MMA
インタビュー

【UFC】組みも進化の王者ジャン・ウェイリー「Be water!」×レスリング世界3位・挑戦者 タティアナ・スアレス「ギロチンが大好きすぎて──」

2025/02/07 19:02

タティアナ・ スアレス「私のサブミッションの引き出しは多いわよ」

──ジ・アルティメット・ファイター(TUF)で優勝して以来、ずっと女子ストロー級のタイトルマッチを待ち望んでいたように感じます。いよいよ試合まで数日となりましたが、今の気持ちはいかがですか? 過去8年ずっと「あとどのくらいでタイトルにたどり着くのか?」と聞かれてきたわけですが、いよいよ実現しますね。

「そうね、ものすごくワクワクしているのよ。ここにいられて嬉しいわ。とにかく今は調子がいいし、また試合ができることが楽しみなのよ。試合するのが大好きなの。戦うことが大好きだし、この競技のすべてが好きなのよ。メディア対応はそれほど得意ってわけじゃないけど、それすらも好きになってきたの。だって、これも含めて大切な経験だし、ここにいられることがすごく嬉しいのよ。この先、もし自分が長生きできたら、ひ孫にまで話したいくらいの経験になると思うわ」

──ファンからは、あなたが長い間オクタゴンを離れてリハビリしている間も、「実質的な王者はタティアナだ」と言われたりしていました。そのことが気になることはありますか?

「そうね、私って『証明すること』にこだわりがあるタイプなのよ。ファンのみんなが私の実力を認めてくれたり、『すごいファイターだ』って思ってくれるのは嬉しいわ。でもやっぱり、そう言われると余計に『じゃあ本当にやってやろう』って思うの。その時が、今まさに来たという感じなのよ。何年か前に実現すると思っていたけど、いろいろあって今このタイミング。ここにいられることが本当に嬉しいわ。しかも、こんなに美しい国で戦えるなんて最高よ」

──首の怪我がなければ、今頃はもうタイトルを獲得していたと思いますか?

「ええ、絶対にそう思うわ。あの頃はヨアナ・イェンジェイチックが王者だったし、ローズ(※ナマユナス。女子フライ級6位)もその時期に絡んでたわよね。今はローズが階級を変えちゃったから、もう対戦は難しいかもしれないけど……。でもね、今度はヨアナを2回も破ったジャン・ウェイリー(女子ストロー級王者)と対戦することになるのよ。何年か遅れてしまったけど、それでもここで証明できるチャンスがあるのが素晴らしいわ」

──あなたがデビューした頃は、ヨアナが王者でした。でもその後、ジェシカ・アンドラージ(女子ストロー級4位)が奪って、ローズが取って、そしてジャン・ウェイリーが再び王座につきました。過去の王者たちを総合的に見て、ウェイリーが一番の難敵になると思いますか?

「今の彼女は間違いなくこの階級でトップよね。ローズに2回負けているのは知ってるけれど、私としては以前ずっと『ローズと戦いたいわ』って言ってたの。でも彼女は階級を変えちゃったし、私はもうローズの名前を出すのはやめたのよ。だから今はジャン・ウェイリーだけに集中しているわ。とにかく彼女は素晴らしい王者だと思う」


photo by Kaoru Nakashima

──あなたは、「この試合はただの“ストライカー対グラップラー”ではなく総合的なMMAの戦いだとおっしゃっていましたが、ジャン・ウェイリーの最近の試合を総合的に見てどんな印象がありますか?

「彼女は本当に素晴らしい王者だと思うわ。私が何度も言っているけど、王者に必要な資質をすべて持っているのよ。謙虚さ、自信、行動力……そして変な売り方をせずに努力を積み重ねてきたという点も尊敬しているわ。
私もそういう部分を大切にしてきた。努力が全てで、他のことで自分をプロモートしようとは思わないのよ。努力だけで自分を証明したいし、そうして得た評価こそが欲しいの。だから同じスタンスで王者になっている彼女はとても尊敬できるわ。でも、私は自分こそが“本物の世界王者”だと思っているのよ。それを試合で証明してみせる」

──あなたは「自身は折れることなく、人を打ち砕く」というような表現を使っていましたが、相手を打ち砕くことはできると思いますか? 彼女も激闘を経験してきて、そこから立ち直ってきた選手でもあります。

「ええ、私はどんな相手だろうと、自分のスタイルで“打ち砕く”ことができるって思ってるのよ。私にはものすごい粘り強さがあるし、心肺機能も優れているし、何より“しつこい”くらいのレスリングを仕掛けられる強みがあるの。一度私の攻めが連続して流れ出したら、止めるのは本当に難しいと思うわ。グラウンドに持ち込んでも安全だと思ったら、急にチョークに入ったりするし。私、小さい頃からレスリングをやっているから、いろんな攻撃パターンを持ってるのよ。彼女も『経験が豊富』って言ってたみたいだけど、私だって3歳の頃から格闘技に触れてたの。若い頃からの経験を、この試合で最大限に生かすわ」

──これまでUFCで戦った中で、どの試合が一番のチャレンジだったと思いますか?

「どの試合も大変だった面はあるんだけど、みんな『楽勝そうに見えるよ』って言うのよね。でも、たぶん数字上で見るならニーナ・ヌネス(アンサロフ)戦が一番苦労した試合かしら。あれは3ラウンドの戦いだったし、私の数少ない判定決着のひとつでもあるの。それに加えて首のケガを抱えてたから余計にキツかったわ。1年間ずっと健康だったのに、試合の2週間前に首を痛めてしまって……。でも何とか勝ち切れたから、あれが一番大きなチャレンジだったと思うの」

──映像を研究したり、実際にジャン・ウェイリーを想定して練習したりしてみて、これまでの対戦相手よりも難しいチャレンジだと感じていますか?

「そうね、実績もあるし、とても勤勉なファイターだと思うから、間違いなくこれまでで最大のチャレンジになると思うわ。でもこれはどの試合でも同じで、私は毎回“過去最高の相手”だと思って臨んでるの。アレクサ・ グラッソ(女子フライ級1位)と試合をしたときも、彼女が相手を投げたりKOする映像を見て『すごいわ……』と思っていたわ。でも実際、やってみないと分からないものなのよね」

──UFC女子ストロー級のテイクダウン記録で3位タイにいるというデータがあります。ところで、相手のグラップリングについてはどう評価しますか?

「(ウェイリーは)グラップリングも良いと思うわよ。だから“ストライカー対グラップラー”って感じにはならないと思うの。彼女は毎回の試合で必ず組みを使っているし、打撃だけの選手じゃないのよね。だからこそ、この試合はすごく面白いものになりそうなのよ。明らかな“ストライカー対グラップラー”っていう構図だと、どうしても一方がただ寝かせて押さえ込むだけとか、退屈になる可能性があるでしょう? でもお互いに総合的な攻防ができるなら、激しい展開になると思うのよ」

──ジャン・ウェイリーは、前の試合(ヤン・シャオナン戦)で作戦から少し外れてしまって後半失速しかけましたが、「コーチの声に従って立て直した」と言っていました。その点、あなたは常に作戦通りに動くタイプに見えますが、そこに付け入る隙を見いだしたりはしますか?

「正直、あまり相手の作戦とかを深く考えたりしないのよ。私はいつも自分の動きをするだけって感じなの。自分で“こうやろう”と考えているわけじゃなく、むしろ練習量が多いから、本番になると自然と体が動くのよ。ジェシカ・アンドラージ(女子ストロー級4位)との試合を見直したら、ギロチンを取りにいく瞬間があって、自分でも『これ私がやったの?』って思うくらい自然だったわ。やっぱりグラップリングをやり込んでいるから、ああいう動きが当たり前にできるのよね。だから相手の作戦よりも、自分のやるべきことに集中するだけ」

──最近のインタビューで「サブミッションで勝てると思う」と言っていましたが、どの技を狙っているか具体的に教えてもらえますか? もし秘密にしたいなら、得意のサブミッションを教えて下さい。

「私のサブミッションの引き出しは多いわよ。本当に得意だから、サブミッションで勝てると思っているわ。ジ・アルティメット・ファイターのときにはダースチョークを極めたし、ジャパニーズ・ネクタイだったり、他にも数多の技を組み合わせることができる。女性の試合だとリアネイキドチョークやアームバーが多いかもしれないけど、私はチョークのスペシャリストだと思ってるわ。ギロチンが大好きすぎて、ギロチンの形をしたイヤリングまで持ってるのよ。小さい頃からレスリングでフロントヘッドロックの攻防を繰り返してきたから、あの体勢での絞めは自然に身についてるの。レスリングをやっていた頃からヘッドロックはよく使ってたわよ」

──怪我の経験を経て「忍耐強くなることを学んだ」と仰っていましたが、そのことはトレーニングやUFCでの戦い方に影響していますか?

「そうね。トレーニング自体を大きく変えたわけではないけど、一緒に練習する相手はかなり選ぶようになったわ。お互いがちゃんと信頼し合えて、変な意地を張らない人とじゃないと怪我しやすくなるから。私に必要だったものを、宇宙(運命)が与えてくれたのかなって思ってるの。つまり、私がもっと忍耐強くなる必要があるってことをね」

──メインイベントの予想はどうですか?

「もちろん、チームメイトのショーン・ストリックランド(ミドル級1位)を応援するわ。前回の試合でも勝っていたし、私も同じジム仲間としてずっと前から知ってるの。私が12年前にミレニアMMAにいたときからの仲間なのよ。私とフィアンセ(パッチー・ミックス)は、前回彼が王座を取った試合を家のソファから見ていて本当に感動したし、刺激を受けたの。今回は同じ日に同じアリーナで、私も自分のタイトルを取るんだって思ってるのよ」

──これまでで一番遠くまで移動しての試合になると思いますが、時差ボケやコンディション調整はうまくいってますか?

「ええ、27日にはもうシドニーに来ていたの。時差ボケ対策も含めて、早めに現地入りしたわ。私はキャリアはそれほど多くないかもしれないけど、15歳からレスリングで世界大会に出てきた経験があるから、海外遠征の難しさはよく分かってる。それに専門家にも頼んでいろいろと知恵を借りながら調整したから、万全の状態で試合に挑めるはずよ」

──早めに来て長く滞在しているなら、少し観光もできましたか?

「普通はそう思うわよね(笑)。意外とトレーニング漬けで観光らしいことはまだできてないのよ。でも買い物はわりと行ったわ。それと、ここはコーヒーが美味しいから、滞在してからほぼ毎日違うカフェに行って楽しんでるの」

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