USADAを離れ、世界中に5千人以上の採取要員を擁するDFSIに移行
一部報道では、その検査員がUSADA(米国アンチ・ドーピング機関)派遣と報じられたが、実際には2024年からUFCは独自のUFCアンチ・ドーピング・ポリシー(UFC ADP)を起ち上げ、UFCと新たに契約したドラッグ・フリー・スポーツ・インターナショナル(DFSI)、またはその契約関連会社のいずれかによる無通知でのサンプル採取を行っている。
DFSIは世界中に5千人以上の採取要員を擁しており、USADA体制のプログラムよりもグローバルに網羅するという。抜き打ちサンプル採取は365日、1日24時間、週7日いつでも行われており、日曜・祝日問わず、サンプルを採取。新プログラムでは、DFSIはあくまで検体採取者であり、違反を裁く権限はないとされている。
採取された検体は、米国ユタ州ソルトレイクシティにある世界アンチ・ドーピング機関(WADA)公認のスポーツ医学・研究検査機関「SMRTL」で分析され、EPO、テストステロン、ヒト成長ホルモンなどの禁止物質をスクリーニング。
制裁決定を含むUFC ADPの管理は、コンバット・スポーツ・アンチドーピング(CSAD)と、その会長でありFBIで20年以上の勤務経歴を持つジョージ・ピロ(ノーギ柔術マスターズ世界王者)が、科学アドバイザーであるダニエル・アイクナー博士の技術的支援を受け、出場停止や居場所不定などのプログラム違反の裁定を含め、同プログラムにおけるすべての決定権を保持している。つまり、UFCは、ドーピングに関する結果管理や制裁の決定は行ず、第三者機関に委ねている。
朝倉は、「日本では血液検査と尿検査、今回は尿検査だけだったけど、来る5分前にトイレを済ませたばかりで出ない。でも来た瞬間からその人(検査官)は俺のそばから絶対に離れない。水をたくさん飲んで、結構量も出さないといけないのに、濃度の基準があって、『薄すぎる』とやり直しになって、もう1時間後の2回目も『薄い』と。『ご飯に行きたい』と話したら、レストランまで僕のバイクの後ろに乗って着いてきて、一緒にご飯を食べました。それで戻ってきて3回目でやっとクリア。まあ厳しいよね」と、検体採取の厳しさを語っている。
その採取の仕方や「禁止リスト」は、五輪アスリートが行っているWADA基準に則り、採取時にダミー検体にサシカエられないように必ず先端を目視でチェック。
また、UFCファイターは3カ月先までの位置情報を事前に提出し、居場所プラットフォームにもアクセス、抜き打ちチェック時に不在の場合、1時間以内に戻る必要がある。抜き打ちチェックを3度キャンセルすると、前述の通り、居場所不定のプログラム違反で罰則が与えられる。