レスリングができることで、すごく試合をコントロールできるようになる
──いよいよ試合を控えた心境を教えてください。
「今の気分としては、最高です。いいキャンプが出来たんだ。上手く二つに分けてキャンプを張れたと思っていて、カリフォルニアでのチームオーヤマでの練習と柔術もやってきて、ラスベガスでは、マテウス・ニコラウ戦の時から(現在JTTの)ビリー(ビゲロウ)がベガスにまだいたのと、チェイス・パミとか、ジェイソン・マンリー、コーチのケイシーといった人たちと練習をしていた。時間をうまく分けてふたつのチームで、UFC PIもうまく活用していた。
コーディー・ガーブラントとか、リッキー・シモンといったような選手たちと練習しててハイレベルな選手たちと一緒にやることで、自分のトレーニングのサイクルをしっかりと保つことができる。あんまりクロストレーニングをやりすぎるのは好きじゃないから、うまくいい仲間たちでまとまって一緒にいつも練習するのはすごく上手くいくんだ」
──実力があり気心が知れたメンバーでの練習がいいと。“仮想・平良達郎”のような選手もいたのでしょうか。
「みんながトレーニングパートナーで、つまりリッキーとかはあんまり背も高くないし、でも巧みにラウンドを進められるし、コーチやチームメイトたちが、平良のスタイルをシミュレーションしてくれた。スタンドが上手い選手たちもいれば、自分がロールできるような小柄なグラップラーたちもいたりと、平良達郎と戦うにあたって、最高のチームで取り組んでこれた。時として背がすごい高い選手もいれば、自分みたいな小柄な選手もいたりするから、ずっと全部のことに取り組んできたよ。
やっぱりグラップリングにはすごくフォーカスしているんだけれど、それはやっぱり自分がレスラーだから。割と組む方なんだけれど、キックボクシングだったりボクシングだったり、自分のMMAのために必要なことに取り組んでいて、グラップリングにばかりこだわってきたということではないのだけれど、グラップリングに対しては、単なるワークアウトとして捉えることができないというか──僕はレスリングをやって育ってきたから。ものすごくグラップラーとしてやりこんできたけれど、試合になってしまえば、何が起きるかの状況次第。だからこそ、レスリングを日常的にやることを、実際のところそれがどういうスタイルかにかかわらず、すごく大事に思っているんだ。
つまり、レスリングができることで、すごく試合をコントロールできるようになるから。ただただレスリングをやりたいがために、高校とか大学に行ったりしているんだ。大好きだからね。すごく楽しいからやっているっていう部分がある。だから、自分の人生にとってすごく大事であると同時に、それが試合においても重要になってくる、そういう感じなんだ」
──ご自身の軸であるレスリングの練習が、MMAの練習のコンディションもスキルも上げることになるということですね。
「そう。レスリング技術をどう試合のなかで生かすかというとやっぱり全ラウンドを通して、どういう展開になっていくかが当然重要で。自分はUFCでもそれ以外でも、試合のなかで一本も取ってきて、基本的には立ててきた作戦があるから、それによって、グラウンドゲームに持ち込んで相手を倒せそうだと判断していれば、何度もそれを遂行するし、テイクダウンしてパウンドアウトするというようなこともある。
すべて試合によることだから、あらゆる局面に対応できるようにしているし、それ以上に、自分がどうやると上手く試合を運べるかっていうのが一番大事なところだから。レスリングを使って最終的に打撃で仕留める場合はちょっとまた違うのだけれど、レスリングは基本的に相手をテイクダウンしてしっかり押さえ込むところにある。テイクダウンしてすぐに立たせるような場面というのもあるだろうけどね」
──そのレスリング技術をどう使うかは相手との試合のゲームプランによると。あなたのカレッジレスリングベースの組み技の技術は、JTTの朝倉海選手やヒロヤ選手が感銘を受けていました。ニコラウ戦の試合前には、あなたもジャージの胸に日の丸をつけて臨んだそうですね。
「ああ、あの試合前にいろいろと助けてくれたからね。朝倉海たちと知り合う前にも、チームオーヤマで日本の選手に出会う機会はたくさんあって、とくに堀内佑馬は、彼が18歳の頃から知ってるから“マイ・サン”(息子)って呼んでたりする。あとはヨシ(堀江圭功)とか、本当に素晴らしいと思ったよ、やるべくしてやっているような選手だよね、UFCに彼が出ていた時に話したりもした。
それから、ビリーが日本の朝倉海とかヒロヤたちとの繋がりを作ってくれたんだけれど、『ゴング格闘技』でビリーが話してくれてるらしいけれど、その経験は本当に素晴らしいものだった。スタイルを見せてもらって、すごく勉強になったよ。やっぱり特にこの競技は、世界中のいろんな人と出会えることが素晴らしいと思っていて、“やあちょっと練習してみないか”という感じで交流できるのはいいよね。MMAのなかでみんないろんなスタイルを持ってやっているから、異なるスタイルというのをただ見られることで、異なるカルチャーだったりトレーニングの方法の違いやその背景にあるものだったり、そういうものが見えてくる。
日本の選手との出会いは、当然練習が米国とは全然違う部分もあったし、格闘技のカルチャーっていうもの自体に違いがあるなと実感した。だから、技術的なこと以上に、彼らの人となりに触れたことは自分に役に立ったと思っている」
──チーム・オーヤマのジムに掲げられた各国の国旗はまさにそれを表していますね。
「まさしく。コリン・オーヤマのもとで試合をするのは、より本能的な感じで“こうしなきゃいけない”とか“ああしなきゃいけない”というものではないんだ。同じコーチのもとでみんな違うスタイルの選手たちが練習しているわけだし。自分が、いいなと思えるのは、エゴを出さずに話せる仲間たちに囲まれていること。コーチたちは、ある意味全然特別なわけではなくて、ファイトをすること、試合があるからそのためにやるべきことをやるんだというところ。グループのなかで“我々の試合”として取り組んでる。自分たちが取り組むプランは、試合をするのは自分だけれども、みんながやることで、パッドをやるんだ、ドリルをやるんだ、それらはみんなでやることだ。
グループでやりとりをして、キャンプのなかで同じところをちゃんと見ている。チームオーヤマでコリンコーチと“これはしっかりやるぞ”となったことに取り組むし、別のコーチが“これをやるぞ”と言ったことにも取り組むし、そうやって、自分のことを理解してくれているみんなとやっている。みんなが、自分の勝利のために助けてくれていて、だからキャンプを分割してもそれぞれでしっかりといい取り組みをしたうえで、それぞれをうまくまとめられているんだ」