ではこの接戦の判定を巡り、さまざまなコメントが飛び出た。
ダナ・ホワイトUFC代表は、「今夜のジャッジに関しては完璧だとは思わない。いくつかの確認を行う必要があると思っている。私の採点では、第4ラウンドの時点で39-37でドミニク・レイエスだった。ただ、あちこちで(レイエスが)勝ちを盗まれたと言っているけど、我々はジャッジではないからね」と、スコアの内容に確認が必要だと答えた。
また、UFCの解説を務めているジョー・ローガンは放送で、「ジョーンズが4R分取った(49-46)というジャッジはおかしい。MMAを知らないジャッジがいるという大きな問題があることは明らかだ」と発言。ローガンは同大会で、判定2-1(29-28, 28-29, 30-27)で勝利したアンドレ・イーウェルに30-27をつけたジョー・ソリスが、メインでも49-46をつけていることに「非常識だ」と語っている(※ソリスは2017年2月のUFCでの田中路教vsヒカルド・ラモス戦でも29-28が2者のなか、唯一30-27でラモスにつけている)。
テキサス州ヒューストンで行われた『UFC247』。米国では基本的に各州のステート・アスレチックコミッションからジャッジが派遣されており、ユニファイド(統一)ルールはあっても細部の規定や、ジャッジの質が異なることがある。
各州のアスレチック・コミッションを統括するABC(Association of Boxing Commissions)は「MMA判定基準の改定」なども行っているが、米国全土のコミッションに対して強制的な権限を持っているわけではなく、また、ボクシングに比べ歴史の浅いMMAでは、かつてはボクシングを専門とするジャッジがスコアをつけていることも少なくなかったが、近年はMMA経験者も増え、MMAの理解がジャッジ間でも深まっている。
そんななかで、物議をかもしたジョーンズとレイエスのスコアリングは、MMAの判定基準やシステムを考えるうえで貴重なサンプルとなりそうだ。