キックボクシング
インタビュー

【RISE】白鳥大珠×植草歩が対談:空手、日本を代表として戦うこと、コンディショニング、SNSの活用など大いに語り合う「しっかりチャンスを取ってそのビジュをみんなに見せつけてください!」(植草)

2024/12/17 15:12

20代ラストの今が1番良い時期(白鳥)


――今回白鳥選手は12月21日に日本を背負って日本代表として戦う立場ですけど、そのプレッシャーは感じていますか?

白鳥 誰もが出られるわけではないですし、日本人から選ばれたのは2人しかいませんし、俺だってそこに行きたいと言う選手も沢山いると思うので、その選手の分も背負って日本代表として戦いたいと思っています。しかも世界各国の選手が集まっているので、プレッシャーは必要最低限自分でも感じています。ただ僕はチャレンジャーでもあって自分の挑戦だし、特にプレッシャーでダメになるタイプではないので、のびのびやりたいなっていう気持ちはあります。

――植草さんも東京オリンピックの時に、日本代表というのはものすごいプレッシャーがあったんじゃないですか。

植草 やばかったです。苦しかったなと思うし…。でもアマチュアスポーツとプロスポーツの日本代表というのは中身も違うし。動画とかも見させていただいたんですけど、白鳥選手は注目を力にできる人だと思うんですよ。

白鳥 そうっすね(笑)。注目された方がいいですね。

植草 自分もそうだったから、注目されていたら「見ておけよ」って気持ちで自分に酔うじゃないですけど、それが自信にもなるし過信にもなっていいと思うんです。じゃないと格闘技って、コートの中に行ったらいくらサポーターが沢山いても最後は自分で自分を信じて自分が相手と戦わなければいけないので、それをできたから自分も世界一にも日本一にもなれたと思います。きっとそれができる方だと思うので注目を力にできると信じて、ポジティブだしナルシストじゃないとね。

――今ナルシストという言葉が出ましたけどどうですか?

白鳥 色々見抜かれてましたね(笑)。

植草 対談が決まって、それで本当に格闘技とかのプロフェッショナルな競技にすごく疎くて、従兄弟がやっているから従兄弟の方も知っているけど、いまいちまだ分かっていない部分も沢山あって。そこは自分がアスリートだったから自分にしか興味がなくて自分のものが大好きっていう感じなんです。だから知らないとなと思って調べてみた時に、やっぱり注目が力になっているのが分かりました。それが結局自分自身の糧にもなるし評価にも繋がるし、絶対プロフェッショナルなスポーツでは大事ですよね。

――先ほど植草さんから、自信と過信のバランスって話もありましたけど、それはコントロールできていますか?

白鳥 練習を重ねていってどんどん自信は増していくんですけど、まだどうしても自分の中で不安要素って沢山あるんですよね。だけど当日に自信100パーセントで臨むのも違うなと思っていて。やっぱりある程度の不安材料は常に持っておいた方がいいと思っているので、バランス的にはすごくちょうど良いですね


――植草さんは東京オリンピックの時に、日本武道館の舞台に上がる時はどういう風に心を整えたんですか?

植草 東京オリンピックの時は自分でも「もうダメだな、精神的にも崩れてたな」って思うんですけど、それ以外の全日本選手権の連覇がかかった大会だったり、世界選手権の場だと人の目を感じるしカメラが自分だけを追っていることも感じるので、「あ、私ってやっぱり注目されているんだな」って思う事が自信にもなりました。あとは元々の性格がネガティブで慎重で分析もすごくするので、それを念入りにして毎回それを継続して勝つ事ができました。

 東京オリンピックの時はこれが最初で最後って思っているからこそ、より念入りに全てをやり過ぎてしまって自信が無くなってしまって、ただの不安要素ばかりを埋める練習とか、得意な部分を伸ばせたのかとか、そういう部分がすごく足りなかったなと反省していて、良いも悪いも知っているから伝えられたらいいよなと思います。調子に乗るのもすごく大切だし、でも自分でそこに乗り過ぎたらダメだし。自分でも不安材料があるからこそ競技に活きているっていうのも話していて感じるので、たぶん自分でコントロールがきちんとできているから、チャンピオンになって調子に乗ったその後が大切かなって思います。

白鳥 僕もRISEに出始めたのが22歳くらいで、いろんな経験をしてきたと思います。波があったり、トップを取ってそこで調子に乗って落ちていってとか。けど今29歳になるんですけど、すごく今が1番良い時期かなと思っています。色々知れてメンタル面や練習の仕方だったり、試合に向けた過程とかもそうなんですけど、全ての経験が活きていて20代ラストの今が1番良い時期だと感じています。

――今“20代ラストの”という話がありましたが、植草さんはついこの間20代ラストだったんですよね。

植草 しかもちょうどその時がオリンピックの時期でした。自分で29歳まで空手をやるなんて思ってもいなかったので、今のスポーツ科学の中ではやれるなって思うし、酸いも甘いも知って屈辱も知って、その中での集大成になれて30歳を迎えたら、より一皮むけた卓越したものができるんじゃないかなと思います。私自身も30歳を超えてから競技との向き合い方が変わって、今までは「トップになりたい」とか「チャンピオンになりたい」とか「チャンピオンで居続けたい」だったものが、オリンピックじゃなくなったからもっと外の世界を知りたいと思って、海外で指導や合同練習をしたりしたんですよ。

 その時に「4,5時間練習していたのはありえないよ」って他の選手たちから言われました。オリンピックでメダルを獲った子たちは1日2時間しか練習しない、みたいな。朝は1時間、午後2時間って感じで、私がやってきた事は間違っていたんじゃないかなと思ったしすごく屈辱を感じました。それを自分は30歳を超えてから知ったけど白鳥選手は30歳を超える前から知っているからこれからきっと良くなると思います。自分ももっと早く知るべきだったかなとか思うんですけど、今知ったから意味があると感じていて、オリンピックで負けたからそういうことをしたんだろうし、成功して私が指導をしていたとしたら「4,5時間やって、それだけ筋トレも空手も色んなことは、頑張ったら頑張っただけ成果が出る」っていう伝え方にはなってしまったかなと思います。負けて良かったとは思わないけど、負けたからこそこう思える感情がありますね。

――白鳥選手もここ1番っていう時に悲しい思いをした事が何度かあったと思います。そこから再び立ち上がって、這い上がって今があると思うのですが、そこのメンタル面はどうだったんですか?

白鳥 東京ドーム(THE MATCH 2022)で KOされた時は、自分の中で1番落ちたんですけど、1回練習も全くせず格闘技から離れて何もしない期間があって…。だけど「これから自分はどうしていくんだ?」って思った時に、自分の中にある目標がブレていなかったんですよね。その自分が描いている未来像に自分が届いているのかとか、色々考えた時にまだ全然届いていなくて。「そんなので挫けていて良いのか」って思った時に、動き出さなければなという思いがあったので、何回かここ1番で落としてしまうのを繰り返しましたけど、その目標がブレずにあるから今もこうやってずっと続けられていると思っています。もちろん周りが応援してくれてサポートしてくれて、その期待に応えなければいけないっていう思いは常にあるんですけど、やっぱり自分が自分自身のためにやっている部分もあるので、そこだけはブレずに今までやって来れていて、そこが諦めずに続けられている1番の理由かなと思います。

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.335
2024年11月22日発売
年末年始の主役たちを特集。UFC世界王座に挑む朝倉海、パントージャ独占インタビュー、大晦日・鈴木千裕vs.クレベル、井上直樹、久保優太。武尊、KANA。「武の世界」でプロハースカ、石井慧も
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア

関連するイベント