向かって左が佐藤ゆうじ、右がギレルメ・ナカガワ。(C)ゴング格闘技
ABEMA『格闘代理戦争-THE MAX-』の準決勝が4月19日(金)に行われる。3月15日の一回戦では、ボンサイ柔術のギレルメ・ナカガワが、鶴屋怜監督の諸石一砂(THE BLACK BELT JAPAN)を40秒、腕十字に極めて、準決勝進出を決めている。
▼準決勝
中村京一郎(TEAM岡見勇信&中村倫也)
ギレルメ・ナカガワ(TEAMクレベル・コイケ)
▼準決勝
中谷優我(TEAM青木真也)
トミー矢野(TEAMイゴール・タナベ)
準決勝では岡見勇信&中村倫也監督率いる中村京一郎(EX FIGHT)と対戦するギレルミと、同大会にセコンド&通訳として帯同している同世代の盟友・佐藤ゆうじ(ボンサイ柔術)に、次戦について聞いた。
佐藤は、格闘代理戦争でギレルメとともにクレベルが推薦していた選手。2023年8月の全日本ノーギ柔術選手権アダルト青帯オープンクラス優勝で、現在は紫帯。2023年9月のDEEP浜松では、アマチュアルールながらトクナガ・ディエゴを1R ニンジャチョークで極めており、2024年5月12日のDEE浜松大会でバンタム級に下げてプロデビュー戦が決まっている。
ともに幼少時からカルロス・トヨタの指導を受け、色帯時代にボンサイ柔術に移籍。ギレルメは、2023年のASJJFドゥマウインターナショナルで茶帯デビューし、階級&無差別でWゴールドとなると、11月に黒帯に昇格。MMA転向を決意し、今回の『格闘代理戦争』でアマチュアMMA11戦11勝、9試合で一本勝ちをマークしている。
準決勝に向け、ギレルメは「上でも下でもいろいろな極めのバリエーションがある」と語り、佐藤は「ギが選ばれて嬉しかった」と語った。
ギを着ていても着ていなくても──
──試合前の練習後の取材、ありがとうございます。ともに試合を迎えるギレルメ選手と佐藤選手ですが、同じ歳なのですか。
佐藤 はい。年齢は同じ24歳です。学年はギ(ギレルメ)がひとつ上です。
──これまでアマチュアでは当日計量でフェザー級でしたが、『格闘代理戦争』のギレルメ選手の1回戦は、前日計量で上限69kgのキャッチウェイトでした。プロMMAでは、2人とも適正のバンタム級にすると聞いています。
ギレルメ はい。
佐藤 自分も次の試合からバンタム級で戦います。
──ということは、ボンサイ柔術でも2人はよく組んでいるのですね。それぞれの強さをどう見ていますか。
佐藤 ずっと練習していますが、ギの強さは、もう極めっスね。極めが強い。
ギレルメ 同じです(笑)。
──柔術で活躍して、なぜMMAをやろうと?
ギレルメ 子供の頃からいつか格闘技だけで食べていきたいと思っていました。現実的にそれを考えたのは、コロナが始まってからでした。大会が少なくなって……だから、いまMMAをやろうと思いました。
──アマチュアMMAで戦い、仕事の後に練習を?
ギレルメ はい。スーパーでの荷物の搬入や補充の仕事後、練習や指導をします。それもいまは『格闘代理戦争』に集中して休ませてもらっています。家族もMMA挑戦をバックアップしてくれています。
佐藤 自分も子供の頃から密かにやりたいと思っていまいした。大人になって機会があってMMAを始めました。格闘技だけで食べていけたら幸せです。いまは自分は子供たちを指導しています。
──ギレルメ選手はとてもシャイですが、日本語は佐藤選手ほどは使わないのですね。
佐藤 ギは日本でもブラジル人の学校だったので。ポルトガル語ではもう少し喋ります(笑)。
ギレルメ どんなこと? 先週のUFCのこととか……。
佐藤 マックス・ホロウェイ、ヤバいなって。冗談で「今度の相手がそれをやって来ても、簡単に乗るなよ」って話しました(笑)。
──ギレルメ選手のアマチュアの試合を見たのですが、あの三角絞めの入り方は、まるでホベルト・サトシ・ソウザ選手のようでした。
ギレルメ サトシ先生と矢地選手の試合ですね(笑)。自動的に身体が動くんです。もちろんサトシ先生やクレベル先生の動きを何度も見ているというのもありますけど。
──「自動的に」と言ってもあのバックから後ろ三角のように入る形は、あまり見ないです。
ギレルメ ボンサイでは普通です(笑)。いつも極めを狙っています。
──MMAではポジションによってはリスキーだと感じることはないですか?
ギレルメ リスクはあるけど、そこからいろいろな極めのバリエーションがあるから極めに行けます。
佐藤 自分もむしろ柔術を使うからこそ、いろいろ出来ます。周りが僕たちの柔術についてこれないように感じています。MMAの展開で厳しいときにグラウンドという軸があるから、自分のフィールドという安心感があり、スタンドでも思いっきり戦えます。
──ギレルメ選手が黒帯になった最初の試合も拝見しました。それぞれ、道衣を着た柔術での得意技は……。
ギレルメ 柔術では三角絞め、バック、それとラペラもよく使いますね。
佐藤 自分はギロチンが得意で、そこから応用して小手絞りが得意です。
──ラペラと小手絞りとなると、どちらも襟や裾を掴む技です。ノーギになるMMAでどう柔術が生きていますか。
ギレルメ 柔術衣を着ることでいろんなバリエーションを教えてくれるんです。柔術衣があることでポジションが効いていないと極まらない。だからノーギでも極めることができます。
──『格闘代理戦争』に向けたMMAの練習環境は?
ギレルメ 先生方に、ヒロ・ヤマニハ選手、“怪物くん”(鈴木博昭)、畠山祐輔選手、様々な選手たちとやっています。怪物くんはとても当て辛いです。
──クレベル選手が米国修行に出てしまったので、サトシ選手とも?
ギレルメ はい。でもサトシ先生はちょっとレベルが違うんです。何をするか分からない。打撃なのか、組みなのか、柔術なのか、すべてが半端ないです。
──今回の準決勝は、試合前日に相手が決まった1回戦と違って、対戦相手が分かっていますね。
ギレルメ はい。今回は中村選手用の練習もしているので、前回とは違った自分も見せられると思います。
──対戦相手の中村京一郎選手は、今大会の本命とされています。参加選手中、唯一プロMMAですでに4勝1敗をマークていて、4連勝をいずれも1R フィニッシュしています。どうとらえていますか。
ギレルメ なんかそこまで大きくは考えていなくて……いろいろ喋る人だなって。ただ、見た感じ、柔術を少し怖れているような感じがします。
──サウスポー構えで懐が深く、遠い間合いからノーモーションの左の強打を持っています。
ギレルメ もともと中村戦が決まる前から、サウスポーの選手とよく練習していたのと、鈴木先生から指導を受けていたので、“怪物くん”が僕を成長させてくれました。打撃への恐怖心は無く、MMAでは普通のことです。
──中村選手は組みも強く、特にテイクダウンディフェンスは盤石です。
ギレルメ ビビッていては入れないし、相手に辿り着くまでが最初の勝負。近づいたら100パーセント、テイクダウン出来ます。最悪ガードになって相手が打ってきても、僕にはさまざまなバリエーションがあります。
──今回の『格闘代理戦争』での戦いを自身のキャリアのなかでどう考えていますか。
ギレルメ とても大事なチャンスだと思っているし、これを使って自分のキャリアをアップさせて、なるべくボンサイ柔術を代表した戦いを見せていければと思っています。舞台が大きいからと言って緊張することはないです。いつも通りしっかり準決勝と決勝を戦いたいと思います。
──準決勝と決勝を、ということですね。中谷優我選手にトミー矢野選手が勝てば、柔術家同士での対戦になります。
ギレルメ 1回戦を見ましたが、もし決勝でトミーと対戦したら、もっと柔術の試合になる。でも、MMAなので自分の方が有利だと思っています。トミー選手と比較して、自分の方がアマチュアでいっぱい試合経験を積んでいるので、より“MMA”が出来ていると思います。
──今回はサトシ選手とともに、佐藤選手もセコンドにつくと聞きました。今回の『格闘代理戦争』、実は、クレベルはギレルメ選手とともに佐藤選手の2人を推薦していたと聞きました。そんななかでギレルメ選手が抜擢されて、ライバル心もありませんか。
佐藤 正直、ギと僕のどちらかとなった時点で嬉しくて、ビッグチャンスじゃないですか。ギが選ばれたときにどっちかと言うと、めっちゃ嬉しかったです。
──まるでクレベル選手とサトシ選手の関係のようですね。ギレルメ選手にはどんな試合を望みますか。
佐藤 いや、もう“秒殺”ですね。前の試合とまったく同じようにすぐ極めてほしい。トーナメントなのでなるべく早く極めて。
──ご自身の5月12日のDEE浜松大会ではどんな試合をしたいですか。
佐藤 相手のことは構えくらいしか知らなくて。でも、自分のいつもやってきていることをやるだけです。ギとともに試合に向けて練習してきて、自信はばっちりです。
──ギレルメ選手は、海外修行に出たクレベル選手からどんな言葉をもらいましたか。
ギレルメ「自信を持って練習を続けるように」と言われました。これまでも僕のことを作ってくれた先生の教えの通りに戦います。
──どんな試合を見せたいですか。
ギレルメ 相手が『柔術から逃げれる』と言っているので、もう極めてやりたいです。