柔術
インタビュー

【柔術】パーキンソン病発症から4年、ヒクソン・グレイシーのいま「諦めることは選択肢にない」=福岡・久留米に『R柔術』オープン

2025/08/05 15:08
【柔術】パーキンソン病発症から4年、ヒクソン・グレイシーのいま「諦めることは選択肢にない」=福岡・久留米に『R柔術』オープン

(C)R柔術/Yamada Shigetaka

 2025年8月1日、福岡県久留米市にヒクソン・グレイシー公認の「R柔術」をオープンしたヒクソン・グレイシーの黒帯・山田重孝氏が、パーキンソン病と闘いながら柔術を深めるヒクソンの近況と、その教えについて語った。

「R柔術」のRはヒクソン自身がサインした「Rickson Gracie」の頭文字から来ている。1997年10月の『PRIDE.1』から、ヒクソンと交流を持つ山田代表は、米国マイアミのヒクソンのプライベート道場に髙田延彦らとともに足繁く通い、その奥義を学んできた。高田は昨年、ヒクソンから茶帯を授かっている

 山田代表は、「私はヒクソン先生の黒帯で、ヒクソン先生に教わったことを忠実に広めていく事を、ヒクソン先生からも言われています。その教えを次の世代の方たちにもに教えていきたいと思っています」と、語る。

『柔術と護身術とバーリトゥードは繋がっている』

 その教えは、バーリトゥード=何でもありの戦いのなかにおけるセルフディフェンスが想定されたものだという。

「ヒクソン先生の柔術は常に進化をしていて今でも流行りの技なども全て知ってます。その上で、柔術の本質の部分を追求している。ヒクソン先生の柔術はとても深みがあり、底がない。常にヒクソン先生からは、『柔術と護身術とバーリトゥードは繋がっている』と教えられて来ました。『R柔術』では護身に力を入れていくつもりです。一般の方も大事に教え、同時にキッズたちも育てていき、競技柔術でも将来的には世界に出していきたいと思っています」

 ヒクソンに直に触れて感じる、その奥義とはどのようなものか。

 山田代表は、「私のみならず現役黒帯柔術家が『マウントポジションから攻撃しろ』と言われて本気でチョークを狙いに行っても極められない。好きなポジションを取らせてもらっても何もできすにスイープされてしまう。トップでもボトムでも。手や足の置き方、頭や首の角度が重要で、ブリッジも止めることができないんです。

 たとえば、立ち方、重心の置き方、下からの蹴り上げのときのヒザの曲げ方──当初は練習が終わった後、何もスパーリングをしていないのにクタクタになりました」と、そのディテールを語る。

 その動きは呼吸に連動している。それをヒクソンは「息の置き方」と呼んだ。

「どこに息をためて、どう排出していくか。動いてる最中でも疲れないように、風船を膨らませながら指導を受けました」

 ヒクソンは自身の著書で、「私の柔術を学ぶには、目には見えない感覚を磨く必要がある。だから私は自分の実践するものを“インビジブル柔術”と呼んでいる。ベースやコネクションを感覚的に理解できて初めて、生徒は柔術を理解できるのだと思う。この触覚の知識、その基本的な習熟がなければ、世界のあらゆる技術を学んだところで柔術の本質はわからない。

 たとえばウパ(首のブリッジによるエスケープ)を誤ったやり方で何十年かやってきた生徒がたくさんいる。どこが間違っているのかを教え、いくつか小さな修正をしてあげると、彼らは新しい武器を手に入れ、私と出会う前にはなかった力を手に帰っていく。教える側にとっては実に喜ばしいことだ。

 柔術は非常にアスレチックなスポーツになりつつある。私の考えでは、柔術の核心は護身術であり、競技ではない。競技は競い合うことが好きな人にとっては素晴らしいことだが、誰でも生き残る方法を学びたいはずだ。“攻撃者から身を守る方法、愛する人を守る方法”をね」と記している。

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