ウランベコフに背中を譲らず立った堀口
上で組んだウランベコフが右腕を差して堀口をケージに押し込むと、ウランベコフはボディロックして、堀口の体を持ち上げるようにやぐら投げでテイクダウンしたのだ。しかし、ここで堀口はすぐにケージに背中を預けて寝かされないようにすると、バックを狙うウランベコフに正対して突き放して、右カーフ、右フックを打ち込んでいる。
この攻防で、最大のチャンスを逸したウランベコフは、その後の組みもカットされ、前足を蹴られて疲弊。2Rのギロチンチョークも堀口に頭を抜かれると、片足タックルにパウンドを浴びて、ホーンに救われるも立ち上がれず。コーナーマンの肩を借りて自陣に戻っている。
かつて堀口とUFC王座をかけて戦ったデメトリアス・ジョンソンは、本誌の取材に、「彼のキャリア初期の強みは、非常に速く、距離を保ちながら相手の動きを察知し、ブリッツ(稲妻)のようにただひたすら相手を打ちのめすことだった。しかし今、彼の強みは対戦相手に応じて戦術を適応できる点にあると思う。それは主にコーチングの成果だろう。朝倉海、セルジオ・ペティスにもしっかりリベンジした。彼は試合への適応力とコーチの指示を聞くのが非常に上手いんだ。歳を重ねて、より多くの試合を経験し、賢くなった」と、MMAの適応力の高さを指摘する。
そして、堀口と2度戦い、再戦では堀口のグラップリングに完封されたペティスも、「出入りの動き、カーフキック、グラウンド、堀口にはフルセットのスキルがある。彼は常に学び続けていて、新しい勝ち方やチャンピオンになる方法を探している。彼ならUFCで本当にチャンピオンになれるスキルとマインドを持っている」と、9年前にオクタゴンに挑戦したときと比べて、道具箱の武器が増え、MMAとして融合していると高く評価している。
堀口恭司 @kyoji1012 9年ぶりのUFCで進化した強さを発揮👏
— UFC Japan (@ufc_jp) November 22, 2025
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空手の間合いのコントロールから出入りの打撃、上下の蹴り、近い距離でのボクシング。組んでも相手にいいポジションを譲らず、上になればグラウンドからも強さを見せた。まさにチームの戦略を実行できるスキルをどの局面でも備えていた。
堀口のカーフキックを受け、3Rにたまらず前足をスイッチしたウランベコフに、堀口は左でインローも蹴って左フックを打ち込むと、ダゲスタンレスラーは自らグラウンドで下になった。
ここでも堀口はしっかりハーフガードでトップをキープしてパンチとヒジで削ると、亀になって立ち上がるウランベコフに、右ミドルから右ストレートを打ち込み、フライ級ランカーをマットに沈めると、最後はバックを奪い、リアネイキドチョークで絞めて、「He is out(彼は落ちた)」とコール。レフェリーが力の抜けたウランベコフの右手を確認し、間に入った。失神したウランベコフに気付かせるように腹をポンポンと叩く堀口。
勝ち星を手に、チームメイトであり現フライ級王者のアレシャンドレ・パントージャを指名する堀口恭司😎🎤 @kyoji1012#UFCQatar pic.twitter.com/9RmmGEASf2
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ケージ内でマイケル・ビスピンのインタビューを受けた堀口は、英語で「ほんとうにいい気分だよ。UFCにカムバックできたから、これが俺の夢だった。次? もちろん俺はUFCのベルトを狙う。どこだ? パントージャ! 彼は俺のチームメイトだ。でも関係ない、お前のケツを叩き潰すぜ。オーッ!」と咆哮。
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ビスピンから「チームメイト同士が対戦したいと思うのは非常に珍しいことだが?」と問われると、「もちろんパントージャをリスペクトしている。ただベルトが欲しいだけだ。気にしないよ、分かってるだろ。ファイトはファイト、ビジネスなんだ」と語り、パントージャのコーチでもあるパルンピーニャから笑顔で肩を小突かれ「彼は“敵のボス”」と紹介。大会後には、パフォーマンス・オブ・ザ・ナイトの5万ドル(約785万円)を獲得している。



