2025年8月2日(日本時間3日)、米国ネバダ州ラスベガスのUFC APEXで開催される『UFCファイトナイト』のフライ級(5分5R)で、平良達郎(THE BLACK BELT JAPAN)がアミル・アルバジ(イラク)と対戦することが、平良所属のイリディアム・スポーツ・エージェンシーから発表された。
▼フライ級 5分5Rアミル・アルバジ(イラク)17勝2敗(UFC5勝1敗)3位平良達郎(日本)16勝1敗(UFC6勝1敗)5位
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平良はフライ級5位。2021年7月に福田龍彌を1R 三角絞めで極めて修斗世界フライ級王座につくと、VTJでの国際戦を経て、2022年5月からUFCに参戦。カルロス・カンデラリオ、CJ・ベルガラ、ヘスス・アギラー、エドガー・チャイレス、カルロス・ヘルナンデスを下し、2024年6月に当時5位だったアレックス・ペレスをおたつロックで2R TKO。
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UFC6連勝で、2024年10月に1位のブランドン・ロイバルと対戦。5R、スプリット判定1-2(48-47、47-48×2)の僅差で敗れ、キャリア初黒星を喫した。MMA16勝1敗の25歳。
難民キャンプで8年半、ギャング入りから柔術に出逢う
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対するアルバジは、フライ級3位のグラップラー。MMA17勝(5KO・9一本)2敗と、高いフィニュシュ力を持つ。
イラクで生まれ、8歳の時にシリアの難民キャンプにたどり着き、その後、スウェーデンでも難民キャンプ入り。8年半に渡る難民キャンプでの生活で移民としていじめにも遭うなか、UFCをテレビで見て、13歳でストックホルムで柔術を始めた。
PANCRASEでも活躍したオマー・ブイシェと練習するハンス・エルソンからMMA柔術を学び、15歳でポルトガルでPRIDEルールでMMAデビュー。いまも日本での試合を望む、PRIDEファンだ。
柔術紫帯で、スウェーデン国内、スカンジナビア、欧州、アジア大会等で優勝。世界レスリング連合(UWW)主催の2012年のUWWグラップリング世界選手権-62kg級でギ&ノーギで優勝も果たしている。
UFCでは5勝2敗。ポルトガルローカル大会から、英国UCMMAでバンタム級で王座につくと、2017年にはBellatorロンドン大会に連続参戦。2019年に中東の『BRAVE CF 23』でホセ・トーレスに判定負けで、初黒星を喫した(ちなみにそのトーレスは2024年12月のRIZINで神龍誠にスプリット判定で勝利している)。
BRAVE CFでのキムラロックでの一本勝ちで再起を遂げると、2020年7月、コロナ禍で行われていたUFC アブダビ大会で代役出場。マルコム・ゴードンに三角絞めで一本勝ちでオクタゴンデビューを飾った。
その後、ジャルガス・ジュマグロフに判定勝ちし、フランシスコ・フィゲイレードにリアネイキドチョークで一本勝ち、アレッサンドロ・コスタを3R 右アッパーでダウンを奪ってのパウンドでTKOに下すと、2023年6月には、カイ・カラ・フランスと対戦。
3Rに強いボディロックテイクダウンから4の字でリアネイキドチョークでニアフィニッシュの場面を作るなどスプリット判定の接戦を制し、オクタゴン5連勝に。
2024年2月にブランドン・モレノ戦が組まれたが、首を負傷し欠場。2024年11月に1年5カ月ぶりとなる復帰戦でモレノと対戦し、1Rは立ち合えたものの、2R以降をスタンドでドミネートされて、ほぼフルマークの50-45×2、49-46の判定0-3でキャリア2つ目の黒星を喫している。31歳。
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危険な右アッパー、柔術的なパスガードからの極めも
身長165cm、リーチ173cmで、身長で平良が5cm、リーチで4㎝上回るが、大きな背中から放たれる右ストレートに加え、自身も得意技という右アッパーはコスタのみならず、カラフランスにも効かせており、破壊力を持つ。
2敗を紐解くと、6年前の初黒星のトーレス戦では、スタンドで圧力をかけ続けたトーレスがアルバジのシングルレッグを切ってトップ。引き込みギロチンにも作らせず、シングルからのバックテイクにも立ったままアルバジを背負い、極めさせなかった。後半にはトーレスがアルバジのシングルを切ってオーバーフックでの払い腰でサイドも奪っての判定勝ち。
1年3カ月前のモレノ戦では、モレノが前傾姿勢でじりじりと圧力をかけての左の蹴り、アルバジのダブルレッグテイクダウンにも背中を譲らず立ち上がり、左ジャブ、左の蹴りでアルバジを中に入らせず。最終ラウンドには、じれて組んだアルバジをボディロックで崩して立ち際にヒザ、すぐに左フックを当ててグラつかせ連打と決定的な場面を作っている。
また、組み技・寝技では、下でのダブル、シングルレッグでもテイクダウンを奪い、柔術家らしく片手で脇差し、もう一方で枕に押さえ込んでのパスガードが強い。フィゲイレードを極めたRNC、マルコム・ゴードンの正対に合わせた三角絞めなど、柔術的な攻防を手順を踏んでしてくる。19戦のキャリアで9つの一本勝ちは、5つのリアネイキドチョーク、そして3つのキムラロックも極めており、パスからサイドでは頭を挟んでのパワフルなキムラにも注意が必要だ。
平良にとっては、スタンドにおいては前に出させると厄介で、得意の右アッパー、組み際のヒザにも警戒しながらジャブ&ローで圧力をかけたいところ。組み技でも平良のレスリング、柔術が試されることになり、トップを奪っての強いパウンド、バックを譲らず、平良がトップ、バックで上回るか。
アルバジは、現在はヘンリー・セフードがいるアリゾナ州スコッツデールのFIGHT READYで練習。ラスベガスのエクストリーム・クートゥアーでは、2年前に同ジムで出稽古した平良とも練習を行っている。
キャリアで一本負けが無いもの同士のフライ級3位と5位の8月2日の戦いは、モレノ戦から修正したアルバジ、ロイバル戦の敗戦を経て、課題に取り組んできた平良、両者の“進化”が問われるランキング戦となる。
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パントージャvsカラフランス、ロイバルvsケイプ、堀口vsウランベコフ──熾烈なコンテンダー争いに生き残れるか
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なお、同級では、6月22日のUFCアゼルバイジャン大会でUFC復帰の堀口恭司が10位のタギル・ウランベコフと対戦。翌週の6月28日(日本時間29日)の『UFC 317: Topuria vs. Oliveira』で王者パントージャvs.挑戦者で4位のカラ・フランスのフライ級王座戦が決定済み。また、同大会では6位のマネル・ケイプ(ポルトガル)が、1位のブランドン・ロイバル(米国)と対戦することも発表されている。
再び動き始めたフライ級上位戦線。平良とアルバジの対戦は、ロイバルvs.ケイプに次ぐ、コンテンダー争いとなりそうだ。
UFCフライ級ランキングと今後の試合(2025年5月16日付)
王者 アレシャンドリ・パントージャ(ロイバルに判定勝ち。12.7 朝倉海に2R 一本勝ち、6.28 カラフランスと対戦)1 ブランドン・ ロイバル(10.12 平良にスプリット判定勝ち、6.28 ケイプと対戦)2 ブランドン・ モレノ(11.2 アルバジに判定勝ち、3.29 エルセグに判定勝ち)3 アミル・ アルバジ(11.2 モレノに判定負け、8.2 平良と対戦)4 カイ・カラ・フランス(8.17 エルセグに1R TKO勝ち、6.28 パントージャに挑戦)5 平良達郎(10.12 ロイバルにスプリット判定負け、8.2 アルバジと対戦)6 マネル・ケイプ(7.27 モカエフに判定負け後、12.14 シウバに3R TKO勝ち、3.1 アルマバイエフに3R TKO勝ち、6.28 ロイバルと対戦)7 アレックス・ ペレス(6.15 平良に2R TKO負け)8 アスー・ アルマバイエフ(10.19 マテウス・ニコラウに判定勝ち、3.1 ケイプにTKO負け、7.26 テミロフと対戦)9 スティーブ・エルセグ(8.17 カラフランスに1R TKO負け、3.29 モレノに判定負け)10 タギル・ウランベコフ(2023.12.9 ダーデンにRNCで一本勝ち、1.18 クレイトン・カーパンターに判定勝ち、6.21 堀口恭司と対戦)11 ティム・エリオット(2023.12.9 スムダルジに肩固めで一本勝ち)12 ブルーノ・シウバ(7.20 ダーデンに2R TKO勝ち、12.14 ケイプに3R TKO負け、3.8→6.7 ヴァンと対戦)13 ラマザン・テミロフ(3.1 ジョンソンに判定勝ち、7.26 アルマバイエフと対戦)14 ジョシュア・ヴァン(12.7 ダーデンに判定勝ち、3.8 鶴屋怜に判定勝ち、6. 7 シウバと対戦)15 朝倉海(12.7 パントージャに2R RNC一本負け)↓ チャールズ・ジョンソン(10.19 スムダルジに判定勝ち、3.1 テミロフに判定負け)※ランク外に