『死のステータス』を持つこと
「死ぬには良い日だ」──と戦いへと向かってきたヒクソン。しかし、それは死に向かうためのものではなく、死を思い、諦めずに生きるための決意の言葉だった。
ヒクソンは、「病気の安定化だけでなく、改善に焦点を当てている。それが私の目標だ」という。
「パーキンソン病を克服すること。可能かどうか、達成できるかどうかは分からないが、私の心には別の敵がいる。正直に、真剣に取り組む必要がある。身体は衰えていくが、私の中の精神性が成長している。私のなかのポジティブなマインドセットを維持する能力が、メンタルヘルスが成長している。だから、たとえ肉体的に分断されていても、人間として進化し続けていると感じている。その精神性は私たち全員が自分自身とつながるために必要なものだ。希望がなければ、視覚化がなければ、信仰がなければ、精神的に良い戦略がなければ、それはほぼ不可能だろう。
だから、武術を人生に取り入れ、武道家として日常を生きるためのツールとして活用している。私の“対戦相手”は、私から学び、成長するのを待っているようなものだ。そのため、私は非常に前向きで、最善を尽くすために必要なことを全て行い、それでも前向きで、他者への支援を続けるようにしている」と、柔術を通して、よりよく生きるためのマインドを作っていると語る。
そのマインドセットのために、ヒクソンは「死を使命として受け入れる」こと。「人生における自分の“戦略”を理解し、自分の人生を自らコントロールすることが重要」だという。
「諦めない気持ちを維持するために、使命として『死のステータス』を持つ必要がある。これはスポーツのような活動では普通ではないが、ネイビーシールズやSWATチーム、消防士のように、110階建てのビルに子供を救うために駆け込み、全てが崩れ去り、死んでしまうような状況では普通だ。あるレベルの人々は、死を使命として受け入れる。
私は自分をスポットライトとして位置付けない。実際、私は家族を代表するか、自分の命を捧げるか、どちらかだ。なぜなら、私にとってそれは単なるスポーツを超えたものだから。それが私の子供を養う方法であり、私が世界の中で自分を見つける方法だ。だから、彼らを代表するために、持てる全てを捧げなければならない。それが私にとって、人生に精神性を組み込み、たとえ勝てなくても挑戦する方が良いと受け入れる転機だった。
たとえば、冷たい水のなかで呼吸をコントロールする。自分がコントロールできていると感じた瞬間、すでに冷たい水から出る準備ができている。長く滞在したくないが、恐怖が冷静さを保つ能力や正しい呼吸を妨げないよう確認するためだった。だから、苦痛の瞬間への準備を求めていた。その瞬間、精神的な要素を受け入れ、悟りを探していた。
瞑想的な心の状態。通常のスポーツでは、そのような状態は訪れない。だから、私は一生をかけて武道を訓練してきた。これらのツールは、誰もが最高の自分を目指そうとする際に活用できると思う。必ずしも格闘家である必要はない。人生における自分の戦略を理解し始めることが重要だ。戦略を立てないなら、良い武道家ではないだろう。感情だけで行動してはならないことを理解する必要がある。戦略を立てることは平和であること。視覚化すること。
基本的には、戦いに勝つために命を懸けることになる。私はすべての状況、すべての視覚化、すべての可能性を受け入れる。現実世界で何が起こっても、私は既にその経験がある。私は既にそうしている。
チャンピオンでなくても、車を買う方法や人間関係を築く方法、病気と戦う方法、このことやあのことをどうすべきか戦略を立てることはできる。しかし、そうしなければ、自分自身を他人の手に委ねることになる。だから、私はそれらの要素、それらの精神的なツールを、人生だけでなくスポーツキャリア、柔術でも活用し始めたんだ。柔術を必要としている人たちのために、もっと柔術を変革していきたい」
最後に、メッセージとしてヒクソンは、「世界があなたに対して逆境を向けているわけじゃない。みんな問題を抱えているし、みんな死ぬんだ。だから諦めるのは選択肢じゃない。私は柔術を通して自分の人生をコントロールし続ける。幸せでいるし、文句を言うより感謝する方がずっと多いんだ」と大きな笑顔を見せた。
ヒクソンがいつか再び来日したら、R柔術で指導する姿を見ることができるだろう。
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