ATT「所属」になるということ。日米の環境・技術差は広がっている
一方の神龍は、この日のカード発表前に、米国ATTに「所属」することをSNSで発表。
「練習で(UFC王者の)パントージャ選手とスパーリングして一本を極められてめっちゃ強いと思った。世界トップと肌を触れて追いつきたいなと思ったし、本当に技術練習がすごくて毎回知らない技を教えてもらい、“俺、まだ伸びしろあるな、ここにいたら強くなれるな”」と思い、ATT所属になることを決断したことを明かしていた。
さらに「グラップリングだけやったジョズエ・フォルミーガはグラップリングがバカ強い。軽くスパー見てたら、パントージャも一本取られてた。各部門で飛び抜けてる人が結構いて、グラップリングはフォルミーガ選手がヤバかったなっていう印象」と、元修斗南米大陸フライ級王者のグラップリング技術にも舌を巻いている。
また、「一階級上のダゲスタン系の選手ともやったり」するが、「もうサイズ差が違いすぎてボコボコにされる。日本のフェザー級ぐらいサイズは大きい」といい、「女子もバンタム級の選手がフルで来ると、本当に僕も7、8割出さないとちょっとやり合えないです。半分ぐらいで行ったら多分やられますね。それぐらい強くて、レベル高けえなと思いました。柔術の女子世界チャンピオンにもフロントチョークを極められたし、一つひとつの精度が高いし、コーチみんなそれぞれ“答えを持ってる”感じはしています」と、練習とはいえギロチンを極められないことに定評がある神龍からタップを奪う女子選手の存在、さらにコーチ陣が選手からの問いに明確な答えがあるとした。
また、会見後の投稿でも、「技術練習で本当に毎日新しい技を知るんですよね。必ず技術練習をやってからスパーリングやるみたいな日が多いんですけど、そこで本当に新しい、“ここでこうすればよかったんだ”みたいな。前回の試合で疑問だったところも埋まったりとか。そういう意味では“知る”だけで全然違う。プラス、本当に世界一のパントージャともグラップリングスパーとかやらせてもらったり、本当にそういう経験値も積めてるんで、自分がいきなり強くなったかどうかっていうのはまだ分からないけど、その経験は積めてます」と「所属」となったことで、より深い部分でMMAに取り組んでいるとした。
「元々プライドがすごく高くて(ATTに)行かなかったんですけど、やっぱここ最近本当に僕がこの負けてる4敗は本当にトップの壁なんですよ。ここで負けて周りの人も悲しませるし、やっぱり自分にも絶望したし、このままじゃダメだなって。そこそこトップではやれるかもしれないけど、今この壁を超えたいし、そういう時に何かを変えるってなったら、元々声かけてもらった堀口(恭司)さんの言葉が散らついてきて……ずっと“来たくない。やり返したい”って思ってたけど、もうここで“今自分を変えるしかないのかな”と思って、“行かないとダメだな”と思って決めました。一番いいのは、日本だと“キックのジムに今日は行く、ボクシングのジムに今日は行く”と移動しなくちゃいけない。それが一つのジムでできるから、その時間の短縮は本当にいいなと思います」と、ATTでの利点を語る神龍だが、難点もあるという。
「まだ友達はできないですよね。言葉が本当に難しくて、挨拶は頑張ってするんですけど“ヘイ・ブラザー”とか言われるからグータッチはするんですけど、それで終わるというか……“挨拶友達”はできたかもしれない。言葉の壁もあるし、まあ、孤独。今回、堀口さんも日本帰っちゃってるんで今、本当に結構一人というか、日本人は僕が──クレベルさんはいるんですけど、まだほぼ一人でやっていってるんで、そういう意味では気持ちは強くなるのかなっていう気はします」と、ATTに入って、心身ともにタフになっていると語る。
そしてヒロヤ戦の決定。榊原CEOが明かした通り、ぎりぎりまで神龍の試合は決まっていなかったという。
「本当に(大晦日)決まってなかったし、“あ、もう今年はないのかな”と思って僕も“まあ、仕方ないかこういう日もあるか”みたいな。でも大きい大会は連続でずっと出てたんで(改修前)最後のさいたまスーパーアリーナスタジアムバージョン、行きたかったなあ、と思ってたら急に『本当に試合あるかも』って言われて『誰でもやります』って言って、最初外国人選手なのかなと、そういう話だったんですけど、ビザ間に合わないってなって。ヒロヤ選手って言われて、『全然誰でもやるんでぜひ』っていう話で決まりました。ヒロヤ選手を舐めてるわけじゃないけど、戦績とかで考えたら普通は組まれない。そういう意味では大晦日らしいなとは思いました。でもヒロヤ選手も今本当に強くなってると思うし、元谷さんとの試合を見てもやり合えてたんで、本当にもうそこは舐めずに、しっかり自分より強いと思って追い込んでやろうかなって思ってます」
「必ず強くなって世界一になる」という神龍。これで現在、ATTには堀口恭司、中村倫也、元谷友貴、牛久絢太郎、金太郎、野村駿太らに加え、神龍誠が「所属選手」として加わった。
榊原CEOは、「ダン・ランバートがATTのオーナーなんですけど、ダンからなんか協賛金もらわないと(笑)。結局、所属するってどういう意味かっていうと、ファイトマネーの一部がジムに入る。『ATT所属』として戦うために練習環境は揃える、でもファイトマネーのパーセンテージ──それぞれ選手によってあると思うんで、あまり僕は具体的な数字は言わないけど、ちゃんとファイトマネーの一部がATTに入る、ってことは、ファイトマネーを払っている僕からすると『じゃあ、ダン、ちょっと(キャッシュバックを)』と(笑)。いいところの選手、みんな取られてるじゃん」と苦笑しながら、日本格闘技界の空洞化も危惧している。神龍誠や野村駿太らトップファイターが、数日の練習で「所属」を決める、MMAの市場として圧倒的な規模を誇る米国と日本の環境差・技術差をどう考えるか。
最後にヒロヤは「2年ぶりの大晦日で、やっぱり死闘になると思ってるんで、その中でも自分の人生が変わるような日になると思うんで大晦日、皆さんPPVでも会場でも、貴重な日ですが、皆さん応援よろしくお願いします」と意気込みを語った。
大晦日、米国帰りの神龍誠とヒロヤのどちらが先に反撃の狼煙を上げるか。




