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【RIZIN】クレベルはいかにアーチュレッタを極めたか?『リバースクローズ』『バックサイド50/50』からのヒールフックを高橋“SUBMISSION”雄己が解説! 今週末「今成正和×須藤拓真」も=6月16日(日)『LEVEL-G』

2024/06/13 19:06
 2024年6月9日の『RIZIN.47』で、フアン・アーチュレッタ(米国)を1R 2分25秒、内ヒールフックで極めたクレベル・コイケ(ボンサイ柔術)。そのフィニュシュの速さと極め力が話題となっている。クレベルは、いかに元RIZIN&Bellator世界バンタム級王者を極めたのか。足関節の名手・高橋“SUBMISSION”雄己(和術慧舟會HEARTS/今成柔術)に解説してもらった。 「掴む」ことと「掴まれる」こと  大晦日・斎藤裕戦に続く連続フィニュシュ勝利のクレベル。  前回は斎藤に“喧嘩スタイル”で圧力をかけて、斎藤に「バックとか取られたらキツいから先に組んだ方がいい」と組みを選択させたところをカウンターのフックスイープでひっくり返してのダースチョークで一本勝ち。  今回も、変則的なリズムの打撃のなかで右ハイ、左ローを蹴って、その蹴り足を掴んだアーチュレッタにニータップでテイクダウンをさせておいてのカウンター。それは、クレベルにとって初の足関節でのフィニュシュだった。  テイクダウンされたクレベルは押さえ込まれないように、すぐに足を手繰り深く潜ってアーチュレッタの股下に上体を入れてリバースクローズ(ドンキーガード)の形に。  そこから足関節・あるいはバックを狙うクレベルに、リバースクローズを解除したアーチュレッタがスクランブルで正対へ。その左足にバックから「50/50」で足をからめたクレベルが内ヒールフックを極めている。  時に「掴まれること」は「掴む」ことと同じ意味を持つことがある。 “柔術の鬼神”として、常に「いかにいい形で組むか」が課題となるクレベルにとって、相手にテイクダウンを切られてトップから削られてジリ貧になる形が負けパターン。  そこに前戦では、斎藤のテイクダウンにスイープを合わせる形で「テイクダウン」を成功させ、今回は蹴り足を取られてのアーチュレッタのテイクダウンを足関節に切り返した。  米国ATTでは、KSW時代の王座戦で敗れた現UFCライト級5位のマテウス・ガムロらと練習。クレベルは、今回の動きを「ガムロはレスリングのスクランブルでいつもバックから逃げる。それをATTでいっぱい練習した」と、対アーチュレッタ用にシミュレーションしていたという。 「サトシ先生からも言われた。『ミドルキックを蹴ると絶対彼がキャッチする』。それは分かってるし、それを心配しない。コーチも『クレベル、キックだったらいいと思う。(キャッチしたら)相手は掴まっているから。どうせテイクダウンをやりたいのだから、あなたが一番上手なのは寝技だから』と。自分のキックを掴んで彼がテイクダウンを考えているなら私はありがたい」(クレベル)  MMAで足関節はパウンドを受けるリスクを伴うポジションになることもあり、これまでのクレベルもフィニュシュホールドとなっていない。オールアメリカンレスラーでトップから強いアーチュレッタを相手に、テイクダウンで下になったクレベルは、いかにパウンドを防御し、リバースクローズからトランジションで内ヒールを極めたのか。  6月16日(日)の『KROSS×OVER -CAGE.3-/LEVEL-G PRO』でサブオンリーのグラップリング試合・今成正和(今成柔術)vs.須藤拓真(X-TREME EBINA)の「新旧足関対決」を実現させたLEVEL-Gプロデューサーにして、グラップラーの高橋“SUBMISSION”雄己(和術慧舟會HEARTS/今成柔術)に、次ページから今回のクレベルのフィニュシュを解説してもらった。 [nextpage] 高橋SUBMISSION「クレベルが仕掛けた『リバースクローズ』とは?」 高橋「作戦なのか成り行きなのかは分かりませんが、クレベル選手が作った逆さまになって相手の胴に両足を絡める形は『リバースクローズ』と言って、今グラップリングシーンでは少し注目を集めている形です。  昔ジェフ・グローバーという選手(※2007年『World NOGI』優勝。ディープハーフガードの名手)がグラップリングの試合で四つん這いで相手にお尻を向けたまま接近し、両足で胴を挟み込みこのガードを作る……という奇妙な戦法を多用した事で話題となった形でもあります。  当時は“ドンキーガード”と呼ばれていました。実は私もこっちの呼称の方が馴染み深いんですが、今回はナウく“リバースクローズ”と呼ばせていただきます。このリバースクローズですが、ここから様々な足関節技での攻めに繋げる事が可能な形になります」 足関節を極めるための『レッグポジション』が必要 高橋「“足関”って突然極まるように思われがちですが、バックチョークを極めるためにバックを取らないといけないのと同様に、足を極めるためにも、そのための『レッグポジション』を取る事が必要です。 【写真】正面からの50/50の内ヒールフック。クレベルはバックサイドから極めに行った。  で、今流行りのリバースクローズのメリットですが、入り方がポピュラーになり過ぎたレッグポジションを直接作るよりも、一旦リバースクローズを経由する方が足関での攻めを行いやすいという点にあります(あくまでグラップリング界での話ではありますが)。  クレベル選手としても自身が展開するスクランブルの中で使用しやすい形だったんでしょうね。 ちなみに、余談ですが、リバースクローズのまま“Abe lock”と呼ばれて外ヒール的に極まる変形のアンクルホールドも最近のプチトレンドです」 『リバースクローズ』を解除したクレベルは『バックサイド50/50』からのヒールフックに 高橋「ただ、今回の極まり手自体はリバースクローズの展開で絡めとられたというよりも、一旦リバースクローズの解除に成功したにも関わらず、アーチュレッタ選手のミスでシンプルな『バックサイド50/50(フィフティ・フィフティ)』のヒールフックに入られてるような印象です。  バックサイド50/50というのはグラップリングでポピュラーな『レッグポジション』の一つで、内ヒールを取るための最も代表的なポジションである50/50を後ろ側から仕掛けている形になります。  内ヒールというのは50/50などのヒザを固定したポジションを整えた状態から踵を前腕でフックし、固定したヒザが回らない方向に向かって捻り、ヒザや足首を破壊するサブミッションです。  つまり前提として、50/50に入られたとて、踵をキャッチされなかったらヒールは成立しない事になります。そのためレッグポジションを成立させてからのヒールの攻防は“踵をいかに取るか”“踵をいかに逃がすか”というものになるんですね。  しかし、今回クレベル選手が作ったバックサイド50/50は、踵を隠す事が非常に困難なのが大きなメリットです。  もちろん、反転されたらただの50/50になるのでそこからの攻め直しが必要になりますが、今回のクレベル選手はうつ伏せの状態の間に踵を取り切る事に成功した形です。お見事。  アーチュレッタ選手のミスに合わせた形とはいえ、大変スムーズなバックサイド50/50のエントリーでしたが、実はバックサイド50/50ってリバースクローズからの攻めの常套手段で。  一旦解除されてリバースマウントのようになりはしたものの、リバースクローズの時点からずっとクレベル選手の狙いはバックサイド50/50だったのかも知れませんね」 [nextpage] アーチュレッタのミスとは? 高橋「それで、再三言っているアーチュレッタ選手の“ミス”とはなんだったかと言うと、リバースクローズを一瞬外して、リバースマウント(相手の頭側に自分の背中が向く逆向きのマウント)のような状態になったところから、『左足を残したまま反転してしまった』事かと思います。  リバースクローズを解除してリバースマウントのような形になった時点からスタンドに戻す事を考えるならば、 『向き直り際に左足をバックステップして抜く』か、  より安全策を取るならば、 『いったん尻を着いてもいいからクレベル選手の左鼠蹊部に右足のフックを入れて左足をヒザ下まで抜いてから、柔術立ちのような形でスタンドに戻す』ことができたら良かったかと思いました。  自分は直接“触った”事はないですが、クレベル選手の極めの仕掛けのプレッシャーはMMAファイターとしては大変驚異的なものなんだと思います。アーチュレッタ選手はそこからくる焦りによってミステイクをしてしまったとも言えるのかも知れませんが、とにかく見事な内ヒールでしたね!」(受け手:山口源樹/今成柔術)    *  高橋が指摘した、「いかにヒザを固定されないか」、踵をすくわれないように「踵を隠すか」あるいは「どう踵を取るか」の動きのディテールは高橋が、足関節技教則動画『足関アタック大全』『足関ディフェンス大全』として、体系化した解説を有料公開している。 「DOスポーツ」としてのグラップリングをグラップリングとして、またMMAのなかでも変化し存在し続ける足関節のメカニズムを知ることで、試合での動きがより楽しめることは間違いない。 ◆高橋“SUBMISSION”雄己(和術慧舟會HEARTS/今成柔術) 1999年4月14日、愛知県出身。2022年6月英国『Polaris』でトミー・イィプに判定勝ち。2023年2月、米国『FINISHERS』でラミロ・ヒメネスにヒールフックで一本勝ち。2023年7月、メキシコ開催のグラウンド状態での掌底有りグラップリング『Combat Jiu-Jitsu World』でルーカス・カントをオーバータイムで破り、準決勝でADCC East Coast trial王者ドリアン・オリバーレスに敗れる。2023年11月12日、米国『FINISHERS』でエディ・ブラボーの黒帯にしてFINISHERSバンタム級王者のレイ・ダレオンをオーバータイムで破り、王座を獲得。2024年8月、ADCC全米オープンに出場予定。MMAでもプロ修斗2勝1敗。最新のテクニックや、気になるテクニックを深掘りした教則動画も自身のサイトでまとめている。
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