（C）Zuffa LLC/UFC
2025年3月8日（日本時間9日午前8時半～）、米国ラスベガスのT-モバイル・アリーナにて『UFC 313: Pereira vs. Ankalaev』（U-NEXT配信）が開催されている。
メインイベントは「UFC世界ライトヘビー級選手権試合」（5分5R）で、王者アレックス・ペレイラ（ブラジル）と、挑戦者マゴメド・アンカラエフ（ロシア）が対戦。コメインではライト級でジャスティン・ゲイジー（米国）とラファエル・フィジエフ（アゼルバイジャン）が激突。
また、プレリムでは、日本の鶴屋怜（THE BLACKBELT JAPAN）が、UFCフライ級2連勝中のジョシュア・ヴァン（ミャンマー）と対戦する。ここではメインとコメインの会見の言葉を紹介したい。
▼ライト級 5分3R
ジャスティン・ゲイジー（米国）25勝5敗（UFC8勝5敗）3位
ラファエル・フィジエフ（アゼルバイジャン）12勝3敗（UFC6勝3敗）11位
ゲイジー「もしフィジエフが同じことをしたら？ 中央に走り出るよ」
──ゲイジー選手は、当初のダン・フッカーから対戦相手の変更など色々とバタバタした印象がありますが、「このイベントで試合が実現しないかもしれない」という不安はあったのでしょうか？
「正直ちょっとだけ不安はあったよ。でも、心の中では“絶対に『UFC313』で戦うんだ”って信じていた。俺は試合のことだけ考えて、あとはコーチやマネージャーに任せていたんだ。“対戦相手を見つけてくれるならそれでいい”ってね」
──マックス・ホロウェイ（ライト級5位）戦の敗北から復帰する大切な試合で、急な対戦相手の変更をリスク承知で受けた形になります。もともとの対戦相手を待つという選択は考えなかったのでしょうか？
「もしリスクを考え出したら、もう引退したほうがいいと思うんだよ。このスポーツはリスクだらけだし、それこそが俺が求めてる“強烈さ”なんだ。早くケージに戻ってあの感覚を味わいたかったから、多少のリスクは気にしなかった」
──最近、“WSOF時代の荒々しい自分”に少し戻ろうとしている、と話して、話題になっていますね。
「実は今日、初めてマックスとの試合も見返してみたんだ。悪くなかったと思ったよ。マックスが本当に素晴らしくて、あの夜は奴が完璧だったってだけさ。でも仮に“昔の俺”に戻ったとしても、今の俺はさらにスキルが洗練されている。荒々しさと正確さが両立できるなら、相当危険な組み合わせになるはずだ」
──どうしてマックス・ホロウェイ（ライト級5位）戦を見返したのでしょうか？
「そろそろ見直す時期かなって思ったんだだけだ……まあ、実を言うと、ラスト10秒のシーンは飛ばしたけどね。あそこは何度も見たから十分だ」
──2023年3月のラファエル・フィジエフとの初戦も見直しましたか？ 再戦に向けて得られたものはありますか？
「対策のヒントを探して見るというより、あの試合当時のメンタルになりたくて見たんだ。もしあの時の展開を前提に動いちゃって、今回180度違う状況になったら混乱するだろ？ だからあまり深く情報収集はしなかったよ。ただ、フィジエフはムエタイの世界的なストライカーで、すごく強い。前回俺が成功したのは、彼のキックに対してパンチを合わせた場面だった。そこは今回も狙いどころになるかもしれない」
──この試合に勝利すれば、イスラム・マハチェフ（ライト級王者）へのタイトル挑戦が見えてくると思いますか？
「ファイターとしては“そうだといいな”と思うよ。でも先にやるべきは、まずこの試合に勝つことだ。それが一番大事。俺は常にエキサイティングな試合をしてきたし、UFCでも一貫して結果を出してるから、勝ち方次第では当然候補にはなるだろうね」
──あなたはこれまでもルイス・パロミーノやダスティン・ポイエー（ライト級4位）とリマッチを経験しています。勝った後のリマッチと、負けた後のリマッチではアプローチが違うものですか？
「もし負けた直後にリマッチするなら違うかもしれないけど、俺はマックス戦を経て色々と考え直す時間があったからね。今回も“危険なスポーツだ”って改めて実感しつつ、長年コーチたちが俺に叩き込んできたことを信じるだけ。前の試合を見返すと、あとちょっとで仕留められそうな場面もあったんだよ。だから信念を貫く。それだけさ」
──ダン・フッカー（ライト級6位）が最初に「俺とジャスティンがやったら勝っても負けても二人とも病院行きだろう」と言っていましたが、フィジエフ選手も「ラスベガスの病院にはもう行きたくないけど、俺たちの戦いならそうなるかも」と言っていました。あなたも同じ気持ちですか？
「理想を言えば、開始10秒でKOして病院なんか行きたくないさ（笑）。でも、俺は“戦争をしに来た”って思ってるから、どんな展開になっても受け止めるよ。ただ、試合が終わったら生きて自分の足で歩いて、翌日に父さんや兄弟とゴルフしたいんだ」
──他のファイターが「俺はヘビー級のジャスティン・ゲイジーだ」「フライ級のジャスティン・ゲイジーだ」など、あなたの名前を“アグレッシブな闘いぶりの代名詞”として使うことがありますが、それについてはどう感じますか？
「同業者に認められるのは嬉しいし誇りに思う。でも、あれはあれで複雑だよ。“あの狂気のように見えるスタイルの裏には、実は緻密な準備と長い年月があるんだぞ”って言いたい部分もある。ただ、全力を尽くす姿勢に共感してくれてるなら、それは素直に嬉しいね」
──ファンから“格闘技を始めたいけど怖い”とか“パンチをもらうのが怖い”といった質問がたくさん届いたそうですね。そんな悩みを打ち明けるファンが多いというのは、ご自身でも意外でしたか？
「そうだな、俺にはもう当たり前の感覚になっちゃってるからね。俺は基本的に“自分でコントロールできることだけ気にすればいい”ってスタンスなんだ。感情や恐怖心だって、自分でどう扱うかを決められると思ってる。あとは単純に俺は競うのが好きだし、このスポーツは世界で一番エキサイティングだって思ってるよ」
──先日、あなたがマックス・ホロウェイ戦でKOされた直後の映像がSNS上で再び話題になっていました。
「俺はあの時、体が勝手に起き上がろうとしてた。つまり“逃げる”じゃなく“戦う”のスイッチが常に入ってるんだな。そういう姿をファンが見て、何を感じるかは人それぞれだけど、俺はそれを見て、“これがどれだけ危険なスポーツか”って改めて思い出したよ」
──イリア・トプリアがフェザー級のベルトを返上してライト級に上がるのでは、という話があります。彼がライト級で通用すると思いますか？
「奴は強いし、自信満々だよね。ホロウェイやボルカノフスキー（フェザー級1位）を倒した実績があれば、そりゃあ自信を持って上がってくるのも当然だろう。ライト級はさらに面白くなると思うよ」
──もしあなたがフィジエフを仕留めたとして、その後イリア・トプリアとイスラム・マハチェフ（ライト級王者）との対戦が噂されることについてはどう思いますか？
「俺はそこまで考えてない。コントロールできないことを気にしても仕方ないしね」
──ダン・フッカー（ライト級6位）が抜けた時、ファンが「ジャスティン・ゲイジー（ライト級3位）の試合がなくなるのは絶対嫌だ」と慌てていました。長年ファイトを続けてきて、そんなにファンに愛されていることを実感するのはどんな気持ちですか？
「最高だね。俺自身もずっとUFCのファンで、UFCのイベントを観に行くのが大好きなんだ。みんな俺の試合に興奮してくれて、金を払って観たいって言ってくれる。ファンや仲間からリスペクトを得られるのは本当に嬉しいことだよ。俺は常に全力で戦ってきたから、それが伝わってるなら何よりだ」
──ゴルフも大好きだと公言していますが、もし“夢のセレブリティ・ゴルフ大会”を開くなら、誰と一緒にラウンドを回りたいですか？
「誰でも大歓迎だよ。ダニエル・コーミエーとかも呼びたいけど、同じチームじゃなくて別のチームにいてほしいな（笑）。世界中のトップアスリートを呼んだら面白そうだよね」
──数日前のSNSで「剣で生き、剣で死ぬ」という言葉を使っていましたね。多くのファンは、まさにそれがあなたの魅力であり、ケージに足を踏み入れるたびに体現している姿勢だと思っているようです。あなた自身、「試合数はもうそんなに多くは残っていないかもしれない」と言っていますが、グローブを最初にはめた頃、今のように“ファンから愛される激闘型ライト級ファイター”になることをイメージしていたのでしょうか？
「いや、正直言って、1試合1試合をやるだけで、まさかこんな風になるなんて想像してなかったんだ。インタビューを受ける立場になるとも思わなかったし、俺と同じ言語を話さない世界中の人々が、俺の姿勢に共感してくれるとも思ってなかった。そういう意味では本当に特別だよ。大学ではヒューマンサービスを専攻していて、社会福祉的な仕事をしようと思ってたんだ。人々がより良く生きられるように手助けするのが好きでさ。
『剣で生き、剣で死ぬ』ってのは俺の全てに通じる考え方で、試合だけじゃなく、普段の人との接し方にも通じてると思う。世界を変えたいなら、まずは自分の近しいところから、って感じでね。不思議なもんで、暴力性の高いスポーツを通じて人をインスパイアできるってのは、俺自身、すごくクレイジーだと思うよ。でも、これはあくまでスポーツだからな」
──もちろんどんなファイターも“王者”を目指すわけですが、あなたにとって、他に「これはやり遂げたい」という目標はありますか？
「ボーナス記録ならけっこう獲得していると思う。デビューから7試合で9回のボーナスを取ったんだが、あれは誰も抜けないんじゃないかな（笑）。そういう部分では既に満足してるんだけど、もし今回勝って、そのままイスラム・マハチェフ（ライト級王者）を倒せたら、それは俺がここで築いてきた“レガシー”の集大成になると思う。最高のストーリーになるだろうし、それを狙ってるよ」
──先ほど言っていたマックス・ホロウェイ戦の映像を今になって見返すのは、難しい決断でしたか？
「いや、ずっと“あの試合は自分が酷い出来だった”って思い込んでたけど、実際に見たらそうでもなかったんだ。俺もかなり良いパフォーマンスをしていたし、相手が圧倒的に良かっただけだな。何センチ、何秒の差で試合は転がる。ほんのわずかで流れが変わる可能性があった。本当に紙一重だよ」
──直近のUFCメインイベントでは、アイポークが試合の行方に大きく影響したケースが続きました。あなたとラファエル・フィジエフの前回対戦でも、あなたが2Rに彼の目を突いてしまったと言われています。アイポーク問題についてはどうお考えでしょうか？ どんな対策が有効だと思いますか？
「難しいところだな。意図的にアイポークをやるなんてほぼ不可能だろ。あの小さい眼球をわざわざ狙って突くなんて、パンチを顎に当てるより難しい話だからさ。距離を測ったりガードを上げたりする瞬間に偶然入ってしまうんだ。マックスとの試合でも俺は2回やられたけど、それを負けた理由にしたことはない。どうしても起こりうることなんだよ。グローブの形状を変えてみたりもしてるけど、オープンフィンガーである以上、完全に防ぐのは難しい。故意にファウルを繰り返すなら、もちろん即減点でいいけど、アイポークに関しては仕方ない部分があると思うね」
──先日、フィジエフも「なぜあなたがこの試合を受けたのか理解できない」と言っていました。昨日エレベーターで会ったとか？ どんな話をしたのですか？ また、対戦に迷いはなかったですか？
「エレベーターで会って、『ありがとう』って声をかけられた。『こっちこそ感謝だ』って返したよ。俺はこの試合を本気で探してたんだ。マックスにKOされてから“すぐにまた戻ってやり返したい”って気持ちが強かったからな。最初はアルマン・ツァルキャン（ライト級1位）やチャールズ・オリベイラ（ライト級2位）にも声をかけたけど、もし俺が彼らの立場でも受けないだろうね。で、コナー（・マクレガー）の名前も出たが、結局成立しなかった。そうなると“試合しない”って選択肢もあったんだけど、そりゃ納得できないだろ？ だからフィジエフが受けてくれて本当にありがたいよ」
──マックスとの試合の終盤では、彼が指を下に向けて“ここで殴り合おう”と挑んできました。フィジエフにも同じことをされたら、あなたは応じますか？
「俺を見てきたことがあるなら、絶対応じるって分かるだろ（笑）。マックスが指を下に向けた時も“やるぞ”って感じで真ん中まで走り込んだよ。もしフィジエフが同じことをするなら、俺は喜んで受けるね」
──フィジエフはブックメーカーのオッズで自分が有利になっていると驚いていました。そういう下馬評は気にしますか？
「俺はコントロールできないことは気にしない。むしろアンダードッグが好きなんだ。アンダードッグだと燃えるっていうか、なめられた分だけ“絶対見返してやる”って気持ちが強くなるんだよ。俺みたいな奴らは大抵、しつこいからさ。例えば解説席がどっちに肩入れしようと、自分を支持していないなら、こっちは“敵”として戦うだけだよ。こっちが受け入れるか排除するか、その二択だからね」
──先日、「最近の試合は少し“安全策”を取りすぎていたかもしれない」とコメントされていました。普通ならあなたに“安全策”なんて言葉は結び付かないですが、それはどういう感覚でしょうか？
「そりゃ、自分ではそう思ってたってだけで、周りから見れば全然“安全策”じゃないって言うかもな。けど俺は、あの危険な空間が大好きなんだ。ジムでのスパーは毎週火曜と金曜がメインなんだけど、それが待ち遠しくてさ。ケージに入る時は、まず“本当に危険だ”って認識しないとな。そうすれば全身が特別なモードに入るんだ。そこで起こる動きはもう直感と本能に任せるしかない。そこまでをトレーニングしてきたわけだから、あとは自分を信じて飛び込むだけだよ」
