安保瑠輝也「相手を駆け引きの段階で疲れさせていこうと」
──パッキャオ選手との試合を終えた、率直な感想をお聞かせください。
安保 試合前からずっと言っていた通り、『中尾(剛之)先生と2人で作りあげてきたボクシングを証明する』と言っていたんですけど、倒して勝つつもりでいましたけど、倒すことはできんかったけど、中尾先生とやってきたボクシングを3分3R出して、証明できたかなって、いま素直に思えて、ホッとしています。
──パッキャオ選手と実際に手を合わせてイメージと違うところはありましたか?
安保 別にイメージと違ったところは特になくて、1回たぶんジャブにカウンターの左フックが来たのかな、それが一発顎に当たってちょっと顎が痛いですけど、特別めちゃめちゃパンチが重かったわけではないし、練習してきた想定通りかなという印象でした。
──長くファイターをやられてきて、これだけの充実感は初めてですか?
安保 充実感? 充実感というのはどういう感情のことを言っていますか?
──パッキャオ選手と3Rやりきってファンから応援されたことです。充実感とは違いますか。
安保 充実感とは違いますかね。3分3R戦ってドローという結果になりましたけど、ほとんどのボクシングをやってきた選手たちは、「安保は1Rで倒されるし、パンチは一発も当たらんし、一発当てられたらその時点で終わる」と言われていましたけど、それは絶対覆してやろうと心に決めていたので。中尾先生と2人でやってきたボクシングはそんなことにならないと分かっていたし。ここまでひとつのこと集中してやり続けたことも今までなかったので、充実してるかは分からないけど、めちゃくちゃボクシングに没頭したという、うん。
──達成感?
安保 そうですねえ、達成感かなあ。ほんまのこと言ったら倒したかったですけど、それで盛り上げられるのがファイターとして一番気持ちいい瞬間ですけど、まあ中尾先生からも「よかった」と言ってもらえたので。
──いま一番何がしたいですか。
安保 6月にスダリオ剛選手と戦ってからそのまま2週間足らずで(ショーン・)ストリックランド選手と本当に試合の気持ちで挑んだわけですけど、そこから1カ月足らずでパッキャオ選手と戦わせてもらって、とにかく格闘技漬けやったなっていうふうに思うので、もちろん職業としてファイターやってるからありがたいし、嬉しいことですけど、ちょっと若干疲れたなというのは感じていて。夏もしてないし、8月にあさってくらいから入るんですけど、分からないけど。2024年は安保瑠輝也の年にしてやろうかと思っています。
──試合当日リングに上がった時の、リカバリした体重は?
安保 76kg。
──体格差を活かしたボクシングというのは狙いとしてありましたか? そして実際体格差がこの試合のなかでどう生きたと思いますか?
安保 体格差だけでどうこうできる選手じゃないのは分かっていたし、それは過去の映像を見ても分かることじゃないですか。デカいだけで前にガンガン詰めてくる選手をパッキャオ選手が、相手が足止まっている状態だったらサンドバッグのように面白いように打つし、そうならないように、足もちゃんと機敏に動かして、入ってくるならその分だけ下がる。それも真っ直ぐ下がるのではなくて、エスケープ、ちゃんと自分がいい立ち位置、ポジションで避けながら打つ。
下がるだけじゃなくて、次は自分のフィジカルを活かして、相手が入ってくるタイミングで頭を相手の胸のところにぶつけて距離を潰してフィジカルを活かす、みたいな感じで、ディフェンシブな戦術をやっていきつつ、相手を駆け引きの段階で疲れさせていくというか、“なかなか上手くいかんな”と思わしておきながら、“自分が次は前に行ける”という段階の勝負になると分かっていたので、もちろん体格を活かせた部分はあるけど、体格だけで勝負できたわけじゃないと思います。
──左フックやアッパーを浴びたと思いますが、先ほども「そんなに重くなかった」と。どんな感じだったでしょうか。また、笑ったシーンの感情について教えてください。
安保 なんかねえ、パンチはさっき言ったように特別パッキャオ選手だからどうというのはなかったんですけど。笑っちゃったりするのは、いいの当たった時に、楽しくなっちゃうってのもあったりして、あとはたぶん性格が、戦いの時にオラオラしちゃうのがあったりするので、いい点でもあり悪い点でもありますけど、冷静になるところはなる、熱くなって倒しにいったほうがいい時には、いい場面もあるし、そこは自分とうまく付き合っていかなきゃいけないのですけど、あえて笑ったりするのは自分の持ってる性質、性格ですかね。「楽しくて」です。
──今回はスタンディングバウトでした、今後はどのような種目をやりたいかなど、将来の目標を教えてください。
安保 今、特に目の前の試合終わって「次からは何で行きます!」みたいなのは特にないですけど、リング上で言わせてもらった通り、始めは嫌われながらRIZINファイターになった僕ですけど、今こうしてパッキャオ選手と戦わせてもらった時に歓声の多さや、安保瑠輝也を応援してくれる人が増えたなと、正直に嬉しいという気持ちなので、自分がまずワクワクすることに挑戦していきながら、みんながそれを楽しんでくれることをやっていって、自分なりにこの競技で、まあどの競技を選ぼうと世界チャンピオンになろうと決めているので、それを今から模索していこうかなというような状況ですかね。