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2025年3月8日(日本時間9日午前8時半~)、米国ラスベガスのT-モバイル・アリーナにて『UFC 313: Pereira vs. Ankalaev』(U-NEXT配信)が開催される。
メインイベントで「UFC世界ライトヘビー級選手権試合」(5分5R)で、王者アレックス・ペレイラ(ブラジル)と、挑戦者マゴメド・アンカラエフ(ロシア)が対戦する同大会。
プレリムでは、UFCフライ級2連勝中のジョシュア・ヴァン(ミャンマー)が、日本の鶴屋怜(THE BLACKBELT JAPAN)と対戦する。
▼フライ級 5分3R
ジョシュア・ヴァン(ミャンマー/米国)12勝2敗(UFC5勝1敗)
鶴屋 怜(日本)10勝0敗(UFC1勝0敗)
鶴屋は、2023年の『ROAD TO UFC』で優勝し、2024年6月のカルロス・ヘルナンデス戦でUFCデビュー、判定3-0で勝利。UFCフライ級最年少の22歳。
当初、2月9日の『UFC 312』豪州大会で地元のスチュワート・ニコルと対戦予定だったが、ニコルが負傷欠場。そして、3月8日にジョシュア・ヴァンと対戦予定だった当時13位のブルーノ・シウバが欠場。当時15位のヴァンの相手として、無敗でランキング外の鶴屋との対戦が決定した(※3月6日時点で、フライ級12位がシウバ、13位がラマザン・テミロフ、14位が朝倉海、15位がチャールズ・ジョンソン)。この試合に向け、才賀紀左衛門から打撃の指導を受け、スタンドを強化している。
フライ級では22歳の鶴屋に次いで2番目に若い23歳のヴァンは、少年時代に両親とともにミャンマーを離れ、マレーシアの難民キャンプを経て、2013年から米国テキサス州に移り住み、米国で格闘技を学んでいる。母国でクーデターが起きた2021年、アマチュアでFURY FC王者となり、プロ転向。現在UFC5勝1敗で、2連続判定勝ちだが、MMA12勝中6つのKO・TKO勝ちを誇るストライカーだ。
黒星は、3年前のFury FCでのキャリ3戦目のリアネイキドチョークでの一本負けと、2024年7月のUFCで強豪チャールズ・ジョンソンに3R 右アッパーカットでの逆転KO負けのみ。その後、エドガー・チャイレス、コディ・ダーデンに判定勝ち。チャイレス戦では自らテイクダウンを仕掛けてグラウンドでも戦えることを示し、朝倉海がパントージャに挑戦した12月のラスベガス大会では、当時14位のレスラー ダーデンを相手に、テイクダウンを防ぎ、2R以降を打撃で圧倒している。
マット・シュネルをニンジャチョークで極めているダーデンのテイクダウンからのバック狙いをケージ際で防ぎ、ヒジを落としてダメージを与えると、間合いを詰めてオーソから右カーフ、得意の左ボディ、左の前蹴り・ヒザを腹に効かせて削り勝ちしたヴァン。テイクダウンディフェンスや組み技が試合毎に強化されており、かつて一本負けした姿はそこにはない。
2024年6月に一度、平良達郎との試合も予定されていたヴァンは、ランク外となった今回、いかに無敗のプロスペクト鶴屋と対するか。
俺はミャンマーで暮らす人たちのために米国で戦ってるんだ
──今回のファイトキャンプは所属する4oz Fight Clubで行ったのですか? 鶴屋戦に備えて特別なことも?
「いつも通り4oz Fight Clubで練習してきて、特段やることも変えていないよ」
──12月の『UFC 310』での試合を会場で観戦していたのですが、勝利したヴァン選手、ミャンマー国旗柄のマウスガードをカメラに向かって見せていましたよね。今回はオクタゴンに自分の国旗を持ち込むことができると聞きましたが、それは本当ですか?
「そうそう。やっと堂々と国を代表することができるのはめちゃくちゃ嬉しい、ありがたいことだよ、特に今みたいな時期はミャンマーにとってすごい大切なことだと思ってるんだ」
──格闘技のバックボーンについて少し伺いたいのですが、資料等で知る限りミャンマーで生まれ育ち、アメリカに移住したのは幼少期の9歳か10歳くらいの頃ということで、アメリカに渡ってから格闘技を始めたそうですね。つまりミャンマーでは何も格闘技を経験していなかったのですか?
「そう、まったく何も。17歳とか18歳になるまでね」
──では、テキサスで最初に触れたのは何だったのですか? ボクシングとか、キックボクシング、あるいは柔術なのか……。
「完全にMMAから始めたんだ。最初は何をやってるのか全然わかってなくってコーチに言われたことをそのままやってた感じだった(笑)」
──オーソドックスからの左ハイ、左ボディなど、ヴァン選手はスタンドの攻撃が強い武器になっています。その技術は4oz Fight Clubに入ってから身につけたのですか? それともその前から得意だったとか?
「4oz Fight Clubに入る前に別のジムで練習してたんだけど、その頃のコーチがストライカーで、自分自身ストライカーになった。それに加えてボクシングジムにも通ってた。それで、MMAファイターになるためにグラウンドの技術も学ばなくてはいけないと思って、4 ozに辿りついたんだよ」
──2021年にFury FCのアマチュアチャンピオンになったとき、ミャンマーではクーデターがあったと思います。それを知った時はどんな気持ちだったのでしょうか。
「それは……、本当に辛かった。その渦中まだ家族がミャンマーにいたから。俺のアマチュア時代の2試合目の時から始まっていて、自分自身それよりも前からすでに国を代表する気持ちでいたし、もっと国のために祈ってほしいという声をあげるようにして、自分の国のために戦ってきた。俺が何者でもない頃から、そしてアマチュアだった時からやれる限り国を代表して、みんなに知らせたかったんだ。特に向こうでどんなことが起きているかを見てからは……なおさら、向こうで生活を送る人たちがいるという厳然たる事実、そしてその人たちのことを俺たちが気にかけているってことを伝えたかったんだよ。俺はこっちで彼らのために戦ってるんだっていうようなことを」
──なるほど、それでオクタゴンで国旗を掲げることを何度も問い合わせていたのですね。ヒューストンの4oz Fight Clubでプロのファイターたちと練習するようになってからまだわずか1年半ほどなのですよね? それがどんな影響を与えてくれていますか? MMAスキルが向上している実感として。
「いやあ、4oz Fight Clubは本当に厳しい場所で、マジで最高にキツい。最初に行った時めちゃくちゃボコボコにされて、打ちのめされて、さっさと立ち去ろうと思ったくらいなんだよ。まあ、そんな感じでね。だけど、コーチのダニエル・ピネダとジョセフ・フランクがすごく助けてくれたんだ、俺をもっと良いファイターにするためにあらゆることを授けてくれて。もう1年半以上、もうすぐ2年くらいになるけど、ここでたくさんのことを学んでいるし、一緒にやれてすごく感謝してる」
──今回の対戦相手の鶴屋怜選手はレスラーです。一方ヴァン選手は自分から圧力をかける打撃スタイルだと思うけど、前に出るとテイクダウンされるリスクがあるかもしれません。その対策はどう考えていますか?
「いつだって、すべてに備えてるんだ。前回の試合もレスラー相手だったけど、自分がそれに対して結果が出たことを見てくれていた通りだよ。だから、怜にも同じようにやってみて、果たしてどうなるかっていうところだね」
──たしかに、下がった形で組まれるより、前に出て組んできた相手を切る方がヴァン選手のペースになりそうです。ただ、ダーデン戦ではスロースターターかなとも思いました。ご自身ではどう感じています?
「あー、それは別にスロースタートってわけじゃなくて、要は相手を見極めてるっていうこと。初っ端からいきなり全力で行ったら、カウンターをもらったり捕まったり、よくないポジションになるかもしれない。だから相手をよく見てから戦うようにしてるんだよ。そういうことなんだ」
──なるほど。そしてグラウンドについて、あなたのプロフィールには柔術青帯とありました。その後、帯の色は変わりました? そして鶴屋選手のグラップリングスキルについてはどのような印象を持っていますか?
「彼のグラップリングの印象は、上手い。そう、青帯なんだけど4oz Fight Clubでは帯の色を変えるのが難しい。うちはギをやっていなくてノーギ柔術しかやらないから、帯の色を変えるのはかなり難しいんだ」
──帯色以上にMMAのなかの柔術スキルはあるということですね。今回の試合、テイクダウンされることなく、あるいはテイクダウンされてもスクランブルし、自分のストライキングで決める自信がありますか?
「もちろん、いつだって自信があるよ。試合にはいつも自信を持って臨んでる」
──現在フライ級ランキングは、ラマザン・テミロフが13位に上がって、ヴァン選手は今ランキング外になりました。それについてどう感じていますか? ただ単に、また勝って上がっていけばいいと?
「正直言うとランキングは気にしていたんだけど、今はそんなに重要じゃないなって思うよ。見てみると、結局ランキングなんて意味ないってことがわかるだろ? だから、次の試合に勝つことはもちろんだし、誰が相手であろうと勝つことが目標で、そうすればすぐにランキングに戻ることができる」
──現在は5位の平良達郎選手とかつて戦う予定もありましたが実現しませんでした。相手を分析した身として、平良vs.ロイバル戦についてはどんな感想を持ちましたか。
「あれはすごく良い試合だったよ。本当にワクワクしてる試合だった、実際、試合を車の中から見てたんだ。すごくいい試合だった。両者に拍手を送りたいようなものだった」
──ズバリこの試合はどんな展開に?
「フィニッシュするつもりだよ。2ラウンドで仕留めると思う」
──なぜ2ラウンドなのでしょうか?(笑)
「なんでか?(笑)それはわからないんだけど(笑)、UFCに来る前、試合が2ラウンドより先に行ったことがなかったんだ。多分、なんかそう、2ラウンドに何かがあるんだと思う!」
──最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。
「日本のファンのみんな応援ありがとう。アジアのファイターたちを、応援してほしい。俺はその一員として戦っているつもりだし、みんなアジア人だから、これからもお互いを支え合おうね!」