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2024年1月20日(日本時間21日)、カナダ・オンタリオ州トロントのスコシアバンク・アリーナにて『UFC 297: Strickland vs. Du Plessis』が開催される。
カナダでは2023年6月以来半年ぶり。トロントでは、2018年12月の『UFC 231: Holloway vs. Ortega』以来、約5年ぶりとなる今大会のメインは、「UFC世界ミドル級選手権試合」(5分5R)として、UFC3連勝中の王者・ショーン・ストリックランド(米国)が、UFC6連勝中ドリカス・デュ・プレシ(南アフリカ)の挑戦を受ける。
▼UFC世界ミドル級選手権試合 5分5R
ショーン・ストリックランド(米国)28勝5敗(UFC15勝5敗)※UFC3連勝中 184.75lbs/83.80kg
ドリカス・デュ・プレシ(南アフリカ)20勝2敗(UFC6勝0敗)※UFC6連勝中 184lbs/83.46kg
2023年9月にアデサニヤに5R 判定勝ちして新王者となったストリックランドにとって初防衛戦。対するデュ・プレシは7月の前戦でロバート・ウィテカーからカウンターのジャブでダウンを奪い、左右ラッシュで2R KO勝ち。試合後、当時の王者アデサニヤとフェイスオフまで行っていたが、足の負傷により王座挑戦できず。ストリックランドが先に挑戦し、ベルトを獲得している。
キックと柔道をベースに持つデュ・プレシに対し、ストリックランドは、「激しいスタンドの戦いになる」と予告。また本誌のインタビューに、熱いPRIDE愛も語ってくれた。
同大会は、朝8時30分にアーリープレリム3試合がスタート、10時からプレリム4試合、12時からメインカード5試合が行われ、全試合が『U-NEXT』でライブ配信される。
何が俺の一番の武器かって言ったら、そういうMMAの全ての側面が好きだって事じゃないか?
──今回のカナダ・トロント大会でのドリカス・デュ・プレシとの試合に向け、ファイトキャンプはどのように行ってきましたか。
「今回のキャンプはマジで良かった。フルでキャンプができた。マゴメド・アンカラエフやジョニー・エブレンとか世界チャンプが揃っているし、これ以上のキャンプは無いんじゃないか? ほら、いまも後ろにクリス・カーティスがいるぜ」
──同じエクストリーム・クートゥアーで、今回ミドル級でマルク・アンドレ・バリオーと対戦するカーティス選手ですね。ところでアンカラエフはUFCのライトヘビー級で3位。エブレンは現Bellator世界ミドル級王者ですが、ともに所属はエクストリーム・クートゥアーではなくてもラスベガスではそちらで練習しているのですね。
「あぁ、エクストリーム・クートゥアーでトレーニングしていたよ。ここの良いところはインターナショナルなジムという事だ。だからファイターはベガスに来たらだいたいエクストリームクートゥアーでトレーニングするんだよ」
──いい練習が出来たようですね。さて、前戦のUFC世界ミドル級選手権試合の5分5Rでは、1Rの序盤はイスラエル・アデサニヤのフェイントに対し、距離を詰めることができなかったのが、残り1分半で右ストレートを当ててダウンを奪うと、その後も5Rの完勝でした。アデサニヤにケージを背負わせ続けてパンチを打ち込むことが出来た要因をどうとらえていますか。
「いつも試合と同じようにトレーニングをしている。スパーリングもハードに5ラウンドやり通すんだ。昨日(1月17日)も5ラウンドスパーしている」
──ファイトウィークに入ってからもそんなにやっているのですか。
「トレーニングする時は常に100%でやる。70%ではやらない。ライトにやるっていう日はない。それが試合の時に生きてくる。俺のコーチが言ったんだけども『水に入りたがらない男を溺れさせることはできない』って。だからトレーニングする時は、いつも水の中にいると思ってやっている。常に相手を溺れさせるつもりで向き合っているんだ」
──練習中から相手を深海に引きずり込む気持ちでやっているのですね。しかもそれが、ストリックランド選手の場合、スタンドの時間が長い。打撃のスパーリングは100%でやると、ダメージも残るしリスクもあると思うのですが……。
「そうだな、誰とスパーするかが大事だ。いつも俺は自分と同レベル以外のファイターとのスパーは避けるようにしている。下手くそなヤツとやると──俺のチームメートでも俺の方が強いって分かってるヤツとやると“相手を怪我させないように”って気を付けているが、ほら、俺はUFCチャンプだろ? 死ぬまで追い込む。俺は相手をノックアウトさせるつもりで、失神させるつもりで向き合うからな。それが唯一強くなる道なんじゃないか。パンチを出すのを遠慮したり耐えて練習しながら根拠のない自信をつけるよりも、俺は相手にカットされても目に痣を作られてでもいいから、そういうトレーニングの方がいいんだ」
──なるほど。だからこそあなたは試合でも近い距離で戦うことが出来るのかもしれませんね。その近い間合いに入っていく、ストリックランド選手のL字ガード“フィリー・シェル”というのでしょうか。あの左手を下げたショルダーロールで立ち会うのは、MMAでは稀有なスタイルのように感じます。
「うん、俺黒人たちと沢山練習したんだよ。正直に言うけど、黒人が沢山いるジムで練習を積み重ねた。Milleniaっていうジムが、ストライカーばっかりが集まっているジムで。俺はレスリングからスタートしたファイターだが、そこで脳みそに沢山ダメージもらいながら、脳震盪も経験しながら身に付けていったんだ。あぁ、本当にケツを死ぬほど蹴られながら学んだよ」
──いまはロレンツ・ラーキンらがいるジムですね。一度行ったことがあります。アデサニヤ戦では、あなたの方が武器が少ないと言われていましたが、前に出続ける闘志と、それを5R続けるスタミナ、ディフェンス力も上回っていました。
「準備する武器としては全部持ってなくていい。だが、アデサニヤが俺に対してアドバンテージがあったのはリーチだけだ。やつは背が高いからな。だがレスリングやストライキングの話になると別だ。俺の方が武器は多かった。ヤツはロングカウンタータイプのファイターだ。俺はもしお前に“インサイドでボクシングをやれ”って言われたらインサイドでボクシングで勝負できる。もしお前に“アウトで打撃で戦え”って言われたらそれもできる。何でもできるよ。テコンドーでもいいさ。まぁ、何が俺の一番の武器かって言ったら、そういうMMAの全ての側面が好きだって事じゃないか?」
──たしかに、前蹴り以外はほぼパンチのみしか出さないなかでも、得意のジャブを当ててしっかり距離を詰めて前に出続けて、ときにはテイクダウンも奪う。圧力をかけることで相手の武器が出せなくなっているのもMMAらしいと感じました。では、今回のデュ・プレシとはどう戦う予定ですか。彼はスイッチヒッターでジャブ&ローも持ち、近付くと柔道スローもあります。
「激しいスタンドの戦いになると思っている。お互い立ったままぶつかり合うだろうね。で、俺はいつも戦略とかはないからな。戦略を用意して試合に向かって一発想定していないものをもらったらどうする? 試合がどういう展開であろうと向き合って戦うこと、それが試合の中でやらなければいけない事だと思う。とにかく試合に向き合って自分を出す事。自分の本当のスタイルを出して、やり抜く事だ」
──エクストリーム・クートゥアーには、さきほど仰ったようにラスベガス大会に訪れた選手たちが集まります。その中には階級は違うものの日本人選手もいますが、交流も?
「トレーニングもするし、っていうか、俺このキャリアの最初の頃、日本人とも試合しているよ。坂下裕介。俺の初めての5ラウンドの試合だった。マジでいいヤツだったんだよ。いい選手だったし。UFCじゃなくて、KOTCだ」
──KOTCのフィリピン大会ですね。
「そうだ、飛行機で行った。俺は日本人や日本の文化には実はすごくリスペクトをしているんだ。なにしろ俺は、PRIDEを見て育ったからね。UFCとPRIDEが同じ日にやってたら、間違いなくPRIDEを選んでた(笑)。PRIDEの方が見るの楽しかったんだよ。そういった事もあってすごくリスペクトしてるんだ。あと面白いのが、俺のガールフレンドとバケーションの予定を立てようと思っていて、日本に行こうと思っているんだ。彼女が寿司の番組を見ていて、そのクッキング番組が彼女のアイドルみたいなもんだからさ。とにかくこの試合が終わったら日本に行ってみたいよ。クソみてーにスゲー……(言い直して)本当に歴史そのものがすごく色濃くて格闘技もそうだろう? 柔道とか柔術もだろ。だから本当に行ってみたいんだ」
──週末の試合と来日も楽しみしています。日本のファンにメッセージを。
「日本のみんな。君たちはPRIDEを通してMMAの土台を作ってくれたと思う。常にMMAのサポーターでいてくれたし、俺たちの多くの成功はPRIDEのファンでもあった日本の君たちのおかげだ。今週末の俺の試合を見てくれ、君たちに戦いを見せたいと思う。さぁ、やってやろうぜ!」