ベラル・ムハメド(ウェルター級2位)「これまでの5年間、この瞬間のために努力してきた」
──タイトルマッチを控えた心境を。
「最高の気分だよ。ずっとこの日を待ち望んでいた。戦うのが大好きなんだ。ジムでのトレーニングも続けてきたし、待ちに待った日がやっと来た。キャンプもハードだったけど、無事に健康な状態でマンチェスターに来ることができて、試合が楽しみだ」
──レオン・エドワーズ対策はずっと続けていた?
「100%、その通りだ。3年前の初対決からレオン戦に向けてトレーニングをしてきた。ずっとあいつと再戦したかったから、観察して研究し続けてきた。この1年半から2年間、ずっと対策をしてきたんだよ」
──あなたがレオンに「50-42で勝つ」とか「拷問する」と言っている理由は?
「文字通り拷問したいからだよ。そして25分かけてレスリング、グラップリング、打撃、柔術、すべての面で彼を圧倒して、言い訳できないような敗北を味わわせたい。ギブアップしたくなるような状況に追い込みたいんだ。そして試合後には彼のコーチも恥ずかしくなって立ち去るしかないような試合にしたい」
──あなたのコーチが、あなたは「カネロのようなボクシングをする」と評価していたが?
「毎試合、新しいことを取り入れようとしている。毎試合、自分が進化しているのが分かるだろう。全ての面でどんどん良くなっている。俺には世界最高の打撃コーチがいるし、常に改善を意識している。レオンの作戦は気にしない。俺のベストバージョンが世界一のファイターだと思っているから」
──GSPと肩を並べる偉大なウェルター級ファイターになるに必要なことは?
「ただ勝ち続けること。俺の戦績を見てくれ。デミアン・マイアとワンダーボーイも2回もタイトルマッチに挑戦した。ギルバート・バーンズもタイトルマッチ経験者だし、ビセンテ・ルーケもバックアップとして待機していた。みんな、この時代のトップだったんだ。そして俺は彼ら全員を打ち負かした。レオンを倒したところで、世間は俺の実力にいちゃもんを付け続けるだろう。でも、ただ次々と勝ち続け、ベストのファイターを倒していく。他のファイターの追随を許さない戦績にしたい」
──11月1日に12-6エルボーが解禁されるなど、新しいルール変更が導入されるけど、それについてどう思う?
「12-6エルボーはずっと前に導入されるべきだったと思う。それが試合に大きな影響を与えるとは思わない。レフェリーがその角度を見ているかどうかだけだからね。影響があったのはジョン・ジョーンズしか思いつかない」
──レオン・エドワーズに対する憎しみについて何度も話してきたけど、それがなぜそんなに個人的なものになったのか?
「あいつのタイトルマッチへの道のりは自分のものと非常に似ている。誰も彼を尊重せず、チャンスも与えられなかった。自分も同じように苦労してきたけど、彼との初対決はショートノーティスで試合を受けた。そして反則で怪我をさせられ、試合が中断された。それが自分の初めてのメインイベントで、自分の輝くべき場だったのに奪われたんだ。
それなのにあいつは再戦を拒否し、自分が勝っていたと言い張った。それを信じるファンもいたんだ。そして俺が勝ち続けても、彼の陣営は『まだ挑戦者にふさわしくない』と難癖をつけ続けた。俺に対して無礼な言動を続けたから、個人的に嫌いなんだ」
──レオンとイギリスのファンは、あなたの打撃を過小評価していると思う?
「過小評価しているといいね。これまでの5試合も過小評価されて試合に臨んだけど、どれも楽勝だった。そしてレオンとの試合は、一番イージーファイトになる。ファンや人々は何でも言うけど、自分のチームや家族がどれだけ努力しているかを知っている。彼らの意見が最も大事だ」
──ハビブ・ヌルマゴメドフのサポートについて、どう感じている?
「最高だよ。ハビブがファイトウィークにメッセージをくれるなんて、信じられない気持ちだ。彼はスポーツ界のマイケル・ジョーダンのような存在だから、彼が自分をサポートしてくれるのは素晴らしいことだよ。コーチが常に言っているように、旅を楽しみ、出発地点を忘れないでいるんだ。Facebookの思い出を見ると、12年前にどこにいたかを思い出す。ここにいられること、そして自分の成功を願ってくれる人々に感謝している」
──相手に憎しみを持って戦うことは、試合に悪影響があるのでは?
「それはプラスになる。これまでの5、6人の相手はみんな良い人たちだった。ワンダーボーイやデミアン、バーンズ、ルーケもね。相手が良い人だと、自分を奮い立たせるのが難しかった。ショーン・ブレイディとの試合では、彼がトラッシュトークを仕掛けてきたから、それが燃料になった。でも今回は、あのとき以上の燃料がある」
──敵地イギリスでの試合に関しては?
「正直、まるでホームのように感じるよ。空港には多くのファンが来てくれて、レオンがベルトを持って到着した時よりも多かった。人々は親切で、家族のように接してくれている。チームに食事も提供してくれたり、何の問題もなかった。試合が午前5時だから、みんな疲れていてブーイングするエネルギーも無いと思うけど、もしブーイングされても気にしない。自分の愛する人々の応援を聞くだけだから。父も試合に来るから、本当に嬉しいんだ」
──UFCのベルトと一緒にパレスチナの国旗を掲げる瞬間について考えたことは?
「もちろん。本当に感動的な瞬間になるだろう。パレスチナの人々が応援できるものを与えたいんだ。『あれは我々の旗だ、我々の真の王者だ』と言ってもらえるようにしたい」
──タイトル挑戦まで長い道のりだったが、これが一度きりのチャンスという重圧は?
「これは自分にとってのスーパーボウルだ。NFLやNBAを見ると、スーパーボウルやファイナルに出場しても、二度と出られないチームもある。自分は2度目のチャンスだとか、ベスト・オブ・セブン方式が必要だとは思っていない。これまでの5年間、この瞬間のために努力してきた。どの試合も重要だけど、今回は今までで最も大きい試合だ。体力を少しでも残しておこうなんて考えはない」
──以前、レオンが試合のプロモーションをしていないと不満を持っていたが、今回は?
「いや、彼はまだ囁いているだけで、何もやっていないよ。昨日は彼のコーチがトラッシュトークをしてたけど、そっちの方がよっぽど面白い」
──エレベーターでの出来事については?
「小柄な男が何か叫んでるのを聞いて、何だこれって思ったんだ。結局、それは彼のコーチだったんだけどね。レオンの兄弟からはガンを飛ばされたけど、本人はなにも言ってこなかった」
──UFCカウントダウンの番組内で、ジュードという子供との感動的な場面があったが、経緯を聞かせてもらえますか?
「素晴らしい経験だったよ。俺たちはPCRF(パレスチナ子供救済基金)に協力している。彼らは現地でがんセンターを作る素晴らしい仕事をしているんだけど、今はそれが難しくなっている。だから、今の目標は、医療が必要な家族をアメリカに連れてくることなんだ。ジュードと彼の父親もその一環で、彼らは母親を爆撃で失った。彼女はジュードを守ろうとしていたんだ。彼らには他に2人の兄弟もいる。ジュードが最初に来たとき、彼の膝蓋骨からはネジが突き出ていた。現地には麻酔もなく、医療用品も不足しているので、すべての治療が床の上で行われていた。だから彼らをアメリカに連れてくる必要があった。シカゴのロナルド・マクドナルド・センターで医療支援を受けることができ、リハビリも始めることができた。今では彼は子供らしい生活ができるようになっている。おもちゃを買ってあげて、彼が遊んでいるのを見ると感動するよ」
──あなたが勝ったら、エドワーズとの再戦は?
「あいつが再戦の資格を持っているとは思わない。前回の試合でコルビーを倒しているけど、彼は弱い。ウスマンとの再戦にも勝っているけど、それだけじゃ再戦の理由にはならない。再戦の必要性を感じさせない勝ち方をするよ。みんなに『嘘だろ、こんな弱い人が王者だったの?』って言わせるよ。彼はスーパースターのように振る舞っているけど、試合の後は毎回姿を消すから誰も彼を知らないんだ。マンチェスターを歩いていても『誰と戦うの?』って聞かれて、レオン・エドワーズだって答えると『誰?』って言われる。王者ということすら知られていないんだ。自己プロデュースをしないし、UFCのためにプロモートすることも無い」
──レオンとの初対決から、お互いにどんな進化を遂げた?
「自分は完全に変わったよ。あの試合は3週間前に決まった試合だった。ディエゴ・リマ戦の1カ月後だったし、短期間での試合は色々と大変だ。だから、あの試合を振り返っても意味がない。あの時とは全く違うファイターだからね。今の俺なら、当時の自分を簡単に倒せるだろう。ただ、レオンは基本的に変わっていない。彼の最近の試合を見ると、同じスタイルを繰り返しているだけだ。彼はウスマンやコルビーと同じようなスタイルのファイターと戦ってきた。コルビーとの試合は実質的に何も起こらなかった。ウスマンとの3戦目も、相手はすでに自信喪失した常体のように見えたよ」
──あなたもレスリングがベースのファイターだが、ウスマンやコビントンとの違いは?
「俺は彼らよりも高いIQを持っていて、違うペースで試合を進める。ずっと言っているけど、コルビーのキックボクシングはUFCジムのレベルだ。ウスマンは素晴らしい圧力と強さを持っているけど、ハイペースでは戦えない。一方で、俺は全てを兼ね揃えている。強さ、圧力、パワー、グラップリング。そしてそれを誰よりも上手く組み合わせることができるんだ」
──ここ数試合はアンダードッグとして戦ってきたが、なぜ過小評価されていると思う?
「みんなが自分の敗北を見たいと思っているからだ。ここ最近は、ワンダーボーイやギルバートみたいな人気ファイターと戦っていたからね。俺はシカゴの小さなジムから来た。5歳から武道を始めたわけでもなければ、何の黒帯も持っていないし、大学時代にレスリングもしていないから、勝てないと思っているんだ。でも、俺ほどの努力家はいない。そして、試合を分析できるIQを持っているファイターもいないんだ」
──将来的にコナー・マクレガーとの対戦を望む?
「コナーの名前を出すときはいつでも大金が絡む試合になるよね。でも、彼がマイケル・チャンドラーとの試合を中止しているように、自分との試合でも爪が割れただけで中止するかもしれないから、何とも言えないね」
──勝利した場合、ベルトを手に入れて最初に何をする予定?
「まずはコーチのルイス・テイラーにベルトを渡す予定だよ。高校時代から一緒にやってきたんだ」
──今週初めのインタビューで、レオンのモチベーションを疑問視していたね。特にウスマンとの2回目の試合で、5ラウンド目にコーチからの激励が必要だったことについて、本当に彼にはやる気が欠けていると感じる?
「100%そう思うよ。あいつのコーチはチアリーダーのような存在だ。おそらく本当にアドバイスがなくて、ただ激励の言葉を投げかけているだけなんだろう。もし誰かにケツを叩かれる必要があるなら、あいつは王者にふさわしくない。自分の場合、コーチはむしろ自分を落ち着かせたり、休ませるように言わないといけないんだ。レオンはおそらくコーチに後ろから『レオン、もっと頑張れ、もっと長く走れ』と言われるタイプだろうね。そしてその後、一緒にネイルでも塗ってるんだろう」