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【MMA】栄光のラグビー元イングランド代表がBellatorと契約、エディー・ジョーンズHCがエール。UFCでは銀メダリストが同日契約も

2019/08/23 16:08
Bellator MMAがラグビーで元イングランド代表のジェームス・ハスケルと契約したことを8月22日、発表。同日、UFCは2016年リオデジャネイロ五輪グレコローマンレスリング男子75kg級銀メダリストのマーク・マセンと契約したことを発表した。 34歳のハスケルはイングランドで77キャップ(国代表戦での出場試合数)を獲得したラガーマン。過去2回のワールドカップでプレーし、2016年の「シックス・ネーションズ」(イングランド・スコットランド・ウェールズ・アイルランド・フランス・イタリアの対抗戦)ではエディー・ジョーンズ ヘッドコーチのもと、イングランドのフランカーとして13年ぶりのグランドスラム(全勝優勝)に貢献している。 2011年には日本のトップリーグであるリコーブラックラムズでも活躍した経験を持つハスケルは、キャリアの後期には地元ノーサンプトン・セインツでフランカーとして活躍するも、昨シーズンのプレー中に足首とつま先を負傷、ランプレーに影響があるとして、5月に17年間のプロとしてのキャリアを終えて引退することを決めていた。 もともとラグビーのトレーニングの一環として、MMAの練習をこの10年ほど採り入れていたハスケルは、名門ロンドンシューターファイターズジムでBellatorファイターのマイケル・ペイジらと練習を積んでおり、「BT Sports」のMMA番組の解説を務めた経験も持つ。ラグビー時代のインタビューでは、「MMAの練習で強さと持久力をつけ、ラグビーのピッチで相手をコントロールするのに役立った」と現地メディアに語っている。 サークルケージでのデビューは2020年前半とされており、Bellatorが展開する欧州シリーズ中のイングランド大会でヘビー級での挑戦が予想されている。 ラグビー時代はバックローとして、ハードワークを厭わなかったハスケルは34歳のMMAデビューでどこまで戦えるか。イングランド代表として薔薇のエンブレムを胸に刻み続けてきた男にとっても、ケージの中に入れば、ただのルーキーだ。 これまでラグビー経験のあるMMAファイターで最も活躍した選手は、マーク・ハントか。しかし、ラグビー発祥の地で77キャップを持つ代表選手がMMA転向は異例のこと。アイルランド代表として活躍し、RIZINにも参戦したブレット・マクダーミットがMMA8勝5敗の戦績を持つが、アマチュアで5戦(4勝1敗)の経験を積んでのプロデビューだった。また、豪州出身のUFCファイター、アレクサンダー・ヴォルカノフスキー(2019年12月14日「UFC245」でUFC世界フェザー級王者マックス・ホロウェイに挑戦)は、ニューサウスウェールズ州のグループ7ラグビーリーグに所属するワリラレイク・サウス・ゴリラズのフロントローとして活躍したが、幼少期からレスリング経験があり、12歳でオーストラリア王者に輝くなど、レスリングのバックボーンがあってのMMA転向だった。 コンタクトスポーツではあるが、レスリングとは異なる走り込んでドライブしてのタックルは、MMAでどう活きるか。NFLまで広げてみれば、カロライナ・パンサーズやダラス・カウボーイズでディフェンシブエンドとして活躍した“問題児”グレッグ・ハーディが現在、プロMMA5勝1敗。UFCで2勝1敗と活躍中だが、アマチュアでも3戦3勝のキャリアを積み、ダナ・ホワイトUFC代表が新たな才能を発掘する企画「チューズデーナイト・コンテンダーズ・シリーズ」を勝ち上がってオクタゴンデビューを果たしている。 MMAトレーニングのキャリアは長いが、練習と試合は別物。“飛び級”でのハスケルの三十路過ぎのBellatorデビューはどんな結果になるか。そしてその後の取り組みに元イングランド代表のMMAへの本気度が見えてくるだろう。 2016年の「シックス・ネーションズ」では、ハスケルを本職の6番から全試合スタメンの7番(オープンサイド)で起用したエディー・ジョーンズ(元日本代表ヘッドコーチ、イングランド代表初となる外国人ヘッドコーチ)は、協会での会見でハスケルのMMA転向について問われ、「彼は想像力に富んでるね。彼が活躍していて僕たちはとても嬉しい。我々にとっては偉大なサーバント(献身的な選手)で、2016年の我々のグランドスラムに大いに貢献してくれた」とこれまでの実績を評価。さらに、「イングランドで70あまりの代表プレイヤーとして優れていた彼が、新天地を見つけたことは、その結果がどうなるかはさておき喜ばしいし、当然チケットを買って最初の試合を見に行きたいと思ってたけど、私はすでにオーダーされていたので、リングサイドで、彼の血を浴びないで済むことを祈ってるよ」と現地観戦を約束し、エールを送っている。 UFCデンマーク大会に母国の銀メダリストが参戦 一方、9月28日の「UFC Fight Night: Hermansson vs. Cannonier」デンマーク大会でUFCデビューが決定したマーク・マセン(デンマーク)もジェームス・ハスケル同様に、トップアスリートだ。 マセンは2016年のリオ五輪グレコローマンレスリング75kg級銀メダリスト。銀メダル獲得前の2013年からMMAのキャリアを積んできたマセンは、オクタゴンデビューを決める前に、MMA8試合を戦い全勝。EMMAやCage Warriorsで戦い、2KO/TKO、3つの一本勝ちをマークしている。 ハスケルと同じく34歳だが、初MMAから6年のキャリアを重ねたマセンは、強い体幹から繰り出される踏み込みの速いパンチ、さらにグレコローマンレスラーらしいボディロックからの投げも武器に白星を積み上げ、ギロチンチョークで2度、リアネキドチョークで1度の一本勝ちも記録するなど、MMAファイターとして進化を遂げてきた。 UFC初戦では、ライト級でMMA12勝4敗、UFCでは1敗のダニーロ・ベルアルド(イタリア)と対戦するマセン。地元開催のご当地ファイターから、インパクトを残してナンバーシリーズ参戦のレギュラー組入りを目指す。 これまでオクタゴンには、ダニエル・コーミエー、サラ・マクマン、ロンダ・ラウジー、ヘンリー・セフードなど数多くのオリンピアンが上がっており、MMAが五輪スポーツなどのアスリートたちのセカンドキャリアとして、北米では“稼げる”市場になったことから、メダリストの参入も珍しいことではなくなってきている。 しかし、学ぶべきことが多く、競技として進化を続けるMMAは、石井慧(20018年 北京五輪柔道男子100kg超級金メダリスト)のように10年をかけてそのスタイルを磨くことで、ようやく世界のトップと鎬を削ることが可能となる厳しい世界でもある。 2020年の東京五輪に向け、代表レースから外れた選手、あるいはメダリストの次の目標としてMMAのベルトを目指す選手はこれからも現れるのか。“グラゼニ”ならぬマットの下にゼニはたしかに埋まっているが、その享受を受けるのは限られた者であることは、ほかのジャンルでも同じこと。腰かけ程度でモノになるほどMMAは甘くないことだけはたしかだ。
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