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インタビュー

【UFC】朝倉海はなぜパントージャに敗れたのか──その内幕を王者と陣営が明かす

2024/12/09 21:12

フィニュシュの4の字ロック、ワンハンドチョークの真実とは?

 バックポジション、リアネイキドチョークを最大の武器とする王者だが、実はパントージャは足を4の字に巻けない局面では、相手を取り逃していることが少なくない。

 朝倉もセコンドの柔術家の石黒と、バックを取られた際の局面毎の防御方法を、こと細かく練っていた。最悪のケースも含めたもので、もっとも警戒していたのは、このボディトライアングルだった。

 試合後、本誌がパントージャに、そのボディトライアングルについて聞くと、「もちろんそれこそが極めるために必要だった。すごく得意だから。今日はボディトライアングルをとてもタイトに力を込めて絞めた。それは相手を疲れさせることにも繋がる。相手が“解除しなくては”となるから。1Rはフックできなかったから海に逃げられたけど。2Rには相手も疲れてきてフィニュシュに繋がった」と、初回に主導権を握って朝倉を削ったこと。そして、崩して足を巻くこと。そのボディトライアングルでも相手を削っていたことを明かした。

 同じく陣営のパルンピーニャも、バックポジションが最大のチャンスになることを予測していた。

「とても重要でとても優位に立てる。4の字がしっかり出来ると──たとえば自分は足が短く太いからすごく難しくてほかの道を探さなくてはいけないけど──腰をロックされてしまう。ボディトライアングルで一番大事なポイントで、これはほかのテクニックにも繋げられる。

 とりわけパントージャにおいては身体の構造についてよく知っていて、それは青木真也と同じようなものだ。ハンドゲームがとても優れているから、ボデイロックをしておくことで、より得意なハンドファイトを活かすことができる」と、王者が朝倉の絞り込まれたボディをタイトにロックし、捻りを加えることで、脱出不可能にさせていたとした。

 そしてフィニュシュのワンハンドチョーク。

「極めの強い方の腕で極めることが重要だった」というパルンピーニャの言葉通り、ボディトライアングルを組んだパントージャは、冷静に腕を組み変えていた。

「確かに片手だった。コーチが僕に常に言うのはフィニュシュするときに100%を使ってはいけないと。とにかく肩を掴んで時間がまだあって、海のうめき声が聞こえたから、ラウンドも序盤で時間があったし、状況に従って極めれる方向についていった。それが上手く出来た」とフィニュシュを振り返る。

 陣営にとって、日本の朝倉海と戦うことは、感慨深いことだった。

 日本で合宿を積んだこともあるパルンピーニャは、朝倉戦をこう振り返る。

「ラウンド間にシングルレッグでバックを取りに行けと言った、神のご加護ですべてうまくいった。ゲームプランというものはときとしてハマらないときもあるが、今回は完璧だった。

 朝倉海はとてもデンジャラスなファイターで強いと思うよ。ちょっとバイアスがかかっているかな。私は柔術がバックグラウンドで、日本が好きだから。何度も行っているし、青木真也は友達だ。ほかにも日本の選手で友達がたくさんいる。日本のみんなにとても深い敬意を持っているんだ。みんないつもリスペクトフルだ。今回の朝倉海は、ちょっと異なるアプローチであまりリスペクトフルではなかった。だが、試合後はとてもいい子で、みんな彼に深い敬意を持っているよ。もちろんパントージャはすべての対戦相手に敬意を持っているし、朝倉はそれに値する人間だ。なぜならとても危険なストライカーで素晴らしい選手だから。でもパントージャが世界一であることにはそれなりの理由があるんだ」(パルンピーニャ)

 そして、試合後に王者は、「海は俺の戦い方を大きく進化させてくれたと思う。今夜、みんなも俺がオクタゴンの中でどれだけ快適に感じられるようになったかを見たはずだ。彼が俺を別のレベルに引き上げてくれた。海の打撃は本当に素晴らしかった」と、挑戦者の脅威が自身をより強くさせたと語り、前述の通り、元UFC&ONE世界王者のデメトリアス・ジョンソンとの対戦をぶち上げたが、そのコメント後、DJは「すでに引退している」とカムバックを否定している。

 さらにパントージャは、ESPNのインタビューで、「堀口恭司と話したときにこう伝えたんだ。もし君がUFCに来てタイトルをかけて試合がしたいなら、俺は君の友達だけど喜んで受けるよ。ベルトをかけて君と対戦できるのであれば光栄だ。彼のことが大好きさ」と、ATTの盟友が挑戦者に相応しい実力の持ち主であることをあらためて語っている。

 かくして、UFC史上例を見ないタイトルマッチを戦った朝倉海は、『UFC310』のメインイベントを戦い、敗れた。王者が王者である理由とともに、挑戦者にも収穫と課題があった。

 試合後、UFCのダナ・ホワイト代表は、「朝倉海は史上最高の男の一人と戦った。もし海が勝っていたら、日本でどれほど大きな試合になったか。もっとも、彼が今夜見せたパフォーマンスでさえ、(UFCが)日本で試合を行う可能性を持つものだと思う」と、朝倉海のパフォーマンスが、UFC日本大会の可能性を持つものだったと語っている。

 敗れた朝倉は、9日にSNSで「たくさんの応援ありがとうございました。結果で返せなくて申し訳ないです。素晴らしいチャンピオンだった。そして自分がまだ弱かった」と力が及ばなかったこととパントージャを称え、「今回は届かなかったけど 必ず這い上がってチャンピオンになる。今までもそうしてきたしできるまでやり続ける。強くなって戻ります」と再起を誓った。いきなりのPPVイベントの大一番で、様々な責任・プレッシャーとも戦った朝倉海は強豪たちが揃う世界最高峰で、茨の道を進み続ける。

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