2025年2月8日(日本時間9日)豪州シドニーのクドス・バンク・アリーナにて『UFC 312: Du Plessis vs. Strickland 2』(U-NEXT配信/UFC Fight Pass配信)が開催され、メインの「UFC世界ミドル級選手権試合」(5分5R)では、王者ドリカス・デュ・プレシ(南アフリカ)に、同級1位のショーン・ストリックランド(米国)が挑戦。
L字ガードから左ジャブ、前蹴り、ときに右オーバーハンドで圧力をかけるストリックランドに対し、デュ・プレシは右カーフからスイッチして左の蹴りを上下に突き、スピニングバックエルボー、さらに右ストレートをヒット。この1発でストリックランドの鼻を折り、5Rに渡り手数を緩めず。フルマークに近い判定3-0(50-45×2, 49-46)で勝利。2024年1月以来の再戦を制し、ストリックランドを返り討ちにした。
デュ・プレシスのUFCミドル級9連勝は、クリス・ワイドマンと並び、アンダーソン・シウバ(13)、イズラエル・アデサニヤ(12)に次いで同階級史上3番目に長い連勝記録となっている。
対戦相手たちが「遅くて下手」と評してきたデュ・プレシの打撃だが、同時に「タイミングが掴めず、すごく強い」とも語られており、今大会では25分間ペースを変えず、手数・足数の種類も増やして攻め続け、気付けばイスラム・マカチェフ(15)、メラブ・ドバリシビリ(12)に次いで、モフサル・エヴロエフと並ぶ現役ファイター3番目に長い連勝記録をマークした。
デュ・プレシ「ハムザトを待つ価値がある、ペレイラとは──」
試合後、会見場に現れたデュ・プレシは、「ショーンの鼻を折った瞬間、彼を仕留められると思った。しかし、彼は鼻を折られても動じず、驚異的な粘り強さを見せて戦い続けた。多くのファイターはそこで崩れるが、彼は違った。彼のプロ意識と闘志に敬意を表したい。あれが本物のファイターだ」とショーンのタフさを称賛した。
それでもデュ・プレシは、終始冷静だったという。
「これまでも自分のスタイルは攻撃的だったが、今回は冷静さを保ち、技術的な戦いができた。自分がどれだけ成長できるかを証明できた」と、ストリックランドに比べ、前戦から明らかに武器を増やして、5Rでストリックランドを追い詰めていったことを語る。さらに「自分はまだまだ成長できる。これが世界チャンピオンとしての証明だ」と語り、今後の進化にも自信をのぞかせた。
激闘後、ストリックランドとは言葉をかわしている。
「試合前は『お前はブサイクだ』と冗談を言っていたけど、試合後に彼の顔を見て本当に驚いたよ。鼻が完全に曲がっていたから。ショーンから『(仕留めるために)チャレンジしたのか?』と聞かれて『ああ、チャレンジしたさ』と答えた。でも彼には大きな敬意を持っている」と2試合を戦った盟友に敬意を表した。
次の対戦相手を問われ、MMA14戦無敗のミドル級3位・ハムザト・チマエフの名前を挙げる。
「ミドル級のベルトに疑いを持たせないためにも、次はハムザトと戦いたい」というデュ・プレシは、「ハムザト・チマエフが次だ。もし彼が問題を抱えて試合が遅れるなら、それでも待つ価値がある」と、14勝中12フィニュシュの同じ1994年生まれのチェチェンの狼を指名した。
また、ストリックランド陣営につき、試合後、対戦を示唆した元UFC世界ミドル級王者にして、現UFC世界ライトヘビー級王者のアレックス・ペレイラについては、「個人的な感情はないが、彼を倒したい。自分のレガシーのためだ」とし、「自分は誰とでも戦う準備ができている。ペイパービューであろうとファイトナイトであろうと関係ない」と、戦うこと自体に前向きな姿勢を示している。
今回は、同じチームCIT PIでRIZIN参戦中のエンカジムーロ・ズールーが地元の屋外モニターに槍を持参して盟友の試合を応援する姿が話題となっているが、デュプレシは、母国・南アフリカでのUFC開催に強い意欲を持っている。
「南アフリカでUFCの試合をするのは夢の一つなんだ。南アフリカのスポーツ大臣とも話したんだけど、彼はUFCやF1の誘致にも尽力しており、本当に素晴らしい仕事をしている。ファイトナイトでも構わない。とにかく母国で戦いたい」と、UFC南アフリカ開催を熱望した。
イスラエル・アデサニヤをチョークで極め、難敵ストリックランドを下したことで2度目のミドル級王座防衛に成功した“DDP”は、最後に、「まず食べたいのはタコスだ。減量中はフィアンセが目の前でナチョスを食べていたけど、自分は耐えた。彼女もチョコレートを我慢してくれて感謝している」と笑顔で語っている。
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ストリックランド「同じ挫折をしているみんな、俺を見ろ。何百万人もの前で鼻を折ったばかりだ」
(C)stricklandmma
一方、デュ・プレシとの再戦で返り討ちにされたストリックランドは、折れた鼻を自身で戻した後、SNSで敗戦の心境を以下の通り、語っている。
「調子はどうだい? 俺たちはここには1、2回来たことがあるね。みんなのサポートには本当に感謝している。君たちは本当に素晴らしい。勝とうが負けようが、いつも笑ってくれる。俺はあなたたちに感謝するよ。
ドリカスにも本当に感謝している。脱帽だ。ものすごい戦いだった。鼻を6箇所、折った。俺の鼻は折れたが、幸いにも元通りになるのはとても簡単だった。あれは新しい経験だった。
早速だけど、ファンや友人、家族から『頭を上げて、大丈夫』というメッセージをたくさんもらっている。大丈夫。負けるのはつらいけど、人生で負けるのはみんな同じだ。仕事を失ったり、ガールフレンドに別れを告げられたり、穴に落ちてしまったりする人など、多くの人と話をするけど、俺は惨めさが大好きなんだ。苦しみが好きだ。惨めなとき、痛みを感じているとき、苦しんでいるとき、その瞬間が過ぎ去って、それが終わると、新しい日、より良い日がやってくる。人生は素晴らしいものだ。だから俺は感謝しているし、感謝することで頭を高く保つことができる。同じ経験をしているみんな、俺を見てほしい。何百万人もの人々の前で鼻を折ったばかりだ。本当に最悪で戦いに負けたのに、明日も起きて頭を上げて『おい、今日は新しい日だ。勇気を出して男にならなきゃ』と言わなければならない。だから、この状況を経験しているみんな俺を見ろ。クソ、君の一日が良くなることを願っているよ」